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第4話 戦う理由

 アイテムボックスからテントや炊き木や食料、そのほか諸々のものを取り出した。

「凄いですね。

 こんなにアイテムボックスにイロイロ詰め込んでる人はじめて見ました。」

 そうだろう、魔法を捨てて、いや、魔法が使えない私は全ての時間と労力をアイテムボックスのスキルアップのみに捧げてきたのだから。

 アイテムボックスから取り出したのは、皮袋で包装された私特製のレトルト食品だ。

 アイテムボックスには、空気を入れておく方法と、空気を抜いて真空状態にしておく2種類の方法がある。

 アイテムボックスの中身は異次元空間なので、真空状態にしておくとかなりの長期間食料を保存できる。

 しかもブリザードなどの魔法で生み出された冷気をボックスに流し込んで置くと、

 簡易的な冷蔵庫が作れる。

 皮袋の中には、野菜とお魚を煮込んだスープが入っていた。

 更にお鍋を取り出して、その中にスープを流し込む。

 火のついた炊き木の上において温めると、お皿に移してスプーンといっしょに2人に手渡す。

 宿屋ヤドカリのおばさんが作ってくれた特製スープだ。

「どうしたの?食べないの?

 それじゃあ、もっと食べやすい物、果物とかどう?リンゴにする。それとも、パイナップルとかどう?」

 フィルの手が止まっている。

「なんか、私、あんまり食欲出ないんです。その、ポーション飲みすぎて。」

「そうね、今日1日だけで100本以上飲んだんだもんね。」

 普通の人が一生かかっても到底飲まない量だ。

 フィルが怪訝そうな表情をする。

 何かしら副作用とかねえだろうな?

 とか言いたげな表情だ。

 私も今日のフィルと同じ方法でレベル上げをした時も、1日に300本くらい飲んだけど何もなかったんだ。

 心配ないだろう。

「ねえ、フィルはどうして冒険者になろうと思ったの?

 普通に教会かどこかで専属のヒーラーにでもなったらよかったのに?」

「そんな事聞いてどうするんですか?

 あなたが、私の願いをかなえてくれるのですか?」

 フィルが答えるのを拒絶した。

 今日1日しごかれたせいで、だいぶ機嫌が悪いみたいだ。

「それは、聞いてみないとわからないわね。」

「そう言うお姉様がたはどうして冒険者なんかなさっているんですか?」

「私は、魔王を倒して世界を救うため。

 それと、エレスの護衛のために。」

「護衛じゃなくて、ストーカーでしょ。」

「魔王って?」

 フィルが少し考え込んだが、私のことについて深く突っ込んで追求してもしょうがないと思ったのか、その事はスルーした。

「じゃあ、エレスさんは?」

「私は、私は大切な物を取り戻すためよ。そして、自分の運命に打ち勝って、過去の因縁と決着をつけるためよ。」

「ふーん、なんか、よくわからないですね。」

 確かに、私も以前から、エレスの目的と願いには興味があった、というか、疑問に思っていたが、何度聞いてもはぐらかされた。

 その目的と、他者を拒絶することとは何か関係があるのだろうか?

 過去の因縁と決着をつける為。

 それは、私にも言える事だった。

 私の過去とは、以前の世界の出来事。

 もう、けして取り戻すことのできない、一人目の親友。

「私たちは、いや、エレスはともかく、私は言ったわよ。」

 今度は、あなたの番よ。さあ、言いなさい。フィルに対して遠巻きに私は圧力をかけた。

「私は、孤児院の弟や妹たちの為です。

 私たちの孤児院は、とても貧しく、食事もマトモに取れません。

 そのお金を少しでも稼ぐために、冒険者になるんです。

 多少危ない橋を渡らなければ、とても養ってなどいけませんから。

 お姉様たちのように、魔王とか運命とか訳わかんない理由で冒険者を始めた訳じゃないんです。」 

 エレスがうつむく。

 少し傷ついたのか、それとも、本当は言いたいのに言えない葛藤と理不尽さに苦しんでいるのか。

「そう、それじゃあ、これだけで足りるかどうかわからないけど。」

 そう言って、私はアイテムボックスから無数の金貨や魔法具、それに貴金属類を山のように取り出す。

 そしてそれらを、地面にばらまく。

「な、なんですか?

 どうしてこんなに持っているんですか?」

「私と、エレスで、この1、2ヶ月の間に手に入れたのよ。

 これ、あなたに全部あげるわ。

 これで足りる?」


「た、足りるも何も、城がたちますよ。

 こ、こんなの、貰え」

 そういってフィルは口籠る。

 貰えませんとは言えないのだろう。

「その、孤児院のみんなのために、受け取りなさい。

 後でギルドに頼んで、送金してもらいましょう。」  

「そ、その、何て言っていいのか。

 本当に、ありがとうございます。」

「いいのよ、気にしないで。

 私たち、こう見えて、割とセレブなのよ。」

 そう言って、私はウインクした。


  ☆☆☆☆☆☆



 

数ある作品の中から、この作品を選んで頂いてありがとうございます。

☆☆☆☆☆

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