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第3話 新人研修2

 

「ひっく、ひっく。」

 フィルは地面に座り込んだまま、大泣きしている。

「マリーさん、酷すぎます。

 こんなの新人研修じゃありません。

 たんなるいじめです。

 スライムを後ろから投げるなんて、どうしてそんな酷い事したんですか?」

「バカね。そんなの決まってるじゃない。魔物が後ろから襲ってくる事もあるからじゃない。」

 そう、当然だ。後衛の彼女には、当然前に誰かがいても後ろには誰もいないのだ。

 敵がゆっくり忍び寄ってきたり、魔法などで狙撃して来た時は、自分自身で対処しなければならない。

 ギロリ   フィルが私を睨みつける。

 おお、いい瞳だ。これでこそ冒険者の瞳だ。         

「エレスさんもエレスさんです。

 どうして助けてくれないんですか!?」

 フィルが苦情を言う。

「別に、だって私は、あなたの教育係じゃないですもの。

 そんなに嫌だったら、冒険者、辞めれば。」

「エ、エレスさん。

 だ、駄目だ。この女性たちには、一般人の常識は通じない。」

 フィルがボソッと呟いく。

 当たり前だろう。冒険者は一般人ではないのだから。

「フィル、厳しいようだけど、私たちが選んだ世界とは、そういう世界なの。

 この程度で音をあげるようだったら、エレスの言うとおり、辞めといた方がいいわ。」

「うううっ」

 フィルはうめき声をあげて口籠る。彼女は言い返せない。

 そうだろう、私が言ってることは正論なのだから。

「で、どうするの?やるの?ヤラないの?」

 エレスが冷たく催促する。

 エレス、誰に対してもこうなのね。

「わかったわよ。やりますよ。やればいいんでしょ。」


 エレスが、怪訝そうな瞳でフィルを見る。

 いや、別にやりたくなければ辞めてくれてもいいのよ。そのほうが、こちらも楽だから。

 エレスの心の声が聞こえてくるかのようだ。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 そのあと、まる1日以上かけて、スライムやブルーフロックなどの比較的低級の魔物を百匹以上フィルに狩らせた。

 ポーションは腐る程あるので、多少怪我をしても何度でも回復させられる。

 ちなみに魔物は、低級の魔物を引き寄せる魔法具や香水などを使っておびき寄せた。

 それから、少しずつ戦う魔物のレベルを、低級から中級へと引き上げていった。

「スキあり!!」


 私は戦っているフィルの背後にスライムを3連続で投げつける。

 ちなみに、スライムは眠らせてアイテムボックスに収納しておいた。

 するとフィルは一匹をかわすと、さっき教えた日本の伝統武術、空手の回し蹴りと、正拳突きでスライムを迎撃する。

 はあっ  はあっ  はあっ

 フィルは息も絶え絶えだ。

 肉体的にではなく、精神的なダメージが大きいのだろう。

 だが、それでもよく頑張った。

 もしかしたらすぐに根をあげて帰るとかいいだすかもとか思っていたけど、以外に根性がある。

「もう夜だわ。そろそろ休むわよ。」

 腕をくんで1日中私たちを監視していたエレスが言った。

 いや、私を監視していたのだろう。

 私が教育係として適任かどうかを、判断するために。

 あまりフィルに優しくしすぎるようなら、私と教育係を変わるために。

「イエッサー」

 私はベテラン冒険者にして影のボスであるエレスに敬礼した。

 

数ある作品の中から、この作品を選んで頂いてありがとうございます。

☆☆☆☆☆

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