第13話 ドキドキデート
そして、私とエレスは、それからお買い物に出かけた。
エレスは新しい剣と衣服、私は、重複する武器や防具を換金してさらにレアアイテムを買い漁った。
「一番上から、ここまでを100個ずつ、それに、ポーションを3000個下さい。」
私はアイテムショップのメニュー表を読みながら、レストランで食事をするように注文する。
隣でエレスが呆れている。
「あなた、凄い爆買いするわね。」
「アイテムは、幾つあっても多過ぎるってことはないわ。
エレスも、ほかに欲しいものはない?」
そう言うと、私は購入したアイテムをボックスに放り込んでいく。
「その能力、どうやって身につけたの?
あなたの固有スキル?」
「普通の、アイテムボックスよ。
ただこの数年間、毎日朝も昼も夜もこの能力と剣技だけを鍛えてきたの。」
そう、この5年間、私は村の子供たちと剣の訓練をした。
そして、岩や木材、食料などをボックスに収納し、あるいは解錠して取り出す訓練を1日中繰り返した。
「あなたには、魔法が使えないから?」
「うん。」
「エレスちゃんは、どこで剣技を身につけたの?魔法の訓練を受けてきたの?」
「私は?」
「あ、あれは、アイスクリームだ!!
凄い、この世界にもあったんだ。」
店の窓から見える屋台を見つけて、私は叫んだ。
少し感動。
「何言ってんの。そんなの、珍しくも何ともないわ。
あなた、本当に田舎育ちだわよね。」
「冷凍庫もないのにどうやって作るの?」
「氷魔法よ。私でも作れるわ。」
「そう、じゃあ今度エレスに作って貰うわ」
「何勝手なことを。」
「ねえ、エレス。一緒に食べよう。」
「嫌よ。あなた1人で食べればいいでしょう。」
「どうして?」
「そんな野外でお食事なんてはしたない。それに、あなたと2人で一緒に食べるなんて、恥ずかしいじゃない。なんだか友達みたいじゃないー」
「友達みたいじゃないって?ひどい。私たちって、もう友達でしょう。エレス。
それに、お外でお食事するのがはしたないなんて、そんなの偏見だよ。私の世界ではみんな食べてるよ。
私の異世界での初アイスクリームはエレスと一緒がいいの。」
「初アイスクリームって?
わかったわよ。しょうがないわね。
1回だけよ。」
「やったー」
この先何回でも、何百回でも。一緒に食べるんだ。
私はそう決心した。
☆☆☆☆☆☆
それから、私たちはアイスクリームを2人並んで一緒に食べた。
私たちは2人でプライベートライフを楽しんだ。
エレスちゃんとのドキドキデートだ。
お洋服屋さんに行ってプライベートに着るお洋服を買った。
ファンシーショップでは、クマやウサギなどのぬいぐるみを数十匹買った。
エレスがあきれていた。
そして、川沿いを2人で歩いた。
「マリー、あなた、あんな大勢のぬいぐるみたちを、いったいどうするつもりなの?
宿屋じゃ飼えないわよ。」
「大丈夫、アイテムボックスの中に部屋ごと収納するから。
ソファーやテーブルも入れておくわ。」
「もう、あなたって娘は」
エレスがため息をつく。
「今日は楽しかったわ、エレス、異世界に来て、いいえ、マリーとして生まれて、こんなに楽しくてこんなに幸せなのははじめて。
私、この世界に生まれてきてよかったわ。」
私はエレスの瞳を見つめながら言った。
エレスが少し、顔を赤らめた気がする。
一瞬だけ、前世の記憶が蘇り、親友を死なせてしまった罪悪感が心をよぎった。
でもすぐに振り払う。
今度こそ、ここにいる新しい友達、エレスを守り抜いて、前世で失った未来を取り戻すんだ。
「大袈裟ね。」
「あらためて、エレス。自己紹介をするわ。
私の名前は、マリー・キャンベル。
基本魔法を使えない無能力者の美少女冒険者よ。
でも、この街で現在もっとも強くて、もっとも優秀な冒険者でもあるわ。
いずれはもっと強くなって、世界中のどんな英雄や魔物も乗り越える。
打ち破ってみせるわ。
そして、エレス。
あなたの行こうとしている場所。
あなたの願いや夢。
その場所に向かって、私もあなたと共に歩いていきたいの。
あなたの、手助けがしたい。
だから、私と、パーティーを組んで。
私を、あなたの戦友にして頂戴。」
そう言って、私はエレスに手を差し出した。
「あなたは本当に馬鹿ね。あなたは、この街で、いいえ、この世界で1番の愚か者よ。」
そう言って、エレスは私の手をとった。
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