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第12話 お泊り2

 私も同じく、冒険者の衣服を脱いでパジャマに着替える。

「おやすみなさい。あなたは、そこのベッドを使ってくれてもいいわよ。

 最近馬小屋で寝てたから、あまり眠気もとれてないでしょう。」

 こちらに振り向いて、エレスは言った。

「エレスは?」

「私は、床の上でいいわ。

 毛布も持ってきて貰っているし。」

 そう、本来エレスは純粋で、誰よりも優しい娘なのだ。

 それゆえに、脆くて壊れやすい。

「えーっ、嫌だよ。私、エレスと一緒に寝たい。

 女の子同士、2人で同じベッドで寝るのって、こういうの、お約束だもん。

 エレスが床で寝るのなら、私も床で寝るわ。」

 私はそう言って駄々をこねる。


「何のお約束なの?しょうがないわね。今日だけよ。」

 そう言って、エレスはベットの中に先に入ると、毛布をめくって手招きする。

「わーい

 私は笑みを浮かべると、エレスの隣に転がり込む。

 エレスは風の魔法を使うと、蠟燭の炎を消す。

 私は暗闇に乗じて、毛布に潜り込んでエレスに接近する。

 そして、エレスの胸に顔をうずめる。

 エレスの身体から香水の甘い香りがする。

「きやっ!!」

 思わずエレスは声を出した。


「ちょっと、もう。くすぐったいでしょう?

 蹴り落とすわよ。」

 何そんな嫌なふりして。

 照れちゃって可愛い。


 待って、今顔をだすから。

 そう言って私はゴソゴソと首を振りながら毛布から顔を出す。

 そして、エレスの両手を握って彼女の瞳を見つめる。

 心臓がドキドキする。

 いつ以来だろうか、こんな幸福感は。

 安らぎは。

 彼女の体温と血液の流れが、伝わってくる。

「な、何よ。」

 エレスが照れて瞳をそらす。

「エレスって可愛い。」

「なっ、何言ってるのよ!?」

「エレスって、変わってるよね。

 どうしてこんなに優しいのに、仲間を作らないの?

 どうして?」

「スリープ」

 私が次の質問をした瞬間、エレスは睡眠魔法で私を眠らせる。

「そんなに興奮してたら、眠れないでしょう。

 今日はもう疲れたでしょう。ゆっくり眠りなさい。

 それに、私が1人で戦ってきた理由は言えないの。」

 そうして、エレスは瞳を閉じて眠りにつく。

 私はしばらくして、瞳を開けた。

 対ステータス異常の耐久力をあげる魔法具で、スリープの効果を打ち消したのだ。

 いや、ただ単に私の精神力の強さのせいもあるだろうけど。

 私はそっとエレスの頬に口漬けして、まどろみの中へと溶けていった。

  ☆☆☆☆☆☆


 チュンチュン

 小鳥のさえずりで私は瞳を覚ました。

 先に起きていたエレスが鏡の前に座って、髪をとかしている。

「エレス 」

「おはよう、マリー。昨日はよく眠れた?」

 エレスが鏡に反射する私を見ながら言った。

「ええ、本当はもっと起きて、エレスちゃんとイロイロいけないことをやりたかったんだけど、何か急に眠くなっちゃった。」

 エレスちゃんの寝顔を観察したり。

「そう、でも、先に眠ってラッキーだったわよ。何をするつもりだったか知らないけど、私に指一本でも触れたら、氷漬けにして湖に沈めるところだったわね。」

 エレスが笑顔を浮べて、静かな口調でいった。

「エレス、言葉の内容が猟奇的すぎる。」

「それで、あなたは今日どうするつもりなの?」

 エレスがこちらを振り向いて言った。

「エレスちゃんはどうするの?」

「私?私は今日は、1日かけてショッピングでもしようと思っているの。

 武器や魔導服もそろそろ新しいのに

 買いかえたいし。」

「そうなんだ。」

「ねえ、私もついていっていい?」

「駄目」

「うわっ、即答!!

 どうして?昨日は泊めてくれたのに、なぜ一緒にお出かけするのは駄目なのよ」

「それは」

 彼女がなぜ、私の事を避けているのか?いや、他人のことを避けているのか?それはわからない。

 だけど、彼女がなぜ昨日私を同じ部屋に泊めてくれたのかはわかっている。

 どこかにポーションでは回復できない

 後遺症はないか?ステータス異常がないかを確認するためだ。

 けれどもやはり、私の事を自分のそばには近づけたくない。

「それに、私のしつこさ知っているでしょう。街中にゴールドをばら撒いてでも、あなたを探し出すわ。」

「そんなことで、私を脅しても無駄よ。」

「ギルドの冒険者全員に私たちは恋人同士だって言いふらすわ」

「辞めなさい!!

 あなた、本当に八つ裂きにしてブルーフロックのエサにするわよ。」

 エレスは激昂すると、ため息をついた。

「もう、いいわ。勝手にしなさい。」

「やったー!!」


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