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第1章旅立ち 第1話 異世界転生

 ショッピングの帰り道、私の親友が殺された。

 会社員の私たちは、休日になるといつも2人で遊びに出掛けた。

 近所のカフェやカラオケ、映画館、それに遊園地。

 2人とも趣味が読書で、よく2人でWEB小説の話をした。

 その親友が通り魔にメッタ刺しにされて殺された。

 そして、彼女を救おうとした私も、その鬼畜に刺されて殺される。

 生暖かい血の感触ー

 私の血と、そして、命よりも大切な親友の血が絵の具のように混じり合う。

 死の間際、薄れゆく意識の中で私は消えてゆく大切な親友の姿をこの目に見た。


  ☆ ☆ ☆ ☆


 目覚めると、そこは美しい樹木やお花畑に囲まれた庭園だった。

 そこにある白いイスの上に私は座っている。

 目の前には薔薇のように美しい女性がテーブルを挟んで座っている。     

 滑らかな手付きで優雅に紅茶を飲んでいる。

 私はここがどこなのか、何故か知っていた。  

「おはよう。気がついたようね。

 ここは神の国で私は秩序の女神。

 あなたのように、前の世界で何かの強い未練があって死んだ人間は、神のご加護を受けてもう1度別の世界で、別の人間としてやり直すチャンスが与えられているの。

 私はそのためのサポートをしているわ」

 秩序の女神が説明した。

「そう、やっぱり私は死んだのね。」

 私は小さく呟いた。

「異世界転生と、その異世界の事、その他諸々の事については、あなたの記憶に書き込ませてもらいました。  

 だから詳細な説明については、省略させてもらいます。」

 女神がそう言った。

 そうか、だから私は、神の国の事も、この女性、女神の事も知っていたんだ。

 そして私自身が死んだことも。

「それでは、早速ですけど、本題に移ります。あなたには、2つの特典が与えられます。  1つは、前世での記憶。その記憶は、前世でやり残した願いを忘れないためです。

 そしてもう1つは、スキルです。

 過酷な世界で弱い人間に転生するあなたには、特例で、どれか1つだけスキルが与えられます。」

「 弱い人間?」

 女神はうなずいた。

「あなたの記憶にも書き込んでありますが、異世界転生者は、その転生先とその転生先の人間の肉体を自分では選べません。

 時と運によりランダムに選ばれます。

 酷い場合には、凶悪な魔物のはびこる世界で何の能力も持たずに生まれてくる場合があります。  

 そんな人の為の救済措置として、スキルが1つだけ与えられるのです。

 ちなみに、これがこれからあなたが転生する先の世界と、そこに転生する人間の潜在能力とステータス、個人情報です。」

 そういって、女神は魔法を使って目の前の空中に映像を映し出した。

 目の前には、転生先の人間のデータが映し出される。


 まず、私が転生する世界はエイルヘルム。

 剣と魔法が支配するまるでゲームのような世界である。

 この世界の文明は、中世ヨーロッパのそれに近い。

 そこでは凶悪な魔物がはびこり、毎日大勢の人間が殺されている。

 しかもそれだけではない。

 いまから十数年後、魔界から無数の魔物たちが大挙して地上に押し寄せ、このエイルヘルムと人類に滅亡の危機が訪れる。

 今まで閉じていた魔界の深層の扉が開くのが原因だそうだが、残念ながらどうして扉が開くのかは不明だそうだ。

 だが、副業でプロのバーチャル天才美人ラノベ作家(嘘です )をしていた私には解っていた。

 魔王だ魔王。魔王がきっと千年ぶりくらいに復活するに違いない。


 そして次に、転生先の私の肉体についての情報だ。

 彼女の名前はマリー・キャンベル

 マリーはアストレア大陸にある、中規模の国家、ミッドガルのこれまた中規模な街の近郊にある、普通の農村で生まれる。

 体格は少女の中でも小柄な方で、病弱でひ弱な少女である。

 10歳時点での推定能力数値

 パワー0・8 スピード0・9

 魔導力 0・03

 剣の適正1・6

 魔法の適正0・07

 以下省略  (その他すべてクソナメクジ )

 10歳時点での保有スキル [ なし ]

 なんじゃこりゃあ!!

「 これは、ひどいわね。」

 特に、魔導力が酷かった。

 魔導力が低すぎるため、魔法が使えない。

 当然、魔法のスキルもない。

「そう、でも、慰めになるかどうかわからないけど、あなたにはスキルが1つ与えられるわ。

 あなたの適正にあったスキルを選んでね。」

 私の適正と言われても。

 ほぼ全ての数値がクソナメクジの私に、適正もへったくれもないだろう。

 よく言えたもんだな。

 私は心の中で呟いた。

「では、これがあなたが持つ事のできるスキルの一覧よ。好きな物を選んでね。」

 その女神の問いかけに、私の答えはすでに決まっていた。

「[アイテムボックス]よ。

 [アイテムボックス]のスキルをお願い。」

 私は二つ返事で答えた。

「随分速いのね。何の迷いもなかったわ。

 どうしてそのスキルなのか、教えて貰えるかしら?」

「剣術や槍術、弓術などのスキルは、体格やパワーやスピードなどのステータスによって左右されるので却下。

 黒魔法や白魔法、召喚魔法は、当然魔導適正がクソナメクジなので却下。

 と言う事は、身体能力や魔導力などのこれらのステータスに影響されないスキルを選ばなければならない。

 鑑定、テイム、風水術 

 色々あるけど、どれも融通が効かないわ。

 ようするに、あらゆる状況に適した応用が聞かない。

 でも、アイテムボックスなら、これらの条件を全てクリアしているわ。

 運動能力や魔導力などのステータスにも左右されずに、様々な使い方ができる。」

「なるほど、了承したわ。」

 マリーのステータス表示に、アイテムボックスのスキルが追加された。

「それじゃあ、早速ですけど、転生してもらいましょうか。」

「1つだけ、聞きたいわ。」

「何?」

「次に転生する世界には、私の親友もいるの?」

 私は声を震わせながら聞いた。

「残念だけどいないでしょうね。

 異世界転生するのは、あなたのように前の世界で何かの強烈な未練がある人間だけ、ここにいないという事は、そういうことよ。」

 女神の答えに私は意気消沈する。

「そう。でもそれでは、私が転生する意味がない。」

「それは、あなたが異世界転生してから、しばらくして時期がくればわかるでしょう。

 それでは、幸運を祈っているわ。」

 そう言って、女神は私に魔法をかける。

 私の身体が光に包まれ、異世界へと転生した。

 

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