01:カラスボーイを知ってるか?
『そうか。君は演説が上手な、エンゼツァイストになるんだね』
そう言われた日から早10年。
高校の部活紹介、俺らの出番を前にして心臓が止まらない。
「大丈夫だって!!宇多川晴世は立派なカラスボーイになるんだろ?」
「佑維斗、ちなみにいうけど俺らも新入生だからな?」
「、、、。対象者は同級生!楽勝じゃん!!」
遡ること3日前、入学式の翌日のこと。
大量な紙を提出した後に担任から配られた紙。
「これは決めた人から各顧問に提出な〜、じゃあ号令〜」
部活、か。
中学までは友人に誘われてサッカーをずっとしていたが、流石に僕がやりたいことをやりたくて、夢に間接的に関わるようなものにしようとまでは考えていた。声を鍛えること。でもそれにぴったり合う部活は?、と言われるとピンと来ない。
「なぁハルぅ。。」
持ち上げて見ていた部活一覧のペラ紙をどけると、佑維斗がマルチーズのような目をしてこっちを見ていた。
「、、何?今、めっちゃ吟味し」
「え、もしやもう部活決めた?!」
「とりあえず体験だけ行こうかな、とは。」
放送部、演劇部、かな、発声練習できて大声を出しても怪しまれないところなら、とピッタリ合うものはないから一度部活動体験に行こうと、さっき決めた。
「じゃあまだ決まってないよね、だよね、まだ白紙だもんね、じゃあさ、・・・?」
ん、、?ちょっと待ってなんて言った、聞き間違えじゃないよな?
「だから、ぶ・か・つ!部活設立の手伝いしてくれない?」
目を逸らすと逃すまいとついてくるし、そんな冗談を言っている顔でもない。
「手伝いって?そもそもなんの部活なの?」
「えっとね〜、声部!!!」
「ん、なんて??」
「・・・・・だから、既存の部活じゃダメなの!!自分がやりたいのは声を使って仕事がしたい人たちを集めてそれ専門!特化したものを部活でしたいの!!」
思いつき猪突猛進でやりたいことの整理ができていないまま、僕に一方的に話し続ける。もうかれこれ5分は聞いているだろうか。よくずっと話していられるな、と声優養成所生の彼を感心する。
「はぁ、、。」
地べたに座り込まれ、こっちが何かしたのかというような視線を周りに向けられる。と、同時にチャイムが鳴る。昼休憩も終わり5限が始まる。
「放課後、一緒に情報整理しよ、っか。」
これは、友人の鶴の一声のような提案をきっかけに、僕、宇多川 晴世にとってのキッカケとなる存在に出会い、成長し、そして立派なエンゼツァイストになるまでの物語。。になる予定である。
「桜庭ぁ!宇多川と喋ってないでさっさと座れ!」
「ごめんなさい、、!!」
否、彼に振り回される物語なのかもしれない。
そして、放課後。
「じゃあ作戦会議をするか」
「ねえ褒めて?俺さ、ちゃんと担任に部活設立のやり方聞いてきたんだよ?」
「おお、ナイス。教えて」
佑維斗が言うには、4つの条件を満たす必要があるらしい。
一つ目。放送部や演劇部など、ほかの部との違いを明確に示すこと。
佑維斗は声優になりたいらしい。けど、声優に絞ったら人が集まらないと思い、声優以外にナレーションとか、声を使う仕事に就く為の練習みたいな部活を創りたいらしい。何故自分を指名したのか。佑維斗は「何となく?」と言った。まぁ、自分も一応、声に関わる仕事をしたいから、と、佑維斗の案に乗ることにした。
二つ目。規定人数を集めること。
人を集めなければならない。愛好会設立で3人、部活で5人。
三つ目。顧問を見つけること。
これに関しては後回しでいいと言われたそう。現段階で部を持たない先生は五人いるそうなので焦らなくても良いらしい。担任からもある程度話が進んだら紹介してくれるとのこと。
四つ目。生徒会会議と職員会議にてプレゼンを行い、賛成数をそれぞれ過半数獲得すること。
部活存続と部費申請のために必要。(大会実績などがある部は免除、他は毎年3月に行う。新規設立は申請月)
まずは規定人数、とにかく同好会を設立できる三人を集めてから担任の元に帰ってこいと言われたそう。
それを明日の昼休みまでに出来れば、来週にある全校集会での部活紹介で時間がもらえるのだそう。
「俺さ、一人あてがあるんだよね!1-3の柚木って奴なんだけど」
「アイツは無理だよ、、」
「そんな事ねぇって、行こうぜ!!」
『エンゼツァイスト』
演説をする人。造語です。
カラスボーイやウグイス嬢。
鶯のような声であるからウグイス嬢。野球のアナウンスや選挙カーの声の女の人を指す場合が多いです。
一方男性のカラスボーイはほとんどを選挙カーから話している人を指します。
主人公、晴世はカラスボーイに憧れた少年です。
政治には興味はないけど、声を使って想いを届ける。そんな仕事に憧れを持ちました。
もちろんカラスボーイだけでは食っていけません。選挙は毎日やっているものではないですからね。
他のお仕事を知りながら、たくさんの人と関わりながら、仲間と共に高校、その先を進んでいきます。
どうか、彼らが描く夢を掴むその時まで応援していただけると幸いです。




