第7話「兄妹」
3日後、鈴鹿市内の病院。
「…あれ、私、確かクラッシュして…」
隣を見ると、ウトウトしている兄がいた。
「亮兄ちゃん…」
目が覚めたようだ。
「この大馬鹿者!」
目覚めてすぐいきなり叱られる。
「なんであそこでDRSを切らなかった!あれが原因でお前はあんな目にあったんだぞ!」
「ご、ごめんなさい…で、でもシミュレーターであそこ切らなくても行けたから行けるって思って…」
「シミュレーターとリアルは違うんだ!シム(シミュレーターの略)でできてもリアルでできないことなんてたくさんある!」
鈴鹿サーキットの1コーナーはまあまあ速度が乗ったまま進入する。
F1ほどの空力を有するマシンはブレーキをあまり踏まないのだ。
そのため、DRSは自分で切る必要がある。
しかし、オーバーテイクを仕掛けた飛花はDRSを作動させたまま進入。
DRSが作動したままでリアウィングが発生させるダウンフォースが不足したままコーナーを曲がろうとした結果、リアタイヤがスリップし、あのクラッシュにつながったのだ。
「…それでも、お前が死ななくてよかった。それは嬉しいよ。兄として。」
「次はモナコだ。お前のF2の初優勝の場所だな。結果、楽しみにしているぞ。」
飛花は何も言わずに頷いた。