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晩餐会当日。
衣服も整え、俺はリームとともに会場を歩いていた。
立派な会場は、リームが考え、使用人たちとともに準備をしてくれたおかげだ。
会場を歩いていると、様々な貴族たちに声をかけられる。
……皆、内心でどのようなことを考えているかは分からないが俺へのゴマスリの言葉をぶつけてくる。
それと同時に、自分の娘なども紹介してくる。
……側室に、どうですか? というのを暗に匂わせてきてるんだよな。
リームは笑顔であるが、いつ彼女が本性見せて怒るか分からないな。
まだ俺とリームは正式に結婚しているわけではない。
側室の話なんてそもそもが早すぎるのだが、まあリームが子爵家ということもあって、軽んじられている部分はあるのだろう。
他の家だと、側室をとることもよくあることだ。家同士のつながりを強固なものにするには、婚姻関係を結ぶのが一番。
だから、ヴァリドー家と親しくなりたい貴族たちが、俺に娘などを紹介してくるわけだ。
ただ、ヴァリドー家はよほどのことがない限り側室をとらない。
理由は簡単で、悪逆の森の対応で忙しいというのに、さらにドロドロとした家の問題を抱えたくないからだ。
父も、そこだけは理解していたようだ。……まあ、父の場合お金を割かなければならない場所が増えるというのが一番嫌だったのかもしれない。
元々、別に女遊びはそこまで趣味じゃなく、食欲のほうが勝っている人間だったし。
それにしても、右見ても左見ても不健康そうな体型をしている貴族ばかりじゃねぇか。
……たぶんまあ、美味しいものをたくさん食べてるんだろうな。
この場にいる貴族たちは、基本的に父の考えに賛同している家が多く、平民的にみればクズな家ばかりだ。
さぞ、懐を肥やしていることだろう。
すでにパソコンにて昨年度の税などの管理を始めているのだが、任せている領から上がっていた税などは、どれもかなり計算が大雑把でミスが多いのがデータとして見えてきた。
まあ、電卓もないような世界なので、計算ミスは多少は仕方ない部分もあるのだが、それでもさすがに量が多すぎるので恐らくは適当にちょろまかしているのだろう。
今日はまだそこまでは指摘しないが、今後はどんどん厳しくしていかなければならないが、それでおそらく反発も喰らうだろう。向こうが悪いのに。
そうしたら、下手したら暗殺イベントも起こるのかもしれないねぇ。
ああ、めんどくさ。
上司が変わるとがらりと変わる職場というのもある。前の上司の色をなくすため、新しい上司が前の上司のやり方を否定するのだ。
……俺はそういう経験をすることが多く、上司というのは面倒な奴らが多いと思っていたが、いざその上司の立場になってみたところ、上司は上司で大変だな。
そんなことを考えていると、また別の家から挨拶をされる。
「レイス様。私、ロンドリア家のクロン・ロンドリアと申します。この度は、就任おめでとうございます」
「おまえがクロンだったか。アスペルトの街をこれからも頼むな」
「ええ、お任せください」
嫌味だからな? おまえのところはかなり計算ミスが多かったから名前を憶えていたんだからな?
さすがにこの場で叱りつけるようなことはしない。
リームとも、事前に話していたが、あくまで自主的に事態に気づかせたほうがいいだろうという結論になったからな。後日、各街の管理者には改めて一斉に連絡をしていくつもりだ。
今日の晩餐会以降に、そちらの対応は行うつもりだが……ひとまず今日の目的は、エンディール家だ。
目的の人物を探しながら、こちらからできる限り挨拶もしていく。
まだ全員の顔を覚えたわけではないので、リームに教えてもらいつつだ。
向こうから挨拶してくれればいいが、基本的には俺の方が立場は上になるので、なかなか声をかけづらいということもあるそうだ。
一応、今日は顔合わせの意味もあるため、全員に挨拶をしておく必要があった。
隣をあるくリームはいつもより上機嫌に見える。
「リームはこういう場所は好きなのか?」
「あんまり好きじゃないわよ」
「でも、今は楽しそうだな」
「こうして、一緒に参加するのって始めてでしょう? それが私には楽しみだったのよ。普段と違って、私が色々と教えていることもあるしね」
嬉しそうにそう言って微笑むリーム。
……なるほどな。
前から一緒に参加したい、という話はしていて、その希望が叶ったということか。
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