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……ただまあ、創造が掻き立てられなくなるとイタズラの回数が増えるそうなので、その辺りは俺がちゃんと管理しないといけないが、まあ前世の便利な道具を適当に開発してくれ、と頼んでおけばなんとかなりそうな気もする。
オタク気質な子も多く、絵を描いたり文章を作ったりする技術も高いようなので……今後次第では、漫画や小説のようなものを提案させてみるのも面白いかもしれない。
それにしても……本当にラッキーだな。
これだけの魔道具を導入したというのに、コストがほとんどかかっていないというのも嬉しい限りだ。
フェアリー族は毎日の衣食住が提供されれば満足らしいが、食事は見た目さながらでほとんどいらない。
服に関しては、サイズの問題でフェアリー用に作る必要はあったが、それらは人形などの衣服を作る人に依頼し、現在は対応済み。
家に関しては使用人が使っている建物の余っている部屋をいくつか用意したらそこを自由に改造して使っているので、特に問題はない。
あとは、フェアリー族が参加したことによって今後、貴族出身の人間からの反発が強くなる可能性はあるが……それはもう考え方の違いとして処理するしかないだろう。
少なくとも、これだけ便利なパソコンやその他魔道具を開発できるフェアリー族をスカウトしないのは考えられない行為だからな。
「ニシリー。もしも他にもフェアリー族でうちで働きたい子たちがいたらいくらでも連れて来ていいからな」
「もちろん、他にも街から追い出された子とかもいると思うから、声かけてみるよー!」
よしよし。スカウトもニシリーが直接動いてくれるのなら楽だ。
これで、技術力に関しては一気に跳ね上げることができるだろう。
これで、多少領地運営が楽になったところで、クーラルと約束していた日を迎えた。
もうそろそろ、晩餐会も開く予定なのでわりと忙しくなってきたところだが、俺は息抜きがてらクーラルに会いに来ていた。
前の酒場へと到着した俺は、そこで女装姿のクーラルが席についた。
「ねえねえお兄さん、一緒に食事してもいい?」
「ああ,構わないがその格好はなんだ?」
「……へぇ、即座に気づくんだ」
まあ、ゲームで知ってますし。
今のクーラルの見た目は完全に女性であり、声も甲高い。
……まあ、元々女性声優が低めの声を出していただけなので、今の方がクーラルに声をあてた声優からすれば本来の音域の声だろう。
どちらにせよ、魔力ソナーで正確に相手の魔力を判断できるようになった今の俺なら、クーラルを見破るのは難しくない。
……まあ、クーラルはかなり魔力の隠蔽が得意なようなので、遠くからでは探知は難しいが。
「今の私は、クーラっていいます。よろしくね」
ウインクをしてくるクーラルは完全に役になりきっているようなので、付き合おうか。
クーラはそれからいくつかの紙を取り出し、こちらに差し出してきた。
「依頼にあった『スザク』って人、見つけたよ」
「そうか」
渡された紙には似顔絵も描かれている。……原作通りのスザクだな。
「スザクって人、もともと北にある村にいたんだけど……魔物の襲撃にあって村から離れたらしいよ」
「……魔物の襲撃?」
「うん。それでね、今はヴァリドー領に行ったみたいなんだけど、そこで捕まってるんだよね」
「……」
何が、どうなっているんだ?
原作とまるで違う話になっていて、驚く。
……やっぱり、スザクも転生者なのか?
それに、ヴァリドー領なら……俺の領内だ。もちろん、ヴァリドール以外にも街はあるので、俺が預かり知らぬところでそういった状況になっている可能性は十分あるのだが。
「捕まっている? どこにいるのか分かるか?」
「エンドリアっていう街だね。その街の領主がスザクと一緒にいた女の子を気に入ったらしくてね。無理やり捕まえたって話みたい」
「……エンドリア、か」
その街の名前は聞き覚えがある。
今度、晩餐会を開くときに注意した方がいい貴族が何人かいるのだが、そのうちの一人がエンドリアの街を管理しているブライト・エンディールという男だからだ。
こいつは絵に描いたような悪役貴族の見た目をしていて、何人もの女奴隷を管理している。
……かなり、悪名高いのだがなぜか俺の親父は気に入っていたらしい。
理由は分からないが……急いで対応した方がいいな。
「ヴァリドー家から代理で任されている、エンディール家の管理している街だね。あそこの男に目をつけられたなんてなったら、大変なんだよね。私ももし見つかってたらどうなってたことやらって感じだよ」
はいはい。
俺は小さくため息を吐きながら、クーラルの演技に相槌を打っておく。
とりあえず、状況的には……少し理解できてきた。
スザクが女性とともに行動していた、というのが……厄介極まりないことだった。
マジで、最悪のルートに行こうとしているのかもしれない。
それを確かめるために、俺はある名前を口にする。
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