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「できたよ!」
ニシリーたちが魔道具を完成させたのはそれからすぐのことだった。
なんか、フェアリー族は一度働き出すとしばらく寝ずに作業をするらしく、屋敷にきてからほぼずっと働いていた。
前世ならば、働き方改革もあって確実に止められていただろう。
俺の前世の会社もそうだ。残業はなかったんだよな。記録に残るものは。定時までは会社で仕事をし、それ以降は営業に行ったり、接待に行ったり……。人によっては、会社から支給されたパソコンを家に持ち帰って作業をするなどな……。
嫌な記憶を思い出して勝手に気落ちするのはやめよう。
少なくとも、この領内ではブラックな運営はしないようにしよう。
まあでも……本人たちが望んでやっている分には別にいいけどな?
実際、フェアリーたちは仕事を楽しんでいるみたいだしな。
屋敷でも別にフェアリーたちを嫌う人も少なく、本当に嫌っているのは貴族くらいなんだと思わされていた。
……まあでも、うちの使用人や兵士には貴族出身もいるので、その辺には多少不満も溜まっているようだ。
それでも、俺の両親が経費削減で金のかかっていた貴族たちをクビにしていたこともあり、ほとんど問題はなかった。
ある意味、両親には感謝しておかないとな。
俺は完成された魔道具をじっと見る。
……ちょっと古いデスクトップパソコン、という見た目だ。
キーボードにマウスまでもついている。試しに電源を入れてみた。
薄暗い画面が光を放つと、ホログラムのように画面が浮かび上がる。
デスクトップには恐らく俺が求めていたであろうソフトのアイコンがいくつかあり、ニシリーがマウスを風魔法で操って、操作していく。
「これが計算とか自動化できるソフトで、こっちがギルドで使ってるソフト。それでこっちが文書作成ソフトね。ギルドのソフトに関してはもう連携してあるから、ギルドの情報が全部入れられるようになってるし、連絡も取れるようになってるよ!」
ニシリーがそれを操作していくと、チャットのような画面が出てきた。
……フェアリー族の技術は凄まじいな。
なんで貴族たちはこんなに便利なものを拒絶するのか。彼らには彼らなりの考えがあるのかもしれないが、俺には理解不可能だった。
魔道具は全部で五台あり、管理官たちも操作を開始していく。
フェアリーが付き添いながら教えているので、そちらはいずれ慣れてくるだろう。ギルドで働いたことがある人たちは、すでにほとんど使えるようだし。
俺も前世のパソコンを操作する感覚とほぼ同じように使えるので、問題はない。
「あれ、レイスはこういうの使ったことあるの?」
俺があまりにも慣れたように使っていたからか、ニシリーが首を傾げてきた。
……しまったな。
「事前に調べておいたからな。それで便利なのは分かっていたからお願いしたわけだし」
「あっ、そうなんだねぇ。でもまさか貴族のおうちに本当に採用されるとは思わなかったよー」
とても嬉しそうだ。ニシリーたちは、貴族相手に営業をしたこともあるみたいだし、一つの目標だったのかもしれない。
「ま、他の家まで導入するかは分からないけどな。そういえば、携帯電話のほうはどうだ?」
遠距離の相手と通話するための道具が欲しいと思っていた。
「空気中の魔力を使えば同じ魔力の回線を共有した相手となら、通話はできると思うかな? こっちのパソコンと同じような感じだしねー。ただ、小型化って部分ではちょっと手こずってる感じだね」
フェアリー族は魔道具に特に名称をつけていなかったので、俺が勝手にパソコンと名付けさせてもらった。
俺としては変な名前をつけられるよりもその方が便利だったからな。
ニシリーや他のフェアリー族も特に気にしてないようだし。
「そうか。まあ、別に急ぎで作ってもらわなくても大丈夫だからな。色々試行錯誤してくれ」
「うん。今創造を掻き立てられてるからね。毎日楽しいよー!」
「楽しいならいいが、無理に働きすぎて体調を崩さないようにな」
「大丈夫大丈夫!」
フェアリー族は刺激を好む種族らしく、人の感情の変化を見るのがもっとも好きらしい。
喜怒哀楽ならなんでもいいらしく、だから時々フェアリー族はイタズラをするのだとか。
研究熱心なのも、人間の喜ぶ姿が見られるかららしく、現在フェアリー族は非常にやる気にあふれてくれている。
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俺の召喚魔法がおかしい 〜雑魚すぎると追放された召喚魔法使いの俺は、現代兵器を召喚して無双する〜
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