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できるかどうかは分からないが、俺と意見交換をしていたニシリーはとてもワクワクしている。
いつの間にか、周りのフェアリー族も作業の手を止めて俺の妄想話を聞いてくれていた。
「そうか?」
「うん! ていうか、人間のそれも貴族なのに、よくそんな面白そうな発想してるね! 脳を解体して見てみたいよ!」
「やめろ。……もしも、さっき言っていたようなものを作れるのなら、お願いしたいんだが……どうだ?」
「とりあえず、挑戦はしてみるけどたぶんすぐには無理かな? でも、ギルドに納品した魔道具と同じようなものならいくらでも作れるよ!」
貴族への恨みよりも、開発者としての方が感情としては大きいようだ。
「本当か? ひとまずはそれを造ってほしい。必要があれば、屋敷に住居も用意するが……どうだ?」
「え!? 屋敷に住んでいいの!?」
「ああ。そのほうが作業効率もあがるだろ?」
「うん、やるやる! ……い、いやちょっと待って。こんなにうまい話ばっかりなんてアヤシーなぁ……? 何か隠していることとかあるんじゃないの?」
……さっきまで随分とのりきだったのだが、ニシリーがそういうと他のフェアリーたちまで疑いの目を向けてくる。
ただ、ここまでのやり取りでフェアリー族の長はこのニシリーであることは分かった。
彼女を説得できれば、ゲームでも高性能だったフェアリー族たちをまとめてスカウトできそうなので、俺としてもやる気が出て来ていた。
「別に……何もない。ただ俺は、自分の領地を最高のものにしたくてな。それには、高い技術力をもったフェアリー族たちに協力をお願いしたい。……過去のヴァリドー家がしでかしたことは、俺が謝罪する。それで足りなければ……他にもいってくれないか? なんでもするから」
なんでも、とあまり気軽に口にはしないほうがいいが、フェアリー族たちにはそのくらいの誠意を見せた方がいいだろう。
なんでも、といって本当に変な要求をしてくる輩はそうはいないしな。
ニシリーがじっとこちらを見てきて、それからフェアリー族たちを集める。
「皆、集まって! 作戦会議の時間ー!」
ニシリーの呼びかけに、フェアリーたちがこくこくと頷いて輪を作る。
それから、こそこそと話を開始する。
そして、ニシリーがふわふわとこちらに戻ってきた。
「ワタシたちを雇うってことでいいのかな?」
「そのつもりだ」
「それなら……三食きちんと出してくれるならお願いを聞いてあげないこともない!」
胸を張り、自信満々げにニシリーは言ってくる。彼女に合わせ、フェアリーたちも同じように胸を張る。
……まじで? 三食用意するだけでここにいるフェアリー族すべて領地に持って行けるのか?
思わず口元がニヤつきそうになるが、俺はそれを押さえつつ頷いた。
「ああ、いいぞ」
「ふふん、それならついていってあげるよ。あっ、荷物もあるから持っていかないと……」
「準備できたら行ってくれ。俺が魔法で運ぶから」
「へ? 魔法で……?」
ニシリーが驚いた様子でいたが、俺が空間魔法を展開すると彼女は勢いよくその穴に入っていった。
好奇心、旺盛だな。
他のフェアリーたちも次々に入って出てはを繰り返す。
あんまり何度も勝手に移動しないでほしいものだ。通行するたびに俺の魔力が支払われていくんだからな……。
ただ、フェアリー族が小さいからか、そこまで大きくは消費しない。
「え!? 何これ!? 凄い魔法!」
ニシリーが反復横跳びの要領で行ったり来たりをするので、俺は少しずつ空間魔法を縮めていく。
「俺の魔法だ。移動するたびに魔力使うから、もうこれ以上は行き来しないでくれ」
「はいはーい! よーし、それじゃあ皆、引越しの準備だよ!」
ニシリーがそういうと、フェアリー族たちが次々に荷物をまとめていく。
皆、風魔法が得意なようで重たそうな荷物も次々に一箇所に集められていく。
「よかったですね、レイス様」
「ああ、イナーシアのおかげだ。ありがとな」
「いえ……レイス様の真摯さが伝わったからですよ」
「だとしても、イナーシアが普段からしっかりしてくれているからフェアリー族が俺の話を聞いてくれたんだ。これからも、頼むな」
「……はい、わかりました」
これで、多少作業が楽になってくれればいいんだけどな。
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