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「ニシリー。レイス様は他の貴族の人たちと違うから……話だけでも聞いてくれない?」
「でも、ワタシたちが街から追放されたのって、そのヴァリドー家が原因なんだけどね?」
「……それは……えーと。それはそうかもしれないけど、レイス様に代わって色々と昔の悪かったことは改善してるのよ。だから……ね。レイス様」
そこで俺に振るのか。
イナーシアが助け舟を出してくる。……そういえば、イナーシアはあまり交渉は得意ではなかったな。
フェアリー族と組ませると、イナーシアの領地運営性能も上がるというものだったが本人は戦闘の方が得意だった。
「ヴァリドー家が色々とやらかしていたのは知っている。すまなかった」
俺がすっと頭を下げると、ニシリーが慌てた様子で声をあげる。
「いやいや、別に頭下げてほしいとかじゃないし。……あー、もう。調子狂うなぁ。いいよいいよ、とりあえず中入って。話は聞くから」
とりあえず、ニシリーとのファーストコンタクトはなんとかなったな。
結界の中へと案内してもらい、俺たちは彼女らの住処へと入っていく。
建物という建物はない。皆木々の中で暮らしているようだ。
ただ、あちこちに魔道具のようなものが置かれていて、フェアリー族が何かの作業を行なっている。
パソコンの組み立てでもしているかのようにも見える。
「これは何をしているんだ?」
「今新しい魔道具の開発中。貴族様が大嫌いなやつね」
「そうか」
いちいち毒をぶつけてこないでほしいものだ。
イナーシアが攻略した依頼を代わりに俺が受けていたら好感度も多少は上がっていのだろうか?
ニシリーがイナーシアの肩に乗りながら、こちらを見てくる。
「それで? 貴族様のお願いってなに? もっと街から離れた場所に移動してほしいとか?」
「……俺の親たちならそういったかもしれないがな。今、屋敷の情報管理についてフェアリー族の魔道具を導入することを検討しているんだ」
「……へ? 貴族が?」
本当に驚いた様子でニシリーが目をぱちくりとしている。
近くにいたフェアリーたちも、俺たちの会話を聞いて驚いたように手をとめ、こちらを見ている。
フェアリー族が嫌われているのはこの見た目も理由の一つらしい。
この世界にはいくつかの種族がいるのだが、彼女らフェアリー族は魔族に似ている。
現在、北にある大陸では絶賛魔族と戦争中なので、魔族は人間の敵であり、そんな魔族に近しい見た目、能力を持っているフェアリー族も嫌われている。
彼らは見た目こそ魔族に似ているのだが、魔族とは根本的に違うんだけどな。
それこそ、エルフとかだって魔族のように耳が尖っているのだがそちらはフェアリー族ほど差別されていないんだから、もう少し優しくしてあげればいいのにな世界が。
まあ、俺は別にどっちにも嫌悪感はない。
むしろ、ゲーム好きとして、リアルのフェアリーだ! という感動のようなものを覚えている。
威厳がなくなるから、表にはもちろん出さないが。
「今、使っている魔道具に関して、我が家でも導入しようと考えている。そこで、フェアリーたちに納品してもらいたいと思っている」
「へぇ? あの魔道具を? とっても便利だよーって言っても一切使わず、下民の使う道具、汚らしい存在がつくったゴミ以下の道具って吐き捨てた貴族様が?」
相当根に持ってるんだな。
「他の貴族たちはそうかもしれないが、俺は便利だと思ったから使いたいと思っている」
「……ふーん、信じられないなぁ。そういって、ワタシたちのこと騙して何させるつもり?」
「騙すつもりはない」
と、いってもニシリーはジト目のままこちらをじっと見てくる。
……まあ、ヴァリドー家によって街から追放されたのをかなり根に持っているんだろう。
魔族との本格的な戦争が始まったのは、確か二十年くらい前か? 今は比較的落ち着いてこそいるが、別に和解したわけではないので依然として魔族との仲は悪い。
魔族と戦争が始まってからフェアリー族への当たりが強くなったとしたら、たぶんフェアリー族を追放したのもその辺の時期なんだろう。
時間が余計に、貴族への恨みを膨らませているのかもしれない。
まったく、余計なことをしやがって。
「ま、話だけは聞いてあげるよ。どんなものを作って欲しいの?」
そうだな……。
とりあえず、どこまでのことができるのかは分からないので、俺は前世のパソコンを想定し、色々と話題をふっていった。
パソコンはもちろん、スマホとかそういった遠距離の相手と通話できるような機能は搭載できるのかとか、色々とな。
「え!? 造ってみたい!」
……ニシリーは目をキラキラと輝かせていた。
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