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案の定、新人冒険者の男性たちはイナーシアの豊かな胸に鼻の下を伸ばしている。
「それなら了解だ。初めての攻略になるし、俺も後からついていって様子を見ていくがいないものだと思ってくれ」
「分かりました。それじゃあ、皆、攻略開始するわよ」
イナーシアがそういって、先頭に立つ。すでに事前の打ち合わせは済んでいるようで、イナーシア含めた六人が前のほうにたち、残り四人が新人冒険者たちの護衛を行うようだ。
ダンジョンへと入るための渦を潜り抜けると、もわりとした感触が顔を覆う。
……ダンジョンに入るのってこんな感じなんだな。
主人公が、「なんか変な感じ!」と言っていた気持ちがわかる。
今回挑戦するダンジョンは、最下層が五階層という低難易度のダンジョンだ。このゲームのダンジョンは深い階層にいけば行くほど、出現する魔物が強くなっていくのだが、五階層程度なら恐らく新人冒険者でもなんとか倒せる程度の魔物しか出てこないだろう。
案の定、同行して様子を見ていたが……イナーシアたちは余裕そうだ。
……イナーシア、かなり強くなってるな。
圧巻な槍捌きで敵を殲滅し、武器スキルも自分のもののように使いこなしている。
ゲームのように装備した瞬間使えるというわけではないので、かなり練習はしたんだろう。
彼女の目的は、打倒リームみたいだしな。最近では、イナーシアの方が訓練する時間も増えているし、今やりあったらどっちが勝つか分からないな。
何の苦労もなく、迷宮の最下層まで降り、ボス戦が始まる。
……問題、ないな。
なんなら、イナーシア一人で今回のダンジョンは攻略可能なくらいだ。
ダンジョンを攻略すると、内部にいたすべての人間は外へと吐き出される。
ボスを討伐して少し経ったところで、俺たちは外に弾き出された。
「うわ!?」
悲鳴を上げた新人冒険者たちに視線をやりながら、俺はダンジョンの入り口へと視線を向ける。
赤い渦は俺たちを吐き出してすぐに小さくなっていき、やがて消滅した。
これで、ダンジョン攻略終了だな。今回手に入った魔石はあまり多くないが、これで基本的な流れは理解できたな。
じっと見ていると、イナーシアが口を開いた。
「攻略は終わりましたけど、またしばらくしたらどこかにダンジョンってできるんですよね?」
「ああ、そうだな」
「それらを攻略していって、領地の収入にあてる……と。でも、それってあんまり利益は出ないですよね?」
「普通にダンジョン攻略を続けていれば、な。例えば、領内で需要の割に供給の少ない素材などが手に入るダンジョンがもしも見つかった場合は、攻略を行わないつもりだ」
「……そういうこと、だったんですね」
イナーシアは俺のやりたいことに気づいてくれたようだ。
……まあ、本音は良いスキルを厳選したい、なのだが。
「それじゃあ、残っている四つのダンジョンにもこのまま向かうぞ」
「え? このままですか!?」
新人冒険者たちは驚いたような声をあげたので、俺は笑顔を向ける。
「報酬は全部のダンジョンの攻略に同行、と伝えてあるよな?」
「え、ええ……そうですけど……」
「頑張れば、午前中で仕事は終わるぞ? それでも、同じだけの報酬だ。どうだ?」
「……が、頑張ります」
報酬に関しては、今の新人冒険者たちでは稼げないほどの金額だ。
暮らし方にもよるが、ある程度贅沢をしても一週間は暮らせるだろう額なんだから、できる限り働いてもらわないとな。
そのまま、ヴァリドー領内にあるダンジョン五つすべての攻略を終えてきた。
あとは、新しいダンジョンが見つかってから調査を行って、当たりかハズレかを判断するだけだ。
調査に関しては、冒険者ギルドに依頼を出し、冒険者たちに行ってもらう予定だ。
内部で発見できる魔物、ドロップアイテム、最下層が調べられるなら調べてもらう予定だ。
あとはこれで当たりを引くまでダンジョン攻略をしていくだけになる。
……少なくとも、ボスモンスターを攻略した時に獲得できる魔石がかなりの燃料になるため、赤字になるということはないだろうがゲームのようにセーブ&ロードによる厳選はできないのがネックだ。
目的のスキルや装備ドロップが狙えるまで、どれだけ時間がかかるか分からない。
まあ、さすがにゲームのときのように最適のダンジョンを引くつもりはなく、妥協ラインはいくつか設定してあるのでそこまで時間もかからないとは思うが。
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