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ダンジョン攻略を本格的に開始するため、兵士たちに集まってもらった。
イナーシアがその兵士たちをまとめる隊長だ。
現在、うちには実力の飛び抜けた兵士が何名かいる。
その人たちには兵士たちを任せる部隊長をお願いしているのだが、イナーシアは第四部隊の隊長だ。
「今日は、イナーシアたちにダンジョン攻略を行ってもらう。イナーシア、メンバーの選抜は終わっているな?」
「はい。あたし含めて、十名で行う予定です」
十名。まあ、問題はないだろう。
「了解だ。冒険者ギルドにお願いして、新人冒険者を荷物持ちとして派遣してもらっている。そちらの護衛も忘れないようにな」
「はい、分かっています」
まあ、事前にお互い打ち合わせはしている。イナーシアが丁寧にそう言ったのを確認したところで、俺は彼女の部隊メンバーをみる。
イナーシアの部隊は女性の使用人のみで構成されている。
彼女を含め、やる気のある人たちが兵士兼使用人として参加しているというわけだ。
早速俺は冒険者ギルドに向かって空間魔法を使用する。
ギルドの入り口に移動すると、そこにはギルド長とともに四名の冒険者がいた。
恐らく、今日同行する予定の新人冒険者たちだ。皆、まだまだ若々しさがあり、俺を見ると緊張した面持ちになっていた。
……緊張しているように見えるのは、俺の噂がまだ払拭されきっていないからか? それか、まあ貴族と向かい合っているからだろうか?
街を救った俺ではあるが、同時に悪名高いヴァリドー家の噂もまだ完全には消えていないからな。色々ごちゃ混ぜになってしまっているし、俺の評判がよくなるには今後の領地運営次第だろう。
時間が解決することを祈るばかりだ。
「ギルド長、準備してくれてありがとな」
「いえ、こちらとしても兵士の方々の戦闘を間近で観察できるということで皆にはいい経験になると思います」
冒険者たちも、同行しつつ戦闘に参加したい場合はしてもらっても構わないと伝えてある。
お互いメリットが出るようにはしているつもりだ。
「それじゃあ、冒険者たち。これよりダンジョンに向かうぞ」
「は、はい……っ! えっと……その、そちらの魔法で移動するの、ですか?」
俺が出現させた黒い渦を見て、冒険者たちはどこか警戒というか心配そうな様子で問いかけてくる。
「ああ、そうだ。これでダンジョン前まで移動できる。ついてきてくれ」
俺はそう言って、先んじて中へと入る。少しして、イナーシアや他の兵士たちもついてくる。
一番最後、顔を見合わせていた冒険者たちが意を決した様子で俺たちの後をついてきた。
すぐに出口を作り、俺はダンジョンの前へと移動する。
問題なく移動できたな。
最後に新人冒険者たちが出てきたところで、俺は空間魔法を閉じた。
イナーシア含め、屋敷の兵士たちは悪逆の森までの移動など、すでに俺の空間魔法での移動は経験ずみなので驚いている様子はなかったが、新人冒険者たちは目が点になっていた。
「す、すげぇ……」
「ほ、本当に転移石みたいに移動できるんだ……」
「転移石より……便利だよな」
そんな冒険者たちの反応を見ながら、俺はダンジョンへと視線を向ける。
ダンジョン。ゲームではもうすっかり見慣れた場所だが、いざこうして対面すると威圧感のようなものがあるな。
ダンジョンの入り口は俺が作り出している空間魔法に似ている。ただし、赤色の渦のような入り口となっている。
ダンジョンの入り口が俺の空間魔法に似ているというよりかは、俺が無意識のうちにこの入り口を参考に魔法を使用していたのかもしれないな。
ダンジョン内部は異世界と繋がっているとされていて、外からは分からないほどに巨大なこともある。
「今回、第四部隊に攻略してもらう予定のダンジョンについての情報はもう共有してあるか?」
「もちろん。してますよ」
イナーシアがふふんと胸を張る。イナーシアの美貌はヴァリドールに来てからさらに増したようで、大人気だ。
確かに、ゲームの時に比べて体つきはいい。たぶん、栄養状態の問題だろう。俺としては、貧乳をコンプレックスに感じていたイナーシアの反応も嫌いではなかったが、リームが密かに気にしているくらいにはナイスバディだ。
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