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この領内では手に入らない素材の入手も可能なわけで、市場に出回っていないものであればそれが新たなヴァリドー領の魅力にもなる。
第一……ここでしか手に入らないスキルもあるんだよ……!
おまけに、有用なスキルも多数あるため、ダンジョン攻略は必須だ。
「……もちろん、それらはいいものだと思いますが……直接害があるわけではありませんし、放置してしまっても良いのではないですか? 悪逆の森での訓練の方が無駄も少ないと思いますが」
ゲームでは、当たりのダンジョンを引くまで攻略して再出現するのを待っていたのだが、そこまで考えないのか。
ダンジョンでは、その段階では手に入りにくい魔物の素材が手に入ったり、ダンジョン限定装備やスキルが手に入ったりする。
だから、そういったのを厳選するために、何度も攻略し新しく出現するダンジョンを待っていたものだ。
それに、ダンジョン内部には多くの魔石が手に入るため、攻略がすべて無駄になるわけではない。
まあ、ゲームのように好きなだけ集めて売ってを繰り返していれば、いずれ需要と供給のバランスが崩れて値崩れするなどは起きるかもしれないが、いまは備蓄自体が少ないし、ある程度積極的にダンジョンを攻略していっても構わないだろう。
市場を見てみても、ダンジョン限定スキルや装備がほとんどなかったのは、この世界の人たちにとってそれらは無駄なもの、と思わせられているのかもしれない。教育のせいかなのか、あるいは主人公以外が積極的に攻略するのを防ぐためなのか……。どちらにせよ、俺にとっては都合がいいな。
ダンジョンのでやすい領地、でづらい領地というのもあり、このヴァリドー領は出やすい領地だ。
おまけに、ゲームでは最高レベルの武器を製作するために必要な特殊ダンジョンもこのエリアにしかでないなど、色々と条件としては悪くないんだよな。
「ダンジョンの攻略はそこまで悪いものなのか?」
「兵を出動させてしまうと、それに伴って様々な消費が発生します。ダンジョンは多くの場合、転移石から離れた場所に出現するらしいので……そこまでの移動を考えるとダンジョンで得られる利益を考慮してもマイナスになってしまう可能性が高いです。ですので、数回程度ならいいと思いますがあまりにも出動回数が増えてしまう……領地運営にも問題が出てきてしまう可能性があります。悪化すれば、レイス様の評価にも繋がってしまいます」
どうやら、ザンゲルは俺の評判などを心配してくれているようだ。
「……ああ、なんだそのことか」
確かに、ゲームでもダンジョンは簡単にはいけないような場所に出現していたため、正直言ってリセマラは面倒極まりなかったなぁ、と思う。
何度も運営には改善して欲しいという意見があったのだが、結局一度もそこに関しての調整が行われることはなかったので、プレイヤーたちは大変な思いをしながらリセマラしたものだ。
ただ、それに関しては問題なかった。
「ダンジョンの現場には、俺が空間魔法を使って移動させる予定だ」
「……え!? そ、そんなレイス様自らだなんて……レイス様の仕事を増やすようなことをさせるわけには!」
自分の意見で俺の仕事が増えたと思っていたようで、慌てた様子で彼は首を横に振っていた。
「その方が効率的だ。それなら、移動費のコストはほぼないだろ?」
「……しかし――」
「ダンジョンで得られる品が安定すれば、領地運営にとって大きなプラスになる。それと、ダンジョン攻略に参加した兵士たちには臨時での報酬も出す予定だ。参加はあくまで希望制にしてくれ」
ザンゲルのように、ダンジョン攻略に乗り気ではない人たちも出てくるだろう。
そういう人たちがダンジョン攻略をするかどうかは、やはり金だろう。
仁義とか色々あるだろうが、やはり明確にやる気を出させるには金が一番だ。
ダンジョン攻略時に入手した素材の売却でえた利益のいくらかを分配すれば、少なくとも赤字になるということはないだろう。
あとは、ダンジョンを何度か攻略しつつ、適正な攻略人数、報酬などを準備していけばいいだろう。
「確かに、レイス様が空間魔法を使ってくださるのであれば、懸念事項はありませんし、分かりました。やってみましょう」
「もちろん……あまりにも赤字になるようなら、兵を派遣してのダンジョン攻略は辞めるつもりだ。意見、ありがとな」
「いえ、こちらこそ、失礼な言い方をしてしまい申し訳ございません」
……ダンジョンによっては効率よく経験値を稼げる魔物もいるわけで、俺としては今後の領地の強化のためにも経験値用のダンジョンは厳選しておきたいんだよな。
あとは、素材用ダンジョン、レアスキルが手に入るダンジョン、レア装備が手に入るダンジョンなどなど。
ダンジョンの再出現には時間がかかる。
……早めに着手しておきたいのだ。
ただまあ、ザンゲルが言うように明らかに不利益になるのなら、俺がリョウとして活動しているときに攻略していけばいいだろう。
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