71
受け入れた、わけではないのだが……まあリームに対して嫌な気持ちは抱いていないからな。
原作本編が今後始まることを考えると、彼女がいることは心強い。
ただ、ちょっと、気になることもある。
「そういえば、リームは士官学園の試験を受けなかったよな?」
「ええ。これから、ますます忙しくなりそうだし」
ゲームでは、ヴァリドー家が爵位を失ったところでリームとの婚姻関係も失った。
リームは、騎士になるために学園への受験をし、レイスくんも同じように試験を受けた、というわけだ。
「レイスだって、受けなかったでしょう?」
「俺も家をついで必要がなくなったからな」
「なるほどね。でも、リョウの立場は続けるのよね? ちょっとキャラ作ってる感じの」
う、うっせぇ。少しばかり若かりし頃の厨二心が疼いていたのは確かだ。
とりあえず、その話を広げられないよう,続ける。
「この立場は、色々と使い勝手がいいんだ。第一、リョウとレイスの間に関係があると分かれば、俺にちょっかいをかけてくる奴も減るだろ?」
「あなたにちょっかい? それってどういうことかしら?」
「今後は……俺の命を狙うものも出てくるかもしれないからな」
実際、ゲームでは暗殺イベントみたいなのもあったわけだしな。
クーラルとの出会いイベントだって、その関係で発展させることもできるわけだしな。
この国は島国ということもあり、対外的な戦力のことはそこまで考えることはないのだが、その分、内戦とまではいかなくても小競り合いはあちこちで起きている。
家の中での跡継ぎ争いだったり、領地を跨いで何か問題が発生した場合の責任の押し付け合いや、利益の奪い合いなどなど……。考えただけで頭の痛くなるようなことが、日々起きている。
俺がこの家の跡を継いだのだって、内戦の結果のようなものだしな。
暗殺者に命を狙われる理由は色々だ。単純に暴君だからという理由もあれば、気に入らないから、なんていう私的な理由もある。
「色々と考えているのね」
「そういうわけだ」
「てっきりああいう活動が趣味なのかと思っていたわ」
その理由も半分ほどはあるが、沈黙で誤魔化した。
ひとまず、俺がやることと言えば情報屋を待ちつつ、色々と俺の承認が必要な作業を行っていくだけになった。
その間に、一つイベントも増えた。
計画していた通り、晩餐会を開くことが決定した。
今そちらはリームを中心になって、準備が進められている。
場所は屋敷内のイベント用に準備されたフロアだ。
まあ、そちらはリームたちに任せておけば大きな問題はないだろう。
使用人たちも、準備には慣れているらしいからな。うちの家族たちが年がら年中開いていたというわけで、ノウハウはきちんとある。
なので、俺は俺でやるべきことをやっていこうと思っている。
そのための第一弾として、俺はザンゲルに相談を行っていた。
「……ダンジョンの、攻略ですか?」
「ああ。今後はなるべくダンジョンを回って兵士たちの練度を高めていきたいと思っている」
……ダンジョン。
ゲームでは当たり前のように攻略を行っていたエンドコンテンツとも呼ばれる代物。
しかし、俺が書類を見ていたところ、ダンジョン攻略は現在まったく行われていなかった。
だからまずはザンゲルに相談したのだが、ザンゲルはその整った容姿を少し顰めていた。
「何か問題でもあるのか?」
「いえ、その……ダンジョンは攻略しても再出現してしまいますよね?」
「そうだな」
それによって、自分の欲しい素材などが手に入るダンジョンが出現するまで、リセマラを行うというのが定番だ。
しかしどうやら、それがネックのようだ。
「……ダンジョンを攻略したとしてもまた出るとなると、あまり攻略しても意味がないのでは? という意見があります」
「確かにそうだな。ただ、ダンジョンでえられる資源は豊富だろう? そこから得られる資源も使っていきたいと思っている」
ダンジョンといえば、装備品や素材の宝庫だからな。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!
皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!




