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今は、ほとんと別の領に逃げられてしまっているからな……。
俺の親父たちは、「ヴァリドールの鍛冶師たちの商品にかかる税を増やしたらめっちゃ稼げるじゃん!」くらいの安易な考えで装備品関連の税を引き上げたんだろう……。なんとなく、光景が想像できてしまった。
「分かった。それなら、その関係は任せてもいいか?」
「はい! 分かりました!」
「それじゃあ、他に意見はあるか?」
「商業面も、商人がでいりしやすいようにはしていきますか?」
「ああ、そうだ。ただ、農業面に関しては、他の街に頼る形になると思うが大丈夫か?」
主に食料関係だ。……まあ,ポーション製作のための薬草の栽培などもここにあるので、軍事面、商業面にも多少は影響あるのだが、ヴァリドール一つですべてを賄うのは厳しいというか、無駄が出る。
ヴァリドール周辺は、確かゲームではあまり農作物が育たないんだよな。
少し南に行けばいい環境があるので、その近くに町があるのでそちらにお願いして納品してもらった方が効率がいいというわけだ。
「はい。農業に関してはここから南の町近くのほうが土壌的にもいいですからね」
……やはり、そうみたいだな。
「そうだな。そちらに関しても、あとで町長に話をしないとな」
……今、どのように農業をしているのかを把握しておく必要がある。
ゲーム通りに特殊なアイテムを使って農業ができる段階まで開拓されていればいいのだが、難しい場合はそれもレシピなり設計図を見つける必要があるのだろうか?
それとも……俺が知識を伝えれば、どうにかなるのか?
とりあえず、南の町はヴァリドー家が管理しているのに、ほぼ放置されたままの勿体無い土地なので、余裕ができたら行ってみようか。
多少のやりとりをし、実情に合わせた細かな調整を最後に行い、部下たちに任せた。
部下たちもどこか安堵している様子だ。俺のことはある程度評価してくれていたようだが、まあ親が親だからな。
……今まで、家族が過剰に巻き上げていた税などを省くだけで、たぶんヴァリドールの運営自体は問題ないだろう。
そもそも、過剰な税も国に入れていたわけではなく、軍事面を強化するためにと免除してもらっていたしな。
ゲームでは、納税に関して免除ということはなかったが……頼み込めば免除、してもらえる可能性もあるんだよな。
実際、うちの親父が王に泣きついていることもあったみたいだし。
やっぱり、完全にすべてゲーム通りというわけじゃない。
ゲームなら、設定したらすぐに全領地に指示が行き渡るし、即座に何もかもが反映されるのだが……それも難しいよな。
徐々に変わっていくのを見守り、問題があればまた調整をしていけばいいか。
仕事を開始した管理官たちを見ながら、少し考える。
この世界のキャラクターたちにはそれぞれ内政の能力がある。このステータスが高いほどより高い効果を発揮する。
ちなみに、ストーリーで絶対に仲間にできる主要キャラクターたちは皆この数値が高い。なので、リームももちろん優秀だ。
……この場にいる管理官たちも、決して能力が低いわけではないが、リームをSランクとするなら、Aランクくらいの評価だ。
まあでも、俺の家族たちに怯えていただけで、積極的に不正をしたがる人たちでもない。ただ、ちょっとばかし臆病すぎるだけで悪い人たちじゃない。
ゲームでの最有力候補には上がらないが、上位の方に名前がある人たちだから……変えるってことも今は考えていない。
「これから、ヴァリドールを歴代最高の街にしていきたい。それにはおまえたちの力も必要になる。これからも頼む」
『はい!』
「俺も間違うことはあるだろう。何か疑問などあれば言ってくれ」
『分かりました!』
……俺はゲーム的に無駄のない動きはできるが、この街の現状やそこに住む人々の感情面などは考えない上での最適な行動だ。
もちろん、なるべく考えてはいるが……見落としもあるだろう。
とりあえず、皆やる気に溢れてくれているわけで、ヴァリドールに詳しい彼らをクビにするというのはあまりうちにとっても良くないだろう。
もっと優秀な人たちを他所から引っ張ってきて変えてしまうということもできるが、管理官たちもゲームと違って人間だからな……。
ゲームではより優秀なキャラクターを起用していくものだが、すっと入れ替えられたら今の管理官たちにとっても面白くないだろう。
他の部下たちにもどう思われることやら……。実力主義は大事だが、感情面も考慮してやらないと人が離れていく原因になりうる。
もちろん、彼らが何かしらの問題を起こしているならともかく、いきなり「こっちの子のほうが能力あるから交代ね」というのは良くないだろう。
やるとしたら、皆それなりの年齢だからSランクの子たちを部下として連れてきて、いずれは引き継いでもらう……くらいがちょうどいいだろうな。
ゲームではキャラクターはあくまで駒だったが、ここでは人間としてみないとな。
考えることが多いが……ま、現状は新しいゲームをしている気分で楽しくはあった。
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