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色々と、問題もある。
例えば、ゲームでは忠誠、評判といったステータスもあった。これは、自分への評判や自分の領民たちの自分に対しての信頼度を示すものだ。
その数値が低いと反乱が起き、開発、開拓していた村や町、施設を荒らされる可能性が出てくる。
その数値に関しては……わかりやすい目安がないんだよな。
ゲームでは100がマックスで、80程度まで下がると危険なのだが、現状はまだ大丈夫、と考えるしかない。
数値がさらに低くなると、場合によっては暗殺者が派遣されることもあるんだよな……。
ゲームでは暗殺者をわざと派遣させ、経験値を稼いだり、装備を回収したりというプレイングもなくはなかったが、さすがにな。
ゲームでは仮に忠誠や評判が下がっても、その後適切に領地経営をすればすぐに評判は回復するんだが……リアルではそうはいかないだろう。
いわゆる好感度という、一番見たい数値が見えないというのは、やめてほしいものだ。
おかげで、領主になってからも使用人や兵士たちが俺のことをどう思っているのかなどは、かなり気にしてしまっていた。
好感度の具合がわかれば、ある日いきなり匂いを嗅いでくる奴とかも、いなくなるだろうし。
どこから領地運営を始めていくか。
まずは、適切に税などを調整しておこうか。
無理に税を引き上げているせいで、領民からは不満がたまっているだろう。
ゲームでは……色々な遊び方があったけどな。
税金をめっちゃ下げて民を増やしたあと、領地から出られないように建物などを作っていき、税金をめっちゃ巻き上げてみるとか……。
……まあ、ここは現実でゲームのような倫理観を無視したプレイングなんてしたら、俺のクビが飛ぶ。
ゲームの知識を参考にしながら、俺はヴァリドールの管理を考えていく。
どこにどれほどの割合の金額を使うか。
……まあ、ヴァリドールの土地柄から、軍事費に多くを割くのは当然だ。
今は家族たちが無駄に金をとっていたので、その分を排除して考えれば、税をここまでとる必要はないのも事実だ。
ヴァリドールは最優先で軍事、そして他の部分に関しては、ヴァリドー領内の別の町で行っていくほうがいいだろう。
とりあえず、結界装置をしっかりと使えるくらいにはしておく必要があるからな。
ある程度考えたところで、俺は管理官たちを集め、意見を交換していく。
先ほど考えていたことを伝えていくと、部下たちから意見が出てきた。
「軍事面を強化していくのは賛成です。レイス様のおかげで、だいぶ兵の質は上がりましたがまだまだ人手は足りない状況ですからね」
「軍事面では、兵士の募集なども行っていきますか?」
「兵士の募集は、順次行っていってほしい。それと合わせて、行くあてのない子どもたちを育てるための孤児院の建築もしてほしい」
孤児院の建築は、領内の治安維持を含め様々な恩恵がある。
孤児院の子どもたちの中には、ポーション製作をするために必要な魔法を持っている場合もあるし、さらに、育った子どもたちの一定数が冒険者、兵士として参加してくれるようになるので、兵士の確保も行いやすくなる。
ゲームでは具体的な効果までは書かれていないのだが、攻略サイトに隠し効果は色々あったので、必要な施設については覚えていた。
「かしこまりました」
ちょっと不安だったが、この指示は問題なさそうだな。
孤児院の建築などは、領地運営をある程度進めていったところで見つけられる設計図などが必要だ。ゲームシステム的に、作ることはできないのだが、この世界にはすでに孤児院というものが存在するから作れるようだ。
それか、ある程度すでにヴァリドールの開拓が進んでいるからなのかもな。
現状だと、ヴァリドー家の圧政によって生み出された行くあてのない子どもたちを、ヴァリドー家が支援するという……なんともマッチポンプ気味になってしまうのだが、仕方ない。
俺がそう考えていると、管理官の一人が何か言いたそうな表情になっていた。
ただ、口に出すことはなく、愛想笑いのようなものを浮かべている。
「……何か意見あるのか?」
「え!?」
「何かあれば言ってほしい。ヴァリドールを発展させるためにな」
「えーと……はい」
俺が微笑程度の笑みとともに問いかけると、彼は少し緊張気味に頷いた。
「……その、軍事面を強化するのは、賛成です。ただ……工業面で活動する人が増えるように、増えやすいようにしたほうが良いとも思います。現在、このヴァリドール内には鍛冶魔法が使える人間自体が少ないので、そういった人たちが活動できるようにある程度は優遇した方がいいと思います」
……確かにな。
今、うちで専属契約しているのはヴィリアスくらいしかいない。
今後、兵の数が増えてくるのなら、鍛冶魔法使いは増やしていったほうがいい。
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