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さて、リームとイナーシアは……まだやってるな。
二人の実力は拮抗状態だ。どちらも負けず嫌いの性格をしていて、それはもうバチバチにやりあっている。
原作開始時点よりも、かなり強くなっているのは確実だ。すでに、今の彼女らは悪逆の森、第三層の魔物たちでさえ倒せるくらいだからな。
リームは剣を、イナーシアは槍を巧みに扱い、お互いの長所を相手に押し付けるように動いている。
……リームが、氷魔法を放つとイナーシアは槍から放った風のスキルで弾き返す。
イナーシアの持っている槍は、ヴィリアスに作ってもらったものだ。
かなり武器についたスキルも使いこなしているな。
イナーシアはまともな攻撃系魔法を持っていないため、装備スキルで補う必要があるんだよな。ステータスは非常に優秀ではあるが、その点だけは少しリームに劣る部分だ。
とはいえ、その装備スキルが固有魔法に劣るわけではない。
実際、リームの氷魔法をすべて捌いているわけだしな。
ぶっちゃけ、強力なスキルを用意できるのなら、魔法持ちと魔法なしの間に大きな差はない。
……この世界だと、強力なスキルがついた武器を用意するのも大変なこととされているようで、生まれ持った魔法が重視されている。
それによって、当たり外れという話も出て、俺のように差別される子もいるわけだしな。
だが、腕のいい鍛冶師を育成していれば、才能に左右されることもない。
腕のいい鍛冶師ならば、いくらでもスキル付きの装備を量産できるわけだしな。
この世界には、その腕のいい鍛冶師がゲーム都合で少ないんだよな。
原作のストーリーを参考にしても、良い武器は宝箱やダンジョンなどで入手するか鍛冶師が作るしかないからな。
ヴィリアスには色々な武器を作ってもらっていて、順調に育っているし……彼女とパイプを作っておいたのは大正解だ。
そんなことを話していると、ルーフがやってきた。
ルーフのあとにはゾロゾロとハイウルフたちの姿もある。
「レイス、戻ってきたぞ」
「そっちのハイウルフたちは?」
ハイウルフたちをじっと見て問いかける。わずかな期待を込めてだ。
……敵として対面したことのあるハイウルフたちだが、今は犬のように尻尾を振っている。
とても笑顔である。何かを期待するようにハイウルフたちはこちらを見ている。
「話にあった通りだ。魔物部隊に参加してもいいというハイウルフたちを見つけてきた」
「ほぉ……」
ルーフの言葉に、俺は口元が緩んだ。
ルーフが先ほど話したように、俺は魔物部隊を作りたいと考えていた。
……兵士の数を増やすより、魔物たちを従えてしまったほうが楽だと思ったからだ。
「全員、条件次第では魔物部隊に参加したいと話している」
「条件はなんなんだ?」
「人間と争わず、うまい肉が食べられればそれでいいそうだ。そのくらいは準備してくれるのだろう?」
ルーフも期待するようにこちらを見てくる。
……まあ、それでこちらの仲間になってくれるのなら嬉しいことではない。
朝昼晩。三食与えるだけで人間以上の戦力が手に入るんだからな。
ルーフのおかげで、ゲーム通り魔物部隊を作ることもできそうだな。
ゲームでは、一部の魔物がテイム可能だった。ただ、テイムをするには、主人公の魔物に好かれやすい体質、という特殊能力的な部分があったからだ。
もちろん俺は、魔物に好かれやすい特性はない。まあ、人並み程度だろう。
だが、別にそういったものがなくても、魔物と契約関係を結ぶことはできないだろうか? と考え、ルーフに協力してもらった結果がこれだ。
一部の魔物の中には、知能の高い子もいて、それが今ルーフが集めてくれたハイウルフたちということだろう。
「ルーフ、通訳を頼めるか?」
「ああ、まかせろ」
ルーフに声をかけてから、俺はハイウルフたちに視線を向ける。
「これから、ヴァリドー家では魔物部隊を作るつもりだ。こちらにいる兵士たちとともに魔物たちと戦ってほしい」
『ガウ!』
「もしも、戦ってくれるなら約束通り、毎日美味しい肉を提供しよう!」
『ガウ!!』
嬉しそうにハイウルフたちが尻尾を振り、雄叫びを上げる。
……とりあえず、大丈夫そうだな。
ハイウルフたちのテンションが上がっていることを確認した俺は、あとはルーフたちに任せることにした。
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