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その着替えの時間を使って、使用人の仕事をしてくれたほうが効率がいいとは何度か話したのだが、どうにもそういう話ではないらしくて今は着替えを手伝ってもらうようになってしまっている。
例えば、一人で着られない服なら手伝ってもらう必要もあるが、別にそういうわけでもないしなぁ……。
「それも仕事なのだから、任せましょう。イナーシア、頼んだわよ」
「ええ、お任せくださいリーム様。いつもの場所に」
リームがそういって立ち去ろうとする。
「いつもの場所ってなんだ? ていうか、おまえたちいつの間にそんなに仲良くなったんだ?」
「着替えの場所についての話よ。気にしなくていいわ」
「ええ、気にしないでください」
この二人がこういうやりとりをしていると不安に感じるのは俺だけだろうか?
まあ、二人が仲良くなれているのは、恐らくともに訓練などを行っているからだろう。
ゲームでは、パーティーに参加しているキャラクターは勝手に好感度が上がっていたからな。だから、各キャラクターの好感度イベントを見たかったらとりあえずパーティーに入れておけばよかった。
各キャラクター同士も仲の良さというのはあり、仲の良いキャラたちでパーティーを組むと、プラスでステータスにわずかながらのボーナスがあった。
まあ、命を預けて戦っていたら、吊り橋効果みたいに勝手に好感度が上がっていくのかもしれない。
今後は、そういった部分も狙っていったほうがいいのだろうか?
でも、そもそもこの世界ではパーティー、というのがどういう扱いかもよく分からない。
そんなことを考えながら、俺はイナーシアの着せ替え人形になった。
兵士たちの訓練場へと行き、訓練を開始する。
……俺の相手はリーム、イナーシア、ザンゲルの三人だ。
ザンゲルは原作に出てくるキャラクターではなかったと思うが、成長率はリームとイナーシアに並ぶほどだ。
本人のやる気があるのと、兵士長としての自覚が出てきたというのもあるのだろう。
やはり、すべてがすべてゲーム通りに行くわけじゃないよな。嬉しい誤算もあるし、もしかしたら想定外の問題が発生することもあるかもしれない。
ザンゲルはもちろん、兵士全体の動きも良くなっている。
……明確に給料体制を見直し始めたというのもあるかもしれない。
一定の実力に到達したら、給料を上げるという方針にした。
今までは、まったく実力が考慮されず、ずっと同じ給料だったので、兵士の中には不満があったようだ。
その気持ちは分かるので、財政を圧迫しない範囲で見直してみた。
前世の会社では、会社から資格を取るように言われてもそれが直接仕事に関わることがなければ給料が上がることはなかった。うちはブラックだからな。資格が必要な業務以外の仕事をしていても、宝の持ち腐れだ。
もちろん、出世するために◯◯の資格が必要だから取る、というのはあっても……取ったからといってすぐに出世できるわけでもないしな。
なるべく個人の努力が認められるように、査定に関しては今後も見直しつつ、兵士たちのモチベーションを上げていく必要があるだろう。
特に、うちの領地は兵士が大事だしな。
前回の悪逆の森での戦いは、俺がどうにかできたとはいえ、それも兵士たちの援護があったからこそだ。
今後、いかなる事態が発生しても、俺が出ることなく戦えるようにするのが、俺にとっての理想だ。
ゲームでも最強の領地を作り、部下たちだけで魔物たちを撃退できるようにするのが一つの楽しみだったなぁ。
まだまだ、査定に関しては始めたばかりなので色々と見直す必要もある。
そんなことを考えながら、ザンゲルたちとの訓練を終えたあ次は、兵士たちとも戦う。
連携の練度を高めるのが目的だ。
格上の敵が相手でも、連携して足止めをし、援軍が来るまでの時間を稼げるようにするのが目的だ。
少しずつではあるが、兵士たちも強くなっている。少なくとも、ゲームの時に比べると成長速度は段違いだ。
「よし、こんなところか」
「ありがとうございました!」
訓練の相手をつとめていた俺が、そう声をかけると彼らはすっと頭を下げてきた。
俺と兵士たちでは俺のほうが実力は上なのだが、彼らは格上相手の戦い方を理解しはじめている。
一度休憩を挟んで他の人たちの様子を見る。
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