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まだ第四層の魔物を巻き込まないためか、第五層の魔物たちは魔法までは使ってこない。
ただ、彼らの速度はかなりのもので、ぐんぐんと迫ってきている。
……そろそろ、交戦開始だ。
こちらに迫ってきていたメテオザウルスへ、俺はミスリルナイフを振り抜く。
バリアのようなものに弾かれるが、注意を向けることには成功する。
そのまま、メテオザウルスの背中を蹴り付け、一気に逆方向へと跳躍したタイミングで、結界が展開されたのが見えた。
俺は結界の外にいるが、俺たち人間はこの結界を問題なくくぐり抜けられる。
なんでも、魔物たちのみを阻むらしい。
結界の中から魔導砲や魔法が飛んできて、魔物たちにヒットしていく。
残っているのは、第四、第五層の魔物たち。
第四層はともかく、第五層の魔物相手となると俺もまだ苦労するからな。
……少しでもバリアを削ってくれればいいんだが。
短剣を両手に持ち、俺は地面を蹴った。
狙いはメテオザウルス。広範囲魔法を持ち、一番厄介だからな。
赤みがった鱗のそいつへ突っ込んでいくと、脇からブラドザウルスが迫っているのが見えた。
突っ込んできたブラドザウルスの攻撃を横に跳んでかわす。
邪魔しやがって。即座に短剣で切り裂き、その背中を足場にしてメテオザウルスへと飛びかかる。
俺が持っていた短剣を握り直した瞬間、異様なほどに魔力が膨れ上がっていく。
また別のメテオザウルスか。魔法の準備が完了したようだ。
その狙いは、俺ではなく結界のほうだ。
メテオザウルスの得意魔法、メテオは文字通り隕石のような石を落とす魔法だ。
あんなものをまともに食らったら、うちの結界が一瞬で崩壊しかねない。
そんなことを考えている間に、魔法が放たれる。
「ガアアアア!」
メテオザウルスの咆哮に合わせ、頭上からいくつもの隕石が落ちていく。
街の方から悲鳴が上がるが……俺としてはラッキーだ。
空間魔法を展開し、隕石魔法を回収した俺はこちらに突っ込んできたブラドザウルスへとそれを放出した。
「ガアアアア!?」
この中で一番魔法耐性が低いブラドザウルスならば、大ダメージとなるだろう。
案の定、まとっていたバリアが剥がれたので、俺はすぐに地面を蹴り付け、ブラドザウルスへと迫り、短剣を振り抜いた。
冥牙の切れ味は今日も最高だ。ブラドザウルスの首を落としはしたが、まだまだその数は多い。
戦闘を終えたあとの一呼吸は、今日ばかりはとれない。すぐにミスリルザウルスが突っ込んできて、俺は攻撃をかわしながら短剣を振り抜く。
ウルトラゴーレムに勝るほどの頑丈さだ。バリアを削るように短剣を振り抜いた俺は、その場から逃げるように跳躍する。
今まさに、俺を狙っていたウルトラミノタウロスの斧がミスリルザウルスの頭へと当たる。
仕留めるようなダメージはない。しかし、ミスリルザウルスが一瞬よろめく。そのまま仲間割れでも起こせばいいと思っていたが、両者の目は俺を捉えている。
まあ、それは分かっている。俺は短剣を強く握りしめてから、重力に身を任せるようにしてウルトラミノタウロスを両断した。
脇から、ブラドザウルスのツノが飛んでくるのが見えた。
それを一瞥した俺は、空間魔法を展開して攻撃を受け流す。
空間魔法の出口を、ミスリルザウルスに当たるように出現させる。
「グア!?」
ミスリルザウルスがよろめき、バリアが消え去った。
隙だらけとなったその首元へと冥牙を振り抜くと、抵抗なく切り裂けた。
援護は増えていく。すべての魔法が俺を避けるように、魔物たちへと当たっていく。
戦闘を重ねていると、どんどんと体が軽くなる。
ハイペースで魔物たちを葬っていく。
残る魔物は一体――。
短剣を構え直した俺はじっとこちらを観察していたそいつを見て、思わず眉根を寄せる。
……悪逆の森では見たことのない魔物だな。
現れたのは頭のない馬の魔物……デュラハン。
恐らくは特殊モンスターなのだろう。まるで、魔物たちを従えていた長のような雰囲気を持っていたデュラハンが馬を走らせる。
長剣を構えながら迫ってくる。
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