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そろそろ、時間だな。
迫る地響きを聞きながら、俺は空間魔法を展開する。
異常なほどに膨れ上がった魔力に、一部の魔物たちは警戒するように足を止める。
……さすがに、第四、第五層の魔物の一部は気づいているか。
ただ、別に連絡を取り合っているわけではないようで、その魔物たちが別の魔物を止めるような行動はしない。
……これなら、まあ気付かれないだろう。
第一層から第三層までの魔物は、こちらに気づき突っ込んでくる。
獲物を見つけたという喜びだろうか。先ほどよりも進行速度が上がっていく。
――ここだ。
俺は空間魔法を発動し、ある部分を抉り取った。
それは――地中だ。
『ガアッ!?』
戸惑いの声を上げながら、魔物たちが崩れ落ちていく。
突如として足元が崩れたのだから、そうなるのも仕方ないだろう。
俺が空間魔法で抉ったのは、彼らの足元にある土だ。
それも、かなり深く。
魔物たちをまとめて転移させていたら、かなりの魔力を消費して俺のほうがもたないが、土ならば……まだ消費量は少なく済む。
いやまあ、それでもかなり使うんだけど。
穴に落ちた魔物は、八割ほど。俺の魔法に気づいて足を止めたやつや、そもそも枠に入りきらなかったやつもいる。
それでも、八割ほどの魔物たちの足を止めた。
俺はその穴に落ちた魔物たちへ、先ほど回収した土を降り注ぐ。
相当深く掘ったので、かなりの重量になるはずだ。
事実、その衝撃は凄まじく、穴の中からいくつもの悲鳴が漏れ聞こえてくる。
だが知らん。そこが奴らの墓場だ。
段々と音は減っていく。
問題はここからだ。
「レイス様の攻撃から逃れた魔物たちに魔法を放て!」
即座に、ザンゲルの指示が飛ぶと魔法が放たれる。
色鮮やかな様々な魔法が、こちらへ向かってきていた魔物たちを弾き飛ばしていく。
……穴を警戒しながらも、第四層第五層の魔物が奥から突っ込んでくる。
準備していた魔導砲を、イナーシアが放つ。自分の魔力を込めてもらって使った一撃はかなりのもので、迫ってきていたウルトラゴーレムを弾き飛ばした。
仕留めるまではいかないが、十分だ。
次々に攻撃を放つが、その中をくぐり抜けてきたゴブリンをザンゲルの剣が斬りつけた。
……第四層以上の魔物たちは俺の魔法を警戒して足を止めたことでうまく分断ができた。
おかげで、今残っている魔物たちならザンゲルたちで対応できる。
次々と迫り来る魔物たちを、皆が狩っていく。悪逆の森で散々訓練をしてきた皆だ。この程度の魔物たちは訓練と同じだ。
第一、第二層の魔物はほとんど蹴散らし、第三層の魔物が迫ってくるがそれも数的有利をとっていけば倒せなくはない。
今なら、リーム、ルーフ、イナーシアも第三層相手に戦えるからな。
ザンゲル、リーム、ルーフ、イナーシアを軸にすれば、第三層までは問題ない。
問題は、ここから先。
第四層の魔物が迫ってくる。
魔導砲が放たれ、直撃するがそれでも突っ込んでくる。
……やはり、奴らくらいになると容易く討伐はできない。
いくつもの魔法が放たれるが、それでも倒れない。
突っ込んでこようとしたウルトラトレントを俺は、冥牙で切り裂いた。
……リョウのとき以外は使いたくないが、まあ短剣だけ見ても気づく人はそうはいないだろう。
さらにその陰から迫ってきていたウルトラミノタウロスも、即座に両断する。
「……一撃で」
フィーリア様の驚きの声に返事している余裕はない。
俺はザンゲルに指示を出す。
「ザンゲル。ここからギリギリまで第四層の魔物を片付けていく。俺が第五層の魔物と交戦したタイミングで結界装置の起動命令を出してくれ」
「承知しました!」
……あまり、長くはもたないからな。
できる限り結界は温存して、第五層の魔物たちに使いたい。
奴らは、平気で魔法をぶっ放してくるからな。
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