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「……そうですね。相手は悪逆の森の魔物たちです。私からも父に報酬に関しては話しましょう」
フィーリア様がそういうと、冒険者たちの表情が明るくなっていく。
「期待していますよ!」
「よーし、頑張るぞー!」
冒険者たちの明るい声が響き渡る。
皆、やる気なようで何よりだ。
冒険者たちには、門付近の警備をお願いしている。
全員に、結界の外に出ないように魔法で攻撃してもらう作戦だ。
兵士たちも同じだ。冒険者たちよりも前に列を作ってはもらっているが、全員結界内にいるように伝えている。
作戦としては、単純だ。結界を発動している間に魔法と魔導砲で削っていく。
そこに、俺も参加して敵を減らすだけ。
「兵士たちの配置完了しました!」
ザンゲルの声が響き、俺は頷く。……そちらには、リーム、ルーフ、イナーシアも参加しているはずだ。
もっとも結界から近い彼らは、すべての攻撃を掻い潜り結界に攻撃をしてくる魔物を撃退してもらうつもりだ。
「俺が攻撃のタイミングに指示を出す、全員それまでは待機していてくれ」
「了解しました!」
あとは待つだけだ。
魔物たちが進行してくるのを待ち続ける。
その時間にも、情報はいくつも舞い込んでくる。
他の街へ援軍の要請もしているが、到着はやはり一日程度かかること。
向かってきている魔物たちが、どの層にいるものかの情報などなど。
それを聞いていたフィーリア様の表情が険しくなっていく。
まとめられた魔物の情報を見て、フィーリア様は絶望的な声をあげる。
「……第四、第五層の魔物もいるなんて」
「数は少ないですが、厄介そうなのが何体かいますね」
俺もまだこれだけの集団と戦闘したことはないので、第五層の魔物相手は不安が残る。
「……第四層は魔導砲があればまだなんとかなるかもしれませんが、第五層なんて……そんなの、どうすれば――」
「魔導砲に関しても、四基しか使えるものはなかったのであまり頼れない状況ですがね」
そういうと、フィーリア様は愕然とした表情とともに口を開く。
「それに関しても、不満があります。なぜ、四基しか使えないようなことになっているのですか?」
「それは領主に聞いてください」
「……ヴァリドー家については、一度見直すべきですね」
……もっと早く検討するべきだったとは思うがな。
まあでも、転生する前でも似たようなことはあったな。
問題が発生するまで、何も準備をせず、いざ事が起きたら何もできませんでした……というのはわりとよくある話だ。
いざ事件が発覚してから、誰が悪い、あいつが悪い、俺じゃない、と言い訳を並べるのだ。
嫌なことを思い出してしまったな。
前世のことは一旦忘れることにして、俺は魔物たちを観察する。
そろそろ、か。
確実に近づいてくる魔物たちに、皆の緊張が高まっていくのがわかる。
ザンゲルがこちらを見てくる。焦りはない。俺を信頼してくれているようだ。
「ザンゲル。俺が先制攻撃を放つ。俺の攻撃で取りこぼした魔物が現れたら、攻撃の指示を出してくれ」
「分かりました!」
フィーリア様が首を傾げて問いかけてくる。
「……あなたの魔法攻撃が、開戦の合図ですか?」
「ええ。フィーリア様も使える魔法をぶっ放してくださいね」
フィーリア様の問いかけに、俺はこくりと頷く。
リーフ、イナーシア、ルーフたち。それだけではない。兵士や冒険者たちの視線も集まっているのが分かる。
情けない姿は、見せられないな。
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