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「レイスさん、お久しぶりです」
「……お久しぶりです」
「今日はどの程度変わったのか、確認にきました。レイスさんがどの程度強くなったのかも、ですね」
「期待に応えられるよう、頑張りますね」
以前より、俺はかなり強くなっているのでこちらは問題ないだろう。
俺たちが仲良く話していると、兄たちから睨まれる。
……ついでに、リームからもなんだかちょっと不満げな目を向けられる。
フィーリア様はそれに気づいてなのかは分からないが、すぐに俺の父に視線を向けた。
「ルーブルさん。本日は兵士たちの状況について確認に来ました。早速で悪いのですが、訓練場の方へ見に行ってもいいですか?」
「……え、ええ……わかりました」
父は滅茶苦茶焦っている。
……まあ、軍事費を使って多少装備品を購入していたが、それでも兵士を追加で雇ったわけではないからな。
兵士を雇わない理由は簡単だ。一度雇うと継続的に経費が増えるからだ。
父たちからすれば、装備品は、メンテナンスしない前提であるため、初期費用しかかからないからな。
フィーリア様たちとともに、俺は隣接された訓練場へと向かう。
フィーリア様がやってきた瞬間、
「集合!」
『おう!』
兵士長ザンゲルの声が響くと、兵士たちが一斉に声をあげ集まった。
全員ぴしっと背筋を伸ばし、まっすぐにフィーリア様を見ている。
……以前と比べて、こういった見栄えの良さも指導しておいたので、フィーリア様としても少し驚いているようだ。
「フィーリア様! 本日は第一部隊の戦闘訓練をお見せしますのでどうぞよろしくお願いいたします!」
「え、ええ……楽しみにしています」
フィーリア様にそういうと、すぐにザンゲルの号令が飛んで訓練が開始される。
全員が訓練用の武器を使って訓練を行っていくが、以前よりも明らかに動きが違う。
「……」
フィーリア様は、感心した様子で訓練を見ていく。
……この第一部隊は、この家にいる兵士たちの中でもっとも優秀な三十名を集めたものだ。
いわゆる、一軍。ザンゲル以外の人たちは、集団であれば第二層の魔物とも渡り合えるくらいには成長している。
ザンゲルに至っては、第三層のハイウルフくらいならば倒せるくらいの実力にはなっている。
ザンゲルの成長速度が高いのは、おそらく彼に才能があるからなんだろうなとは思う。
しばらく訓練をしていたのが、やがてイナーシアとリームもそこに加わる。
「あちらの女性は、使用人の方ではないのですか?」
イナーシアの服装はメイド服のままだ。フィーリア様が不審げに父に問いかけると、父もハテナという顔である。
……やっぱり、イナーシア様の存在さえ認識していないか。
口を挟むか迷っていると、フィーリア様の視線がこちらに向いた。
誰も知らないとなると、俺が何かしたのではないか、と考えたようだ。
「レイスさん、彼女について知っていますか?」
「ええ。彼女は、イナーシアです。使用人と兵士として従事してもらっています」
「……あの衣装のまま戦えるのですか?」
「使用人の服装のまま戦うこともあります。この家では、そういった人も多いですよ」
……元々が男性向けゲームなので、女性のほうがスペック的に高いことが多いんだよな。
なので、俺は脳内データベースから使用人で戦えるだけのスペックを持った人たちには兵士の訓練も行ってもらっている。
もちろん、それぞれやりたいやりたくないはあるだろうが、俺が話してみたところ皆OKという感じだった。
なので、我が屋敷の半分以上の使用人は、そこらの民間人よりも強い。すでに、第一層の魔物たちなら問題なく戦えるくらいにはなっている。
兵士を新しく雇うことはできないが、このおかげで多少は補強できている。足りない分の給金は、俺の素材売却で得た利益で何とか誤魔化しているだけなので、そのうち破綻するかもしれないが。
まあ、今の無駄な経費を見直してくれれば解決するんだけどな……。
家族たちにその意思はなさそうなんだけど。
俺が解説すると、フィーリア様は満足げに頷いている。
だいぶ、状況はまともになっているはずだ。なんなら、俺のゲーム知識で強化された今のメンバーの方が以前よりも戦力的には上の可能性もある。
これで、爵位が取り上げられるようなことはないだろう。
あと数ヶ月でゲーム本編が始まるわけだが……無事、迎えられそうだな。
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