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巨大な体を揺らし、黒の鱗に覆われた体表面が光沢を放っている。獲物を探しているのか、黄色い目をぎょろぎょろと周囲に向けている。
すでに、警戒状態に入っているようだ。……まだ俺の居場所までは割れていないようだが、気づかれているのか。
ブラドザウルスにら、唯一鋭いツノがあり、それを剣のように使って攻撃してくる時もある。
なんなら、サメの歯のように再生するのだが、その再生速度が異常で、折ってもすぐ復活する。
……まあ、だから部位破壊は何度もできるのでゲームでは破壊した回数だけドロップアイテムに部位破壊の分が入っていたのだが、それは現在のバージョンでは修正されている。
それにしても、凄まじい威圧感だ。一歩歩けば、地を揺るがすような足音が響く。
……まあ、とはいえ近くに他の魔物もいないため、ここでなら戦いやすいだろう。
俺は軽く深呼吸をしてから、最強装備に身を包んでから攻撃を仕掛ける。
空間魔法での奇襲はしない。それなら、魔力を注ぎ込めば倒せることは、自分の魔法の性能から理解しているからだ。
向こうも即座に反応する。先制攻撃をする暇さえないか……!
俺が一気に加速して短剣を突き出すと、ブラドザウルスは自慢のツノで受け止める。
俺は短剣を滑らせるようにして、その顔を切り裂いたが、切りつけたという感触はない。
これがバリアか。
バチバチとまるで雷のような音が響き、ブラドザウルスが力を込めてくる。
後方へ飛び退き、一度体勢を立て直すと、すぐにブラドザウルスが突っ込んできた。
速い。攻撃を横に跳んでかわし、短剣を振り抜く。
まずはバリアを削いでいく必要がある。皮を剥ぐような気持ちで、俺はブラドザウルスにダメージを与えていく。
……速度はついていけている。
とはいえ、僅かに優っているだけで、一つ気を抜けば一瞬でやられるような相手だ。
俺は集中を切らさず、ブラドザウルスを切りつけていく。
二回、仰け反ったな。
ブラドザウルスのバリアは、三回のけぞれば破壊できる。
初見で戦えば、無敵とも思えるようなブラドザウルスに絶望するのかもしれないが、こっちは向こうを仕留めるまでのシナリオができている。
ブラドザウルスがギロリとこちらを睨みつけて突進してくるが、俺はそれに思い切り短剣を振り抜いた。
「ギッ……!」
一瞬の短い悲鳴が響くと、ブラドザウルスが大きく仰け反った。
同時に何かが割れるような音が響き、ブラドザウルスを覆っていたバリアが壊れた。
隙だらけのその体へ、俺は冥牙とミスリルナイフを叩きつける。
バリアが破れたというのに、かってぇな……!
だけど、さっきと違って明確に傷が増える。
「グ……ッ!?」
ダメージを受けたことが少ないだろうブラドザウルスは驚いた様子で睨んでくる。
これまで、怪我したことすらないんだろう。俺もバリアがあれば上司のパワハラからも傷を負うことはないのかもしれない。
悪口とか暴言からも守ってくれればなおよしだ。
地面を蹴り、左右に飛び回るようにしながらブラドザウルスの足を執拗に攻撃すると、倒れる。
起きあがろうとしたブラドザウルスに攻撃を叩き込むと、
「ガァァァァァ!」
ブラドザウルスが咆哮を放ち、衝撃波で吹き飛ばしてくる。
体を起き上がらせたブラドザウルスを一瞥してから、俺は小さくため息を吐く。
さっきの咆哮に反応して、こっちに向かってきてる魔物がいるな。
……まだ、さすがに魔法なしでは倒し切るまではいかないか。
他の魔物が来なければ、このまま短剣のみで戦っていきたかったが、仕方ない。
数が増えたら倒せるものも倒せなくなるので、俺は空間魔法を解禁する。
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