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ギルド近くにある我が家の建物に転移する。そこは荷物の倉庫などで使われていて、管理は兵士や使用人たちに行ってもらっている。
俺が内部に空間魔法で移動しても怪しまれる心配のない場所だ。
俺が空間魔法で移動すると、ちょうどイナーシアたちがいた。
今日はイナーシアたちが清掃を行う日だったようだ。
突然現れた俺に、イナーシアがびくりと肩をあげ、残り二人は笑顔とともに頭を下げてきた。
「あっ、レイス様。こんばんは」
「ああ。ご苦労様。今日はこっちの清掃をしていたんだな」
「うん! イナーシアお姉ちゃんと一緒にね!」
二人がにこにことやってきて、俺は妹のような気分で彼女らに笑顔を返す。
イナーシアがゆっくりとこちらにやってくる。
「レイス様はどうしたんですか? またギルドに用事ですか?」
「ああ。集めた素材を売り捌く必要があるからな」
現状、我が家の装備品などの補強は俺のポケットマネーから出てるからな。
家族皆が好き勝手に使うせいで、わりと切羽詰まった財政状況なのだ。
今日も家族たちはどこかのパーティーに参加するらしい。
まあ、この領が残っている間くらいはせいぜい楽しんでおけばいいだろう。
「あたしもついていきます」
イナーシアがすぐに準備を整えると、そういった。
「いや、別に一人で大丈夫だが……」
「兵士や使用人の方がいっていましたよっ。レイス様はふらっと一人でどこかに行っちゃうからちゃんと見張るようにって」
「……そうか」
いつの間にか色々な人に心配されるようになってしまった。
元々最悪の評価だったから、まともになっただけで評価が上がっているんだろう。不良が子犬に優しくしているみたいな。
俺としては普通に戻っただけなのだが、それだけ世の中の貴族にまともなやつが少ないということなのかもしれない。
まあ、評価される分には悪い気はしないが。
準備を終えたイナーシアとともに、俺は倉庫からでた。
ここからギルドまではすぐなので、我が家としては良い場所に倉庫を持ってくれているという気持ちだ。
一応、昔はギルドの置き場に困ったポーションなどの備蓄用品をおいていたらしいが、今は我が家で不要になった高そうな品々が並んでいる。
全部売り飛ばせば、兵士たちの一か月分くらいの食費になるんじゃないだろうか?
そんなことを考えながらも俺は街の人と交流をとっていく。
顔見知り程度の人たちではあるが、知っている人も増えてきたなぁ。
一通り挨拶を返していると、イナーシアが穏やかな表情でこちらを見ているのに気づいた。
「どうしたんだ?」
「いえ、その……レイス様って噂とまったく違ったなぁ……って思いまして」
「噂……ああ、ヴァリドー家はロクな噂がないもんな」
「そう……ですね。ただ、最近ではレイス様だけは違う、という噂もありますよ」
「本質は変わらないかもしれないぞ?」
「だとしても、行動がしっかりされているのですからいいと思います」
イナーシアが嬉しそうに笑う。
こいつ、ツンデレだったはずなのだが、屋敷に来てからはかなり素直だよな。
彼女は、本来であれば孤児院を転々とする生活を送っていたはずだ。
もしかしたら、直接屋敷で引き取って多少なりとも人格の形成に影響があるのかもしれない。
まあ、素直なのはいいことだ。これからも、その素直さを大事にしてほしいものだ。
「屋敷での生活は苦労してないか?」
「はい。問題ありません」
「それなら良かった。まあ、不自由があれば言ってくれ。できる範囲で改善できることもあるかもしれないからな」
「……ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げるイナーシア。
……たまに子どもっぽい性格が見えるが、基本的には大人だよな。
大通りへと抜けると、また街の人たちに声をかけられる。
「あっ、レイス様! 先日は街近くにでた魔物の討伐、ありがとうございました」
「ん? ああ、気にするな。ギルドの依頼にあっただけだからな。それよりも、ちゃんと商品の納品はできたのか?」
「ええ。レイス様のおかげで遅延なく対応できました」
「それなら良かった」
「おお、レイス様じゃないですか!」
……そんなこんなで街の人たちに声をかけられていく。
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