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確実に転生したばかりのレイスくんよりも強いので、もしもレイスくんがセクハラをしたとき、本気で抵抗されていたら今頃レイスくんの体はボコボコにされていただろう。
イナーシアの表情が少し険しくなる。連続で繰り出す攻撃は、かなりの体力を消費するはずだ。
その隙をリームは見逃さない。即座に地面を蹴り付けると、一気にイナーシアへと迫った。
イナーシアは顔を顰めながら、再び有利な距離を確保するために後方へ跳ぶ。
同時に、イナーシアは牽制のための槍を振り抜いたのだが、跳びながらであり力がこもっていない。
そこを、リームに狙われる。
槍を払い除けるように剣を振るわれ、イナーシアは手から槍をこぼした。
からんからんと無情な音が響くと同時、リームがイナーシアへと距離を詰め、その首元に剣を突きつけた。
「……はい、そこまでです」
家庭教師の声が響き、模擬戦は終了となる。
イナーシアは悔しそうに拳を握り締め、リームは微笑を浮かべる。
……頼もしい子たちだな。
ヴァリドー家がなくなったあとの兵士の代表には、イナーシアの名前もあるかもしれない。
「どうでしたか、レイス様」
笑顔とともに問いかけてきたのはリームだ。
「ん? ああ、かなり強いな」
「……ですが、今のままではレイス様に並べるほどではないと思っています。もっと、精進したいと思います」
それは、リョウとしての戦いを見ているからだろうか?
あまり掘り下げられたくないので、適当にやり過ごす。
「そうか。とりあえず、これから訓練をするときはさっきの装備を身につけるのを忘れないようにな」
「わかりました」
リームはとりあえずこれでいいか。
問題はイナーシアだ。
負けたことがよほど気になっているようでら未だむすっとした様子のイナーシアに近づく。
「イナーシア。そう不機嫌になるな」
「……別に、なってないわよ。……なってない、ですよ」
「おまえはまだ戦いを学んでそんなに経ってないだろう。リームとは年季が違うんだ。それであそこまで戦えれば十分だ」
リームは幼い頃から父に剣を学んでいると話していたことがある。
そんなリームにあそこまで粘れただけでも十分だ。
うちの兵士たちでリームとまともに戦えるのは、兵士長と一部の兵士たちくらいだろう。
「でも、あたしは勝ちたかったんです」
「なら、次は負けないように頑張れ。期待してるからな」
「…………うん」
イナーシアはまだぶすっと頬を膨らませていたが、それでもとりあえずは納得してくれたようだ。
恐らく、イナーシアのほうがレベル的にはかなり低い状態だろうから、今後次第で十分イナーシアも逆転できるだけの力があるだろう。
イナーシアの機嫌を直すのに成功したと思ったら、今度はリームが少し不機嫌そうになっていた。
許嫁なのに女性と仲良くしているのが気に食わないとかだろうか?
……この立場というのも大変だな。
俺はルーフとともに悪逆の森で魔物を狩っていく。
ルーフは仲間になった時点ですでに第二層の魔物とも渡り合えるくらいの力を有していたからだ。
ルーフが第二層の魔物相手に問題がないのを確認してから、俺は第四層へと向かう。
……この階層の魔物たち相手なら問題はなくなってきたのだが、第五層はさらに一段階敵が強くなるからな。
奴らは、魔力によるバリアのようなものを展開しているため、まずはそれを剥がす必要がある。
剥がすにはそれなりのダメージを与えなければいけないが、今の俺では剥がすだけでも時間がかかるだろう。
剥がしてしまえば、魔法の通りも良くなるのだが、剥がさないとまともに相手できない状態だ。
……どうするかねぇ。
今の俺の力で足りているのかどうかはやってみないと分からない。
第四層でいつも通りに戦闘を終えた俺は、ルーフとともに屋敷へと戻っていった。
屋敷に戻った後、俺は冒険者ギルドへと向かう。
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