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先日、リームたちを助けたあとのことだった。
リームが突然会いたいと話してきた。
……脳裏によぎるのは、この前のリームを助けた後のことだ。
まさか、気づかれた? ……少し焦りはある。
べ、別にリームに正体がバレるのは構わない。彼女ならきっと約束すれば、黙っていてくれるだろう。
……だから、たぶん大丈夫なはずだ。
とりあえず、朝練として悪逆の森の魔物たちを倒してきたあと、俺は空間魔法を展開し、すぐに屋敷へと戻る。
しばらくすると、部屋の扉がノックされる。
扉を開けると、使用人がリームを案内してくれていた。
「お久しぶりです、レイス様」
すっといつものように丁寧に頭を下げるリームに頷く。
いつも通りの落ち着いた笑顔を浮かべるリームに、俺も同じように笑顔を返す。
「ああ、久しぶり」
久しぶり、といっても一週間も経っていない。
部屋に入ってきたリームはいつものドレスとは少し違って動きやすそうな格好だ。
……どうしたんだろうか?
そんなことを考えていると、リームがじっとこちらを見てくる。
「あの、レイス様。少し、よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「今日は、いくつか聞きたいことがあって会いにきました」
……まさか。
「なんだ?」
心当たりはあるが、答えない。もしも俺の予想していたものと違った時、自白することになるからな。
俺は少し緊張しながら、問いかけるとリームは真剣な眼差しで口をひらいた。
「私……その、私もレイス様のお力になりたいと思っているんです」
「……え? どういうことだ」
突然のリームの言葉に、俺は首を傾げる。
「あなたは将来のために、力をつけているのですよね? 私のために……ふふっ……あっではなくて、ですね……とにかく、私も守られてばかりでは嫌です。ですので、剣を学ぼうと思っているのです」
なんだかリームが少し怖い笑みを浮かべていた。
な、なんだ? ゲームでも見たことのない不気味な笑みに困惑する。
こんなの、俺の脳内攻略データにはない。
「よくわからないが、とにかく強くなりたいってことでいいのか?」
「はい。ですがそろそろ父の指導だけでは限界で……できれば私に戦い方を教えてはくれませんか?」
……それは、とても嬉しい限りだ。
ぶっちゃけ、リームがいつまで俺の近くにいてくれるかは分からないが、たまにこの領地のことを思い出して力を貸してくれれば嬉しい限りだ。
「それなら、今イナーシアが家庭教師に剣を教えてもらっているし、一緒に混ざるといいかもな」
「……イナーシア、ですか?」
「ああ。最近保護した子でな」
「そう、なのですね。女性ですか?」
「女性だが……なんだ?」
「……分かりました。とにかく、私もそれに混ざりたいです」
「ああ、了解」
リームがなぜかさらにやる気満々になった。
とりあえず、安堵する。
どうやら、リョウのことはバレていないようだ。安心安心と思って席を立つと、リームがすっと一歩近づいてきた。
そして、それから口を開く。
「……やはり、そうですよね」
「ん?」
「レイス様は……リョウ、として活動していますよね?」
「…………え?」
俺は自分の頬が引き攣るのが分かった。
落ち着け。
まだ、カマをかけているだけかもしれない。
俺はダラダラと浮かんでくる冷や汗を、空間魔法で消しとばす準備をしつつ、口を開く。
「リョウ、というのは……確か、ヴァリドー領内で活動している自称冒険者の人、だったか?」
「とぼけないでください、レイス様。レイス様、ですよね?」
「……」
もう、誤魔化せる気がしない。
リームはゲームでも真実を見抜く目はもちろん、ここぞというときの自信と度胸を持っている優秀な子だ。
凛々しく、逞しく、クールなキャラクターの彼女は主人公に対しては少しだけデレる一面も見せていた。
……そんなリームに、ここまで言われてしまったら、もう誤魔化すことは難しいだろう。
「なぜ、分かったんだ?」
俺は諦めるように息を吐き、椅子に座る。
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