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あの人、父親だったのかい。
そういえば、レイスくんのときの記憶を掘り返すと……確かに似たような顔の人と一度だけ会ったことがあるような……。
どちらにせよ、このままだとハイウルフに壊滅させられそうなので、俺はすぐに地面を蹴った。
まさに追撃を加えようとしていたハイウルフの脇腹を切り裂く。
ハイウルフは俺に反応して身を反転してすかさず攻撃をかわした。
……へぇ、こいつ悪逆の森の奴よりも強いかもしれない。
「あ、あなたはもしかして……リョウさんですか!?」
「……」
兵士の問いかけに、俺は何も答えない。
……さすがに、リームに声を聞かれたらバレる可能性があるからな。
それにしても、俺の姿だけ見てすぐにその名前が出るあたり、この名前もかなり売れてきたな。
ハイウルフが警戒した様子を見せたが……その程度の警戒でどうにかなると思っているのか?
俺は一呼吸の後、一瞬でハイウルフに距離を詰め、短剣を振り抜く。ハイウルフはまったく反応できなかったようで、その体を両断することに成功した。
「……」
こんなところか。
歓声があがるなか、俺はすぐにドロップアイテムのみを回収して立ち去る。
「……ありがとう、助かった」
背後から、他の人に肩を貸してもらいながらのリームの父がそう言ってきた。
俺は何も返事はせず、森へと移動し、誰も近くにいないのを確認してから空間魔法で部屋へと戻る。
俺は自分の装備品たちを空間魔法でしまってから、息を吐く。
……戦ってから思い出したのは、リームのストーリーだ。
リームは、昔父に魔物を殺されてしまったという話があった。
もしかして、その魔物って……あのハイウルフなのだろうか?
だとしたら、偶然とはいえ助けられて良かったな。
「……なんとかなって良かったな」
「……そうね」
「あのリョウという冒険者がいなければ危ないところだったな」
「……そうね」
私はお父様の傷を手当しながら、そう答える。
私の家は子爵であり、大きな屋敷もなければ使用人もいない。
母は私を生んだ時に亡くなってしまっているので、今はお父様と二人で暮らしていた。
「どうした? さっきから心ここにあらずという感じだが」
「……そうね」
「いや、そこ素直に頷かれても困るのだが……大丈夫か?」
お父様は心配そうにこちらを見てくる。
そこで、私は……こくりと小さく頷いておいた。
私が考えていたのは……あのリョウという男性だ。
彼は……レイス様だ。
……他の人は気づかなくても、私は誤魔化せられない。
だって、レイス様と同じ匂いがしたのだもの!
私が毎週胸一杯に嗅いでいるあのレイス様とまったく同じ匂い。
それがあのときもしたのだから、間違えるはずがない。
どうして、変装などしているのか。
それはともかくとして……私のレイス様への気持ちはもはや止めることはできなかった。
「お父様。明日、レイス様に会いに行ってくるわ」
「え? そうか。一昨日にも会いに行っていたと思うが……そんなにいくと迷惑ではないか?」
「でも、そろそろレイス様成分がきれてきてしまいそうだし……」
「……レイス様成分?」
今はなんとかレイス様に頂いたハンカチを毎日嗅いで耐えているが、段々と匂いの鮮度が落ちてきてしまっている。
早いところ、新しいものを補給したい。
……じゃなくて、なぜリョウとして活動しているのかを聞きたかった。
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