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ゲームのキャラには、魔法を一切持っていない子もいるわけで、そういった子には武器スキルで補強するのがいい。
「この四つの武器スキルを付け替えてくれないか?」
「了解だ」
ルーフがエンチャント魔法を発動し、武器から武器へスキルの付け替えを行なっていく。
ただ、ルーフの表情が険しい。魔力消費が激しいのだろう。
まだ、ルーフの魔法のランクが低いのかもしれない。
そもそも、原作でルーフと出会うときでDランクだったよな。
そうなると、何度か失敗する可能性もあるな。
「……ダメだ。失敗だ」
「とりあえず、魔力が持つまで続けてもらっていいか?」
「ああ、分かった」
ルーフがこくりと頷いてから、しばらく魔法を使っていった。
ルーフがすべてのスキルを付け替えるのに数日かかってしまった。
魔力がそれほど多くないため、挑戦できる回数が少なかったのが原因だ。
時間がかかったとはいえ、これで結構強力な短剣を作ることができた。
第四層へと来た俺は、早速発見したウルトラゴーレムの体を――切りさいた。
……問題ないな。
俺の筋力も、パッシブスキルで強化されたおかげでウルトラゴーレム相手にも押し負けないようになった。
日々のトレーニングによる魔力操作もかなり慣れてきた。
その調子で第四層の魔物たちを仕留めていく。まだ、完全に余裕ができたわけではないが、それでも問題なく戦えるようにはなったな。
そろそろ、朝練は終了だ。
部屋に戻った後、俺は領内へと魔力を放出する。
今やっているのは領内全域の魔物の調査だ。
……特殊モンスターの目撃情報を待ってからでは、対応が遅れるからな。
そうなると、イナーシアたちのように孤児となってしまう子もいるだろう。
さすがにリアルタイムで確認できるほどの余裕はまだないので、一日三回程度。領内の情報を知るためにこれをやっている。
といっても、タイミング良く対応できたのはこれまでなかったのだが――普段とは違う様子の魔力反応を見つけた。
一つの大きな魔力反応と複数の小さな魔力反応が戦っているのが分かった。
ここは、リームが暮らしている村の近くだな? 何か、面倒な魔物が出て村の人たちで狩りをしているのかもしれない。
なかなか苦戦しているようなので、俺はすぐに外套などを纏い、リョウの身なりになったところでそちらへと移動する。
空間魔法で近くに移動する。……移動しているところは誰にも見られないようにする必要があるため、戦場から少し離れた場所だ。
それから、魔物がいる方へと向かうと、まさに今ちょうど戦っていたところだった。
「怯むな! ここでオレたちが倒れれば、村を危険に晒すことになるぞ!」
そう叫んでいるのは、凛々しい顔の男性だ。
彼が、この一団のリーダーなのだろう。
戦っている魔物は……ハイウルフか。悪逆の森で言えば、第三層の魔物になるのだが魔物は生息地域でまるでレベルが違うからな。
とはいえ、この辺りでは生息していなかったので特殊モンスターで確定だろう。
……さすがに、厳しそうだ。
そう思い、俺が近づこうとしたところで……リームが戦いに混ざっていることに気づいた。
別に女性はリームだけではないのだが、一応許嫁だし真っ先にみつけてしまった。
リームもゲームでは優秀なキャラクターだったな。
……まあ、今まで何度か自分のところの兵士を助けたことはあったが、気づかれたことはない。
今の外套と冥牙を使っての戦闘スタイルは、誰にも見せていないしな。
兵士たちと訓練や狩りを共にするときは、グラディウスとミスリルナイフを使っている。
俺は冥牙だけを装備したまま、助けに向かう。
走り出した瞬間、まさにリーダーの男がハイウルフに弾き飛ばされてしまった。
「お父様!」
……リームの叫びが聞こえる。
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