18
扉を軽く押してみると、問題なく開いた。
中へと入ると、宝箱が五つ並んでいる。
もちろん、すべて回収だ。この宝箱のうち、今回用事があるのは二つなのだが、せっかくだから全部もらっていく。
最初に開けた三つは、魔力を回復するポーションなどだ。
残っていた最後の二つ。そこには装備品が入っている。
長い外套のような衣装だ。暗殺者装備と言われているもので、装備者が攻撃を受けにくくなるという効果がある……らしい。別にスキルとかがついているわけではなく、そういう装備説明があるだけだ。
全身黒のそのフード付きの装備を身につける。
……この世界の装備品は特殊な加工がされているそうで、装備者の体格にぴったりとフィットする。
これは便利だ。
そして、次は最後の宝箱を開ける。
中に入っていたのは短剣だ。
俺がこれまで短剣を使って戦闘をしていたのは、ゲーム知識で手に入る優秀な装備が短剣に多いからだ。
今回手に入れたこのグラディウスもそうだ。
外套と短剣。欲しい装備品はこれくらいだ。
すべて回収した俺は、アイテムを持ち出したことがバレないよう、空間魔法に収納してから扉の外に出た。
もちろん、扉はきちんとしめて番号は出鱈目なものに変えて、扉は閉めた。これで、誰が盗んだかは分からないだろう。
まあ、別にゲームでも開けられた人のものだから、って感じだったが変ないちゃもんはつけられたくないからな。
外で待っていた兵士たちと合流した俺は、村長のもとに戻り、疲れたような演技をしておく。
「やっぱり開かないな。扉の番号を調べるしかないが……何か心当たりはないのか?」
「いえ……まったく。村の地下のことですが、かなり古いものでして……今村にいる人たちでは何も情報はありませんでした……」
「そうなると、過去の人たちのものだろう。とりあえず、ダンジョンや魔物といった嫌な気配は感じない。また何かわかったら報告してくれ。こちらも、屋敷で改めて調べて何かわかれば報告する」
「はい、ありがとうございます」
俺の言葉でどこまで安心してくれるかは分からないが、実際危険はないからな。
村の人たちには、これからも安心して暮らしてほしいものだ。
転移石で戻ってきた俺は屋敷で、開かずの扉についての報告書を作成し、家族に提出しておいた。
「……ふん、何も分からないとは相変わらずおまえは能無しだな」
父からのムカつく言葉に苛立ちつつも、今回手に入れたアイテムに関しては俺のものにしたいため、適当に頭を下げつつ部屋へと戻った。
さて――やるとするか。
部屋に戻った俺は、鍵をかけてから空間魔法を発動する。
そして、俺の部屋と、悪逆の森とを接続した穴を潜った。
……よし、無事移動完了。
俺はすぐに先ほど獲得した装備を空間魔法を使って即座に身につける。
今身につけている服の上からすっと重ねるように装備を完了する。
これは便利だな。ゲームなどの着せ替えのように簡単にできる。
装備品の効果がしっかりと反映されているかは……たぶん大丈夫かな?
いつもよりも体も動きやすく感じる。指輪とかだって、身につけていれば効果は出ているしな。
より姿を隠すため、フードをかぶってから目指すは第二層だ。
悪逆の森は初めて訪れた時に、第五層まで行けてしまい、運がいいと魔物と遭遇することなく奥の層にまで行けてしまい、そこで初めて戦闘を行ってあっさり全滅……なんてこともよくあるダンジョンだ。
俺も、初めてプレイした時は新しいマップにワクワクしていたが魔物と遭遇することなく第三層くらいまでいってしまい、そこで強い魔物に襲われて全滅したが……今は特に恐れることはない。
第二層に到着した俺は早速魔物を探していく。
魔力を周囲に使用しての索敵を行い、一体で行動している魔物を探す。
まずはハイオークからだな。
第二層にも、三種類の魔物が出現するが、その中でもハイオークがもっとも弱い。
……三体で行動している奴がいるな。
こいつは恐らくウルトラゴブリンだ。集団で行動していることが多いため、今の俺はまだ戦いたくない相手だ。
そうして、しばらくあちこち移動していくと……ハイオークを見つけた。
見た目は、大きくがっしりとした体躯で、肌も鱗のように頑丈そうだ。
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