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ゲームの悪役キャラに転生した俺が、裏でこっそり英雄ムーブで楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった  作者: 木嶋隆太


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「……そうですね。能力のあるものが家を継ぐのが当たり前だと思いますが」


 言いたいことは色々とあるのだろう。

 でも、別に俺は貴族へのこだわりはない。とりあえず、今の環境でトレーニングを続けていって、物語が始まるときに家を離れられればそれでいいと思っている。


「……先ほどの、あなたの兄たちは……なんですか? なぜ、あんな情けない姿を……」


 苛立った様子で、フィーリア様が逃げ去っていった家族たちの方角を見ている。


「見ての通りです」

「……普段は何をしているんですか? ヴァリドー家はヴァリドールを守ることが仕事ですよね? それは、悪逆の森から現れた魔物を倒せるだけの力を持つ必要があるということです……ですが、彼らは逃走していましたが」

「そうですね……」


 ……どう、すればいいんだ、

 これはこれで、まずい状況なんだよ。

 フィーリア様が王城に戻り、今回の件を上に話したらそれはそれで大問題になるのではないだろうか?

 今回は大事にはならなかったが、フィーリア様を危険に晒したと言うことで爵位を失う可能性もあるよな。


 あれ? もしかして結果的に詰んだか?


「まあ、その……今日は朝から調子が悪かったので……」

「……であれば、一言言っていただければ、別の機会にすれば良かったのです」


 フィーリア様はぷりぷりしていらっしゃる。

 どうしよう。改めて、兄たちが戦える状況を見せてやれればいいのだが、彼らは絶好調でもゴブリンと互角かどうかという感じだ。

 どんなことを言っても、誤魔化すことはできないだろう。

 俺は小さく息を吐いてから、諦めるように口を開く。


「……これが、今のヴァリドー家です。税の多くは軍事費にはあてず、予備費という扱いで自分の好きなものに使っています」

「……まさか」

「……兵士も、昔いた優秀な人物たちはほとんどが去ってしまいました。今残ってくれたのは、こちらの兵士長のザンゲルくらいです」


 ……ザンゲルも、別にそれほど優秀というわけではないが、それなりに能力はある。

 この場で話を聞いているわけだし、彼のモチベーションを削ぐようなことは言わないほうがいいだろうという意味での言葉だ。

 実際、先ほども真っ先にフィーリア様を庇おうと動いてくれていたわけで、それをフィーリア様も分かっているからか小さく頷いた。


「……これは、王都に戻って父に話をするしかないでしょう」

「……ですよね」

「その結果がどうなるかは分かりませんが、最悪の可能性もある、とは考えておいてください」


 ……最悪の可能性。

 それは、爵位の剥奪だろうか。

 もしも、とられてしまった場合……どのように生きていくか。

 色々と、育成チャートを見直したほうがいいかもしれない。



 屋敷へと戻ると、先に戻っていた兄たちは無事だったフィーリア様を褒め称えるような言葉を並べていた。


「よ、よくぞご無事で……っ!」

「まさか、フィーリア様がハイウルフを倒されたのですか!?」

「……倒したのは、あなた方の弟ですよ」


 すっと、フィーリア様がこちらを指さしてきた。

 その言葉に、兄たちは驚いたように目を見開き、それからくすくすと笑った。


「フィーリア様。ご冗談を」

「彼は、我が家でもっとも弱い能無しですよ? ろくに魔法も使えないこのゴミでは何もできませんよ」

「もしや、うちの兵士たちが――」

「黙りなさい!」


 フィーリア様が、ぶちぎれた。

 あまりの迫力に、兄二人はガタガタと震え出した。

 フィーリア様は俺の肩に触れながら、さらに言葉を続ける。


「彼が能無し? それであればあなたたちはなんですか! 彼のおかげで私は命を救われました。あなた方が逃げている間にです! 何も力がないのなら、初めから素直に報告しなさい!」

「そ、そんなこと……ありえませんよ!」

「だって、こいつは能無しで……」

「……はあ、もういいです」


 フィーリア様は冷たい視線を返す。

 ……兄たちから完全に興味を失ったようだ。

 フィーリア様は短く息を吐いてから、


「あなた方の能力の無さは理解しました。今回の件はすべて、私の父に話をしますので」

「な、何か誤解を……」

「あなた方と話すことはありませんから。レイスさん。それではまた会う機会がありましたらよろしくお願いします」

「……はい」


 フィーリア様は兄たちたには冷たく言い放ち、俺には微笑を残して去っていった。

 どうやら俺のことは嫌っていないようだった。

 フィーリア様が去っていった後、家族たちが緊急会議を開いていた。


「……ど、どうする?」

「……お、親父……さすがにまずいんじゃないか?」

「……ままあ、大丈夫だ。王とは幼い頃からの付き合いもあるし、王都には交流の深い貴族も多いからな。いくらでも、根回しはできるさ」


 にやり、と父は笑みを濃くする。

 ……確かに、父のそういった手腕はかなりのものらしく、親しい貴族は多いんだよな。

 さて、どうなるのか。


 俺としても、できれば路頭に迷うようなことにはなりたくないんだよな。

 強い肉体を作るには、それなりの食事環境とトレーニング環境が必要だ。

 家族への不満は多いが、自由にやれているという点では最高の環境なので、できればここから離れたくないんだよなぁ。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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