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三日月の行方は

 この国アカツキは戦禍で混乱し、無法地帯が広がる。


国王が戦傷で生死をさ迷う為、第一王子ゾンネが臨時の王位に就いた。豪胆な性格で戦場でも先頭に立つが、粗野な言動は時に側近でさえ傷つけた。


第二王子クレセントは物静かであるが、見識が高く地形・人員・天候等を分析し、数々の戦略を立てた功労者。その隣には影のように付き添う、口元を隠した従者ルナがいた。


クレセントは国の治安の為に、戦を止めることを提案した。

国土も狭く資源も乏しい我が国では、敗戦の予想は堅く今まで勝ったのが奇跡なのだ。だが勝戦を経験したゾンネは、新たな侵略を画策していた。私腹を肥やす重鎮達も同様だ。


それを止めるクレセントを牢へ幽閉し、近日中に謀反の疑いで処刑すると言う。


クレセントは面会に来たルナに、この国から逃げるように告げる。

死の怯えも顔に出さず慈愛の表情で。

「今まで共にいてくれてありがとう。これでお別れだ。お前にまで咎が掛からぬように行きなさい。元気でな」


だがルナはそれを拒否し、懐から出した錠前で牢の扉を開けた。気づけば背後にも人影が見える。


「私共は既に、見張りの兵士も倒し追われる身。一緒に来ていただきます」

そう言うと幽閉で弱ったクレセントを、屈強な兵士が担ぎ上げた。

「離しなさい。お前達は私を置いて逃げろ」

「今さらつれないですよ、主。いつまでも一緒です」


その日クレセントは、この国から姿を消した。


彼はルナ達と共に、隣国サンモルト王の前で膝を着く。

そして自分の知りうる、自国の情報全てを隣国王に明け渡した。

自分は殺されようと、罪のない民を救って欲しいと願って。


サンモルト国王が争いを好まず、人道的に優れていたことで、アカツキ国を最小限の被害で統治し、平和を享受できると考えたからだ。



売国のようだが、そうではないことをルナ達は知っている。ルナは間諜としてゾンネ王子の妾姫となり、情報収集を行っていた。クレセントが戦争を止めるべく提言していたことや、止められない戦闘時は、人的被害が少ない作戦を立てていたことを。


現在彼はサンモルト国の諜報部に在籍している。

国王はルナの報告とクレセントの優秀さから、手元に置くことにしたのだ。

ルナはゾンネの気紛れで酷く殴られ、死の淵をさ迷う場からクレセントに庇われ命を繋いだ。その後、顔を隠し従者となった。


民の為に身を捧げる二人は、夜に沈む上弦の月のように闇に潜み愛も紡いでいく。

クレセントは英語で三日月。儚げな上弦の月のイメージ。夜へ向かう。


ゾンネはドイツ語で太陽。とにかく元気。


ルナはラテン語で月。新月にも満月にも三日月にもなれる。               

         

             

お題が三日月。イメージな配役です。


6/7 23時 日間ヒューマンドラマ(短編) 96位でした。

ありがとうございます(*^^*)

6/8 9時 日間ヒューマンドラマ(短編) 68位でした。

ありがとうございます(*^^*)

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