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第十九話:訪問先は、彼女の眠る魔法の城

授業の後に、シオネーから卵サンドを貰ったロメテス。その後、気が付くと面談が終わっていた。そして、何故か気が付かない間に欠席しているシオネーを探すのだった。

 繁華街から一本分横にずれた脇道を通り、私は候補地へ向かいます。とは言っても、そこしか心当たりがないからなんですけどね。


「......多分、こっち」


 到着したのは、ロディーテ伯爵様のお館。の隣にある魔術研究センターです。


「『ティタン研究所』言われてみればそうだよなって感じ」


 入口近くの空き家に、警備員さんがいますね。そこに行きましょう。


「ごめんください。私、ティタンさんの知り合いの者です。その人が最近家を空けることが多く、もしかしたらここにいるのではと思い立ち寄らせて頂きました」


 首飾りを見せながら、笑顔で警備員さんに挨拶。わざわざ、詳細な名前を言う必要はないですね。


「ああ! それはお疲れ様です! お嬢様なら、三階の次元研究室にいらっしゃいますよ」


「ありがとうございます」


 一を聞いて十を教えてくれたか警備員さんにお辞儀をし、私はセンターの中へ入って行きました。

 よし、「お嬢様」なら可能性が出て来ましたね。


◇◇◇


「えーと、三階だよねえ」


 古めかしい木の階段を上がっていきます。途中、何人か魔法ローブらしきものを着た人とすれ違いましたね。慌ただしそうですが、それが通常運行なのでしょうか?


「......で、次元研究室は」


 「次元」って文字は、何となく分かります。そして、「研究室」はどのドアにも書かれているあの文字ですね。一番奥の部屋が、恐らく目的地でしょう。


「シオネーさん、ロメテスです。お腹がすいていると思って、キッチンからパンを持ってきました。いらっしゃいますかー?」


 ドアの前で三回ノック。その後、聞こえやすい様にやや大声で要件を言います。

 返事は、ないですね。少し待ってみますか。


「......」


 ハズレでしたかね。いや、そもそも部屋間違えたでしょうか。うーーん。


「......ああ、貴方は」


 と、ここでドアが相手中からシオネーさん。を数年分幼くしたような少女が顔を出しました。


「こんばんは。シオネー・ティターンさんの担当教師の日坂ロメテスです。シオネーさんは、いらっしゃいますか?」


 妹さんか、従妹さんか。まあ、見たところ親族でしょう。


「......ええ、まあ。いますよ」


「会って、軽くお話させて貰えることは出来ますか?」


「......ええ、多分」


 寝てるのでしょうかね?


「......とりあえず、どうぞ」


「はい、お邪魔します」


 何はともあれ、目的地自体は合っていたようですね。

 私が入った直後に背後の扉が物凄い勢いで締まったのは、恐怖を覚えますけれど。


◇◇◇


 禍々しい音や、床にこびりついた奇妙な液体。ここは、ホムンクルスの作成を行っているんですかね? 次元って言うからには、もっとメカニックな装置を使ったイメージがありましたよ。


「こっちです」


 研究所の角部屋って、こんなに広いのでしょうか。かなり奥へと、案内されていきます。


「これ、次元の研究の効果で空間が膨張してます?」


 素朴な疑問でした。建物の構造から考えると、そう考えるのが妥当でしたし。


「......ええ、そうですね」


「へえ! 凄い研究ですね! 実用化が進めば、色々な応用が利きそうですし!」


「......どうも。あ、ここです」


 ふむふむ。多分「シオネーちゃんの部屋!」って書いてありますね。文字が若干崩れ気味で、看板は大分汚れており、かつては子供部屋だったりした様にお見受けします。


「案内、ありがとうございますね」


「え、ええ。じゃあ、また」


 少女は、そのまま走り去ってしまいました。名前くらいは、教えて貰いたかった気もします。

 まあ、切り替えましょ。


「シオネーさん、ロメテスです。最近、家を空ける機会が多くて心配だったのでパンを持ってきましたよ」


 ノックを三回。しかし、反応はなし。軽く耳を澄ましても、音が聞こえませんね。


「シオネーさん、入りますよ。お腹すいてないですか?」


 軽いはずなのに動きが重いドアを開け、私は中へと入ります。何か物が落ちているかと警戒しましたが、それはありませんでした。

 そこには、広い空間があります。落ちている物も特になく、逆に壁には色んな物が立てかけてあります。そして、奥が何処まで続いているのか分かりません。一種の亜空間と言っても差し支えないでしょう。


「えーと、ある意味迷路ですねこれ。特定の歩き方をしないと、目的地にたどり着けないパターンですよ......」


 とりあえず、時間泥棒に倣って後ろ向きに歩いてみましょう。

 ......開いたドアに、頭をぶつけただけでした。


「うーーん」


 次に注目するべきは、やはり壁際にある物たちですね。何かを手に取ると、空間を跳躍する仕掛けが施されたりしているでしょうか。

 試しに、一番近くに合ったヘンテコなタワーを手に取ります。変化は、ないですね。


「なら、パズルは......」


 仕掛けを作動させるなら、パズルを解く。暗号にも似たギミックも、よくある候補ですね。


「あ、これかな?」


 ハノイの塔と思わしき三つの杭と、はまっている円盤たち。二つ隣の杭に全部移動させられれば、何か掴めるでしょうか?


「えーと、円盤は全部で15枚だから。まずは目的の杭に一番上の円盤を移動させて......」


 黙々と、作業します。ハノイの塔は、基礎を抑えていれば残りは延々に同じ作業の繰り返しですからね。パズルの中では易しい方です。ただ、時間が凄くかかりますけど。


「......」


 えーと。こうですね。


「......」


 よし、あと少し。


「......ふう」


 終わりですね。一番動かしていた最小の円盤を目的地に乗せます。

 すると、何かが接続されたかのように塔が光り出します。


「まぶしっ!」


 そして、光がやむと目の前に更なる空間が広がっておりました。


「......よし!」


 駆けだします。ボチボチ、時間もなくなってきているでしょうからね。

 しかしまあ、何とも面倒くさい仕掛けでしたこと。こんな仕掛け、誰から教わったんでしょうね。

 ......私か。以前、ハノイの塔も紹介しましたね。


◇◇◇


「シオネーさん、いらっしゃいますか?」


 ある程度進んだ先に、また別の扉がありました。三回ノックし、声をかけます。


「......早いですね、先生。どうぞ」


「失礼します」


 ドアを開けると、よく分からない実験装置をバックに従えたシオネーさんが座っておりました。

 しかも、魔術ローブを身に纏ってる本格仕様です。


「お腹すいてると思い、パンを届けに来ました。それから、そろそろ授業に戻られても良いかと思いまして」


 笑顔で、パンを渡します。不思議そうに受け取るシオネーさん。


「......先生、何処まで知ってるんですか?」


 その後、真顔に戻って私に本題を投げかけます。世間話のネタもありませんし、丁度良いですが。


「そうですねえ。貴方が私に変な術をかけ、無意識のまま数日間授業をさせたくらいですか」


 自信のある所から、順番に答えていきましょう。まずは、ここからです。


「......ここに来たからには、もっと知ってそうですけどね」


「確証のない部分が多いですよ。あくまで仮説を立てていったら、貴方の元に辿り着いただけです」


「......私とロディーテ伯爵の関係については?」


「親族って予想はしてます。貴方はロディーテ様を様付けしたことがないので、比較的身分は近いのかと考えてますよ。研究センターの警備員さんも、『お嬢様』呼ばわりでしたし」


 仮説は、何処まで行っても仮説です。だから、仮説と証拠を少しずつ並べていくのが最善手。


「......他には?」


「何かしら、私を監視するアイテムを頂いた気もしてます。腕輪なのか首飾りなのか。まだ検討がついてませんが、ただの直感です」


「......」


 シオネーさん、暫くの沈黙。まあ、彼女が何処まで考えているのかは検討付きませんからね。

 待ちましょう。


「理由は、分かりますか?」


 おっと、ここで理由ですか。


「うーん、何かの道に乗せる為ですかね。例えば、私を対パヴォニス公国戦線においてある役割を与えたいとか。はたまた、私の素の能力を無意識状態で測って別の役を与える為だとか」


 そう、私を無意識にさせたことが何よりもの疑問なんですよね。ただの魔法の実戦対象と言われた方が、まだ納得がいくレベルですよ。


「......そうですか。そこまで分かっているなら、覚悟は出来てますよね」


「???」


 何か、都合の良い解釈されました? まあ、どちらにせよ乗りかかった船ですね。


「じゃあ、全てをお話ししましょう。目を瞑ってください」


 椅子から立ち上がり、シオネーさんはまた私に近づきます。


「......せめて、どのように話すのか教えて下さいよ」


 毎度の如く不意打ちされるのは、流石にキツイんですので。


「私と、意識を共有します。私の考えや記憶、経験の一部を貴方に一瞬で伝えます。力を抜いて、魔力を受け入れて下さい」


 説明終了と同時に、彼女の両腕が私の首周りをグルリと囲みます。


「......まあ、良いでしょう。貴方の想い、教えて下さい」


 覚悟は出来てませんが、彼女を受け入れる準備は最初から出来てます。


「眠れ、我と汝。流れる時は違えども、その詩は涙の河となる......」


 シオネーさんが、呪文を唱え始めました。そのままゆっくり、彼女の額が私の額に近づきます。


「今ここに、二人の時を一つにする! アクリス・ヒストリカ......」


 目の前の彼女が、だんだんとぼやけてきます。いつもよりは、唐突でないだけ良いのかもしれませんね。

 じゃあ、おやすみなさい......

そろそろ、PVなどの成果を出したいところですね。そう思っていた矢先に、二つ目のブックマークを頂きました。ありがとうございます(o*。_。)oペコッ


お時間ありましたら、感想なども頂けたら幸いです。ここまでお読みいただき、感謝です。


里見レイ

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