首輪
「優二はい、コレ受け取りなさい」
幼馴染の佳純に呼び出されて向かった佳純の部屋。そこでいきなり渡された紙袋を、僕はまじまじと見つめた。
「なにこれ?」
「開ければわかるわよ」
言われるままに中身を取り出すと、中から出てきたのは首輪だった
「……なにこれ?」
「見てわからないの?バカね首輪よ」
「それぐらいは知ってるわ‼︎こんなもん渡されてどうしろって言うんだ⁉︎」
ペット用の首輪でもアクセサリーとしての物でも無い南京錠で施錠する本格的な奴だ。
「首輪の使い道さえも知らないのね。首に着けるに決まってるじゃない」
「そんなことわかっとるわ!!なんで僕がこんなもん付けないといけないんだよ!?」
「バカなのはわかってたけどここまで察しが悪いとはね……。それを着けるのは貴方じゃ無いわ、私よ」
と言いつつ首輪を指差す佳純、その先には『KASUMI』とタグが付いていた。
「だったら自分で着けろよ、俺を巻き込むな」
「嫌よ、自分でやったら意味ないもの」
「……どういうことだ?」
「いいから早く着けなさいよ」
そう言って強引に僕の手を取り自分の首へと導く佳純。仕方なく首に巻き鍵をかける。
すると佳純は満足げに微笑んだ
「これで私は貴方のものよ……ふふっ」
「あのさぁ……」
「なにかしら?」
「おまえ何言ってるのかわかってるわけ?勘違いされたらどうするんだよ……」
「勘違いじゃないわ」
「え?」
「私が言った言葉の意味……わかるわよね?」
「……」
沈黙が流れる。
正直に言えば分かる、だがそれは俺にとって都合良過ぎる考えであり、現実味の無い話であった。
「なんで俺なんだ?」
「貴方以外に誰がいるっていうの?」
「俺達はただの幼馴染だろうが、それ以上になんてなる訳がない」
「そんなことはないわ。だって私は昔からずっと貴方の事が好きだったんだから。この身の全てを差し出しても構わないほどに」
真っ直ぐこちらを見据えながら話す佳純の目には一片の迷いもなく、本気で言っているのだという事が伝わってきた。
「だったら逆だろ」
そう言って彼女の首から首輪を外す。
そして彼女に渡して俺の首に着けるように促す。
「お前には俺の名前が入った首輪をプレゼントするからさ」
彼女は一瞬呆気に取られたような表情を見せた後、吹き出したように笑い出す。
「あははは!まさかそんな事を言い返されるなんて思わなかったわ!」
「うるせぇよ、それよりどうする?」
「優二、貴方は私の物よ」
そう言って俺に首輪を着ける
「ああそうだな。そしておまえは俺の物だ」
そして俺は彼女を抱き寄せ口づけを交わす。
これが俺たちの始まりの物語である。