恋です。1話
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。
春。新しい制服に袖を通した新1年生が体育館に集まっている。今日は、緑鶴高等学校の入学式。晴れて1年生となった飯塚正次郎は、入学式なんて早く終わってしまえと思っていた。飯塚は昨日、高校生活よりも大事にしていた存在を突然に奪われてしまったのだ。
飯塚「あぁ、、何で結婚するんだよ、、大原ひろみちゃん」
昨日、飯塚はテレビのニュースでファンである女優の大原ひろみ(20才)が俳優の菊地竜次(きくちりゅうじ・21才)と結婚をした事を知った。入学式が行われるなか、飯塚の視界は全てモノクロに見える程、ショックを受けていた。
飯塚「ふぅーー」
気付けば、飯塚は1年E組の席に座っていた。何もやる気が起きず、モノクロの世界をさまよっていた。
・・・
時は同じく、1年E組の教室には、やたらと自分の席の汚れをハンカチで拭く藤川由衣がいた。
藤川「入学初日なのに何で机が汚れてんの。もう」
藤川は机を拭いたハンカチを広げ、教室の窓際でホコリをはらった。その時、教室内に春風が強く吹き込み、藤川のハンカチが飛ばされ、隣の席に座る飯塚の顔に掛かった。
飯塚「え?、、真っ白な世界だ、良い香りがする」
藤川「ウソでしょ」
飯塚は、顔に掛かったハンカチを手に取った。白い生地に黒猫が点々と刺繍されたハンカチだった。我に返った飯塚は、ハンカチの持ち主を探した。すると、窓際に立つ藤川と目が合った。
飯塚「これ、君の?」
藤川「そうだけど、何?」
飯塚「よかった。はい」
そう言って、飯塚はハンカチを藤川に手渡そうとした。
藤川「いらない。男子が触ったハンカチなんて汚くて使える訳無いでしょ」
飯塚「じゃあ、洗ってから返すよ」
藤川「いいです」
飯塚は藤川に強く言い返されてしまった。偶然にも隣の席になった藤川と飯塚。藤川は席に座り黒板の方を向き、飯塚は渡しそびれたハンカチを手に持ったまま理解が追い付いていなかった。
飯塚(心の声)「何だこれは、、ハンカチを返そうとしただけなのに。こっちを見やしない」
藤川は机に右肘を付いて、右の手のひらに顎を乗っけていた。教室の開いた窓から吹く春風が、サラサラと藤川のセミロングの髪をなびく。優しい日差しが藤川の白い肌を照らす。黒く細いラインの眼鏡がきらりと光る。
飯塚(心の声)「でも、なんだろう。ドライに扱われたのに嫌じゃない、むしろ新鮮に感じている。この胸のざわめき、君の名前を早く知りたい」
飯塚の口からは、少しよだれが出ていた。




