『美しい世界①』
世界はこんなに〝儚く〝も美しい
始めに目に見えてきた景色は、硝子で包まれた揺りかごのような──。
(……いや、揺りかご? 揺りかご?!)
どこの、脱出ポットだ?!
『…………!!』
硝子のようなフィルム? 薄い膜? が消えていくのと同時に、俺は身体を起こした。
(何処だ、ここは……)
(「シエルさま……」)
(「シエル様……」)
(「”シエ──”」)
(……?)
〝キョロキョロ〝と周囲を見渡すが、何も見当たらない。
『だが、この声──いや、思い出してきたぞ。エレベーターでの言語表記の時と同じく──今まで〝自然〝に感じていて見逃していた。聞いていたぞ……”この声”!』
まるで、小説や本を読んでいる時に〝心の声〝を感じる時があるというが、それと似ている──。
(いや、待て……そうなると何処から聞こえているんだ?)
(「シエル……さま?」)
どこか、寂しそうな声が──聞こえた気がし……いや、聞こえている。
『〝ナビ〝か?』
(「はい!」)
(……!)
確かに──聞こえた……それに返答まである。
これは間違いない……居る。
『どこに……居る?』
(「此処に……居ますよ?」)
やはり、視界には見当たらない。
視界に納まるのは──どこかの施設なのか、ホワイトな室内だ。
(病院か?)
(「シエルさま……?」)
また、声が”脳内”に聞こえる。
(脳内……?)
(ナビ……お前は脳に居るのか?)
(「はい!厳密には違いますが──正確には魔力〝回路〝と魔力”ネットワーク”を駆使しつつ、シエル様と〝一緒〝に居ます。シエル様が望み、シエル様が生み出した……シエル様だけの〝オリジナル〝の存在です」)
魔力〝回路〝?
魔力”ネットワーク”は、何となく分かるような?
(だが、俺が生み出した……?)
(「私はシエル様をサポート致します。目覚めるのに〝耐えられる〝と判断した時にシエル様を覚まそうと自己判断し、シエル様を此処へ……導きました」)
(よく、分からないな)
とりあえず、身体を起こそうとするが動かない。
(「今は少しお休みください。きっと”担当医”がシエル様の目覚めに気づいて来られるはずです」)
(”担当医”?)
(「あと、今は事情が分からないかも知れませんが……私のことは秘密にしてください。どうか、お願いします──シエル様」)
秘密?
(分かった……)
そう返しながら抗えない瞼の重みに俺は沈んでいく──。
そして”本当の夢”を久しぶりに見ることになったのだった。
”本当の夢”
だけれども、夢の世界と同じようで
でも、その感覚は薄っすらと違うように感じて
シエルは夢へと落ちていくのだった