『されど邂逅せし運命⑩』
刻印は重要だ
如何に綺麗に刻まれているか
如何に必要な魔法紋を刻んでいるか
それは非常に繊細な事なのだ
思考が高速化してきているのか、冴えわたるような感覚が全身を支配していくのが分かる。
『いくよ!シュン──!』
「──!!」
(凄い……!身体が軽い──!)
シュンは一瞬、こちらの攻撃に驚いたように目を見開いたが、すぐさま動きに順応してきた。
「どうなってるんだ?!さっきとは動きが”全然”違うぞ!」
『魔法で底上げしてる!』
「なるほど──」
そういうと、今度はシュンがこちらに攻撃を仕掛けて来た!
『なっ!?』
(木剣がブレている!?)
思考を加速化しているのと、神経の伝達速度を上げてるから分かる。
シュンの振っている木剣自体がブレているのだ。
(「シュン様は光属性の適性持ちです!きっと、光の加減でブレて見えるようにしているのだと!」)
『っ──!!』
とりあえず、木剣の動き、そして、先程ナビからフィードバックされた戦闘戦術をフルに活用して、シュンの攻撃を凌ぐ。
そして、得られた情報から最適解を即座に選択する。
「なっ!闇の属性か!」
”木剣”自体に重さを負荷させることで、先程の手を防止する。
「凄いな……!なら、これなら──!」
今度もシュンから仕掛けてきたが、今度はシュン自体がブレて木剣を振ってくる。
(いや、でもこの距離なら躱せる──!)
ある程度、思考の加速された世界では木剣の軌道が遅く見える。
(「シエル様!!光属性を!目の前でバリアを張るイメージを!!」)
『────!!』
ナビから、言われた通りに目の前にバリアを張るイメージをする。
すると、届いていない木剣の軌道をなぞるように、展開したバリアが目の前で壊れたのだった。
「これも、”読む”か!」
『今のは?』
「光に物質化を持たせて放ったんだ!」
『なるほど……』
さて、もう一戦っと、言ったところでシュンの持つ木剣がボロボロに崩れていった。
「あ、負荷を掛けすぎたか……」
『どういうこと?』
「普通なら魔法紋を刻印して、そこを通して今見たいな魔法を発現させるんだけれども。これはただの木剣だから、無理やり、そこに魔力を通したから木剣が持たなかったんだな……」
「更に、そこに闇属性の重力負荷も掛かってたからな……」
シュンが崩れ落ちて木剣を見ながら説明してくれた。
『あぁ……、だから、あれか。学内対抗戦の時は木剣に魔法紋の刻印が許可されているのか』
「そういうことだな」
シュンと話してると、それなりにギャラリーが出来上がっていたのか。
「いや、すごいねー!やっぱりムシュタル大将の息子ってところなのかな!昔から鍛えてるのかな?」
「いえ、私的には”急に”動きが凄くなった、シエルくんの方が気になるのですが!」
リンとマリが感想を言いながら、近寄って来た。
「魔法の発現までは許可した覚えは無かったんだがな……」
ちょっと困った感じのナイスミドルな教師も来たところで、木剣の件を謝る事になった。
そして訓練も終わり、本日の通い始めて初のカリキュラムが終わったのだった。
魔法とは剣の扱いにしても
これからシエルは学んでいくのだろう




