『されど邂逅せし運命⑨』
必要なのは可能性の幅を広げること
工夫次第でそれは無限に広がっていく
『おぉ……、大きいな』
訓練施設は大きかった。
円形の大きな施設になっており、付属するように、小さな訓練場もあった。
「基本的に大きい場所はイベントとかで使う場所だから……えっと、ここかな?」
リンが小さい区画の訓練場を指し示した。
何名か先程、教室で見た生徒も居たので「ここだろう」っと、シュンも言い一緒に向かうことにする。
ーーー
「時間になったな。皆居るか!出席を取るぞ!」
ピチッっとした訓練服に着替えた、ナイスミドルな教師がそこに居た。
(おぉ……、筋肉が凄いな)
「とりあえず、訓練に使う場所だが、基本はこの小さい区画を使用する。大きい区画側は先も言った通り、学内対抗戦で使うことになるので、各自”留意”するように!」
「本日はこのまま模擬戦闘をしようと思う!武器はそこにある設備の木剣になる!各自ペアを作ってくれ!」
重ねて、教師がそう言ったので、ひと先ずはシュンとペアを組むことにした。
ーーー
「シエルはこう──、戦闘訓練とかはどうなんだ?」
『いや、実際やった試しがないんだ』
『なので、お手柔らかに頼むよ』
少しだけ砕けた感じでシュンに言うと。
「とりあえず、打ち込んでこいよ!」
続けてシュンが言ってきたので、それならばと打ち込ませて貰うことにした。
『いくぞ──!』
「はっ!!」
っと、気合い一閃、シュンに叩き込んでみたが難なく弾き返されてしまう。
「シエルー?大丈夫か?」
『あぁ!大丈夫だ』
(これは木剣も重いが、自分でも振ってるのではなく、”振られてる”っていう感覚だな)
(どうしたものかな……)
ふと、シュンを見てみると難なく、さも当たり前のように素振りをしていた。
(「シエル様、魔法を上手く使うべきでは……?」)
(ふむ……)
・弾く力の光属性
・重さを乗せる闇属性
・筋力を水属性を用いて細胞を活性化
・体内の保有魔力を通じて電気信号と思考の高速化
(──そんなに一気に処理出来るかな?)
(「私の理論上は可能なはずです。それに私とシエル様は感覚を”共有”していますから、演算処理が必要な所はフォロー致します!魔力に関しても相互間でやり取りすれば、増幅”させることも可能ななはずです。──魔力ネットワークより、幾つかの戦闘戦術、及び魔法の扱いに関してのデータを取得しました。シエル様にフィードバックします」)
ナビの声の後に、いくつかのデータが脳内に展開され、物凄い勢いで覚えていくのを感じる。
(この覚えの早さ、ナビがサポートしてるのか?)
(「はい。それに私も並行して学んでいます。任せてください!伊達に”ナビ”を名乗っていません!」)
”チラッ”っと、傍でこちらを見ていたナビを見ると、”えっへん”っと胸を張って・・。
(ぁ……)
(「ジー──」)
おっと、”Don't Touch Me”だ。
うん、そうだ触れてはいけない。
「シエル―?おーい……?」
”ん?”ナビとの話が長かったのだろう。
シュンがこちらへ声を掛けてきた。
『すまない!大丈夫!少し、ナビと”話して”いた!』
「準備出来たら教えてくれー!」
『いや、大丈夫。もう行けるよ!』
『ちょっとだけ、覚悟してて!』
そう言うとシュンの纏う空気が変わるのが分かった。
(さて、ではやってみますか)
そして、シエルの初めての戦闘が始まっていく




