『されど邂逅せし運命③』
真実の切っ掛けは細い糸
その糸をどうするか彼の選択次第
選択は既に始まっている
「食べ物とか、この世の神秘ですね・・!」
ちょっと目を”キラキラ”させているナビが、そこに居た。
『えっと、ナビ?何を伝えたかったのかな?』
「あ、す、すみません、シエル様。えっと、ですね。丁度、皆さまも居て良い機会なので、お話しできればと・・」
そう前置きをして、ナビが話してくれた内容は、バルとレイについてだった。
レイに関しては”心の声”「たすけて」の部分も改めて、3人にも聞かせることになった。
ナビの話してくれた内容はバル、及び、怪しい者たちの”薄い見えない魔力の糸”の話だった。
レイを観察してるようにお願いをしていた中、レイと同室だったバルに動きが見られた事、同じような現象が先程居た怪しい者たち含めて、その他何名も居るとの事だった。
「えっと、その”薄い見えない魔力の糸”とは?」
シュンは疑問の顔を浮かべながらナビに問いかけていた。
「憶測なのですが、バル、及び、怪しい者たちには、共通して洗脳されていそうな節が見受けれました。そして、これは推測なのですが、薄い見えない魔力の正体は”仮に闇属性”だとすると、それが洗脳の一端を担っていると思われます」
シュンの問いかけにナビが憶測と推測を交えて答えてくれた。
”発動元は遠すぎて分からないのですが・・、その魔力の反応は覚えました”っと、重ねてナビが言った。
「シュン様?元からバル、彼は現状みたいな状態、正確には性格だったのでしょうか?」
ナビは続けて、シュンにバルに関しての疑問を投げかけた。
「いや、俺の知る限り昔の、本当に小さい頃のあいつはあんなやつじゃなかった」
「あいつは昔から高慢な所はあるが、誰かを傷つけたり、貶すようなことはしなかった。誰かの為に背中を見せては引っ張っていくようなやつだった」
シュンは昔を思い出すように、しかし歯がゆそうに言葉を零した。
「どこかのタイミングか、少しずつ、あいつは、バルは変わっていったんだ。俺はそれが怖くて、恐ろしく感じて、逃げ出して距離を置いてしまったんだ」
”なぁ、その話は本当なのか?”そう言葉を続けて、シュンはナビに確認を取る。
「全てが合ってるとは分かりませんが、ですが現状の情報を整理すると非常に可能性は高いです」
ナビがシュンの目をしっかりと見ながら言いきる。
ーーー
「ごめん、皆。情けない話だと思ってくれていい。今度は”こんな気持ちは嫌なんだ”手伝ってくれないか?都合のいい話だと思うが、俺はあいつをバルをその話が可能性があるならば助けたい」
暫くナビの言葉を嚙みしめていたのか、考えた様子のシュンだったが、顔を上げたシュンは頭を下げつつお願いをしてきた。
「まぁ、私的にはバルくんの事は未だに怖いけれども、それよりもレイちゃんの事が気になるかな。”時間無いんだよね?”」
「はい、説明した通り。私とシエル様で心に潜り込んだ時に垣間見えた、あの心の奥の奥の暗闇に囚われた”灯”が闇に呑まれ消えた時はレイ様は・・、最悪のケースが予測されます」
「なら、私は決まりだね!」
リンの問いにナビが答えると、その答えにリンは頷いて、了承の言葉を述べていた。
「ナビさん、その”薄い見えない魔力の糸”はこの学生寮エリアのマザーでさえ”感知出来ない”ものなのでしょうか?」
「・・はい、残念ながら、そのようです。それほど”繊細な魔力を扱える”ということになると思います」
「そうですか、分かりました。」
マリはその後にナビに質問をして、その答えに頷いていた。
「マリは反対なの?」
「いいえ」
リンがその様子に不安そうにマリに問いかけるが、マリは否定しつつ、自分を見てきた。
「それほどの繊細な魔法を扱える存在となれば”きっと相当な人物”が背後に居ると思います。なので、何か事を始めると決めたら、こちらも”強力な協力者”が必要になると思います」
「ガイウス元帥とは、今現在もやり取りなさっているのでしょうか?」
皆を見ながら話を始めて、最後はまた自分を見ながらマリが聞いて来たので、定期的に自分はガイウスさんとやり取りをしている旨を皆に説明した。
「もしも、事に当たったら、この国”ヒノモト”でも大きな事件に、もしかしたらなるかも知れません」
少し、深刻そうな顔を覗かせてマリはそう言っていた。
自分にはガイウス大叔父様を。
シュンにはムシュタル大将へ。
リンにはマリが”意味深"にお願いをして、それを聞いてリンは「もしかして気づいちゃってる?」っと反応を返していたが、深くはまだ本人が話してくれるまでは聞かなかった事にした。
「私も出来る事はしてみます」
最後にマリがそう言っていた。
(マリも”何か繋がり”があるのだろう)
皆で頷いたところで、気付いたようにリンが「あっ、でも勝算はあるのかな?」っと、今まで出てなかった、純粋な疑問を言った。
「まだ可能性の1つですが勝算はあります。私とシエル様でバル・・さん、及び、レイ様に接触して、少し時間が掛かりますが”全てを解き放てば”・・シエル様、大丈夫でしょうか?」
『ナビが考えた結果、それが最善手なのだろう?なら、僕は・・いや、俺はそれを信じてナビと一緒に事に当たるだけだよ』
「っ!・・ありが・・とうございます!」
ナビが照れたように頷いていた。
「皆・・、ありがとう!このお礼は絶対に、この今は”ただのシュン”だが・・!いつか絶対に皆に返すことを誓うよ!」
そうシュンが最後に締めくくり、少しだけ暖かいような気恥ずかしい雰囲気になったところ。
「ほらほら!もう、明日からまたシエルくんも交えて、学園生活始まるんだし!もう、行こっ!私、お風呂に入りたいし!」
努めて明るくリンが言ったところでお開きにして、皆で入浴施設へと向かうことになった。
ーーー
「シエル?!ナビ・・ちゃん?はその、えっと・・、お風呂まで着いて来るのか?!」
本格的なパニックになっているシュンをしり目にナビを見てみると、さも当然に自分と一緒に着いて来ようとしているナビが・・?!
『いや?!ナビ?!ダメだよ?!』
”えぇーー!!”っと、いう表情を見せているナビが居た。
「ナビちゃん?!それは流石にダメだよー!!」
すかさず、リンに捕獲されて女湯に連行されていくナビだった。
「は……破廉恥です──!」
ふと、声が聞こえて見てみたらマリはちょっと、普段の冷静さとは真逆に慌てているのが目に見えた。
普段と違ったマリの姿が印象的だったが、少し・・いえ、相当周りの目が凄いことになっていたので、未だにプチパニックを起こしているシュンを連れて、足早に男湯に向かうのだった。
ーーー
(流石に今夜は訓練施設に行くのは止めよう、病み上がりだしな)
思いながら、隣を見る。
ブリッケンさんのベッド・・、大きくてよかった。
ナビが隣に寝ていても余裕があるサイズだった。
”現実化しなくても?”っと、思ったが、そう言ったら共有を通して、”イヤイヤ”という感情がナビから伝わってきたのと、折れそうにもないというか、物凄く悲しい目をされてしまって、逆に折れた自分が居たのだった。
(同じ部屋だけれども、間仕切りがあってよかった・・)
こんな姿、シュンに見られたらと思うと、本日のシュンの様子や反応を見る限り、気が気じゃなった。
『あれ・・?でも、今思えば・・』
(ナビはお風呂・・?それに睡眠も必要なのか・・?)
”ジー”っと、目を閉じているナビを見ていたら。
不意にまつ毛が小刻みに震えたように見えたが。
(「・・・・・」)
”仕方ないな・・まったく”っと、少しだけ息を吐いて、目を閉じたら、自分の意識がスゥーっと落ちていくのを感じたのだった。
ナビ、彼女には睡眠が必要か?
ナビ、彼女には食事が必要か?
でも、彼女は初めての現実化した存在
その感覚、感性、どれを取っても、まだ不透明なのだろう




