『絡まる運命⑫』
縁とは不思議なもの。
複雑に絡み合い、時には守る力になる。
そして、出会いは助けを運んでくる。
「詳細はある程度分かった、ありがとう。それで伝えたいこともある。よいかな?」
”ヒューズ、外には誰も居ないな?”っと、ヒューズさんが外を確認して人払いが大丈夫なのを確認し、ガイウスさんは話を始めた。
「私の元帥という肩書もこうやって、使える機会があって良かったと思う。先程話したように、学院側、及び、関係各所には無闇な情報漏洩はしないようにと伝えてある」
”そして、私がシエルくん達の保証人になることで自由を保障してある”っと、最後に伝えてきた。
どうやら、”現実化”の他にも、色々と話が大きく膨らんでおり、一時は自分たちを拘束、及び、軟禁するかの議論も、自分たちが倒れている間にあったようだ。
(倒れている?)
ヒューズさんに確認すると、安静になるまで、あの時から1日は経過していた模様だった。
『それにしても・・ガイウスさん。僕たちの”保証人”なんて・・』
「いや、良いのだよ。これでやっと大叔父らしいことも出来るというやつだ」っと、どこか嬉しそうに微笑みながら、ガイウスさんは言葉を返してくれた。
「私からもありがとうございます。ですが、私たちはこれからどうしたら?」っと、ナビがそう問いかけると”少し”そう・・・、本当に”少しだけ”所在なさげにしていたヒューズさんが意識を取り戻したように、話をしてくれた。
「それは、もう大丈夫。だから、いくつか確認もしたくてね」っと、そう前置きして、ヒューズさんが確認した点は以下になった。
ーーー
・基本的に、2人で離れないように行動するように
・基本的に、部外者に変な接触はしないように
・必要以上に、無闇やたらと”強さ”や”能力”を誇示しないように
“基本的”に上記、3つの事を守って貰いたいとの事だった。
最後にヒューズさんが”部屋もそういうことだから、シエルくんと一緒になります”っと、言うと。
(「嬉しい・・」)っと、想いが感覚で伝わって来て、横を見ると、ちょっと恥ずかし気に、白い頬を薄いピンク色に染め上げたナビが居たのだった。
「コホン・・」っと、また、少しだけ見つめあい過ぎていたのだろうか、ガイウスさんの咳払いによって、思考が現実に戻されるのを感じた。
「大丈夫かな?それで、私からアドバイスという訳ではないのだが、確かに箝口令を敷いたが、シエルくんの信頼出来る”仲間”が居るのならば伝えてもよい。その程度は任せるが、色々と抱え込みすぎるというのも難儀だろう。助け合える”仲間”を作りなさい、そして困った事があれば、いつでも私やヒューズを頼ると言い」
”すみません・・”っと言うと、ガイウスさんは優しい顔を覗かせながら、そう言ってくれた。
『ありがとうございます』
「私からも感謝を、ありがとうございます」
”いや、良いのだよ。これは老婆心みたいなものだよ”っと、ガイウスさんは朗らかに笑って言ってくれた。
「とりあえず、無事に起きてくれたのと。現状が分かったのは良かったよ。学院側には、僕の方から連絡を改めて入れておくから、とりあえずは風邪を治すことと、回復したら寮に、そして学院へ通学を始めるといいよ」
”無理は禁物だからね!”っと、最後に口にして自分たちが頷くのを見届けると、足早に部屋をヒューズさんは離れていった。
「では、私も久々に元帥みたいな事をするかね。軍の本部の方へ行ってくるよ。シエルくん、ナビさん。ちゃんと休むように、分かったかな?」
そう言いながら、ガイウスさんもヒューズさんを追うように部屋から退出していったのだった。
「シエル様、ご迷惑をお掛けしてしまって、ごめんなさい」
『いや、良いんだ。ナビは”ベストを尽くした”よ。自分のほうこそ、ごめん。熱で頭が、思考が回ってなかった程にも限度があるものな・・』
「いえ・・!そんなことは決して!・・私は”ナビ”ですから、もっとシエル様を、お支えしたかったです!」
(・・・まったく)
心がある程度、感覚の共有で分かるからだろうか。
言葉通り、お互いに申し訳ないとは思いながらも。
どこか”気恥ずかしさ”も感じてしまっていて、それをきっと”お互いに分かりながら”も、まだ熱に浮かされた頭から、意識が気持ちよく沈むまで、ナビと、その後も語り合ったのだった。
そして、シエルの入学式は終えていく
色々と問題はあったが
でも、ナビとも無事に会え
彼の物語は歩みを始める




