『絡まる運命⑧』
演出家とは素晴らしい
全てを把握して最高をそこに魅せるのだ
素人が真似ようとしても上手くはいかないだろう
だが悲しき事に今回の演出家は素人なのだ
『・・・あれ?』
(おかしい・・)
魔力を注ぎ込んでいるけれども、”発動する感覚が無い”
周りの今まで発動していた場合は、紋に発光があり、それぞれの属性に応じた燐光が発生していたはず。
ましてや、シュンの時などは燐光が渦を巻くように”ふわり”と、燐光が靡いていたくらいだ。
(「シエル様・・」)
(ん?)
ちょっと辛そうな感じを隠し切れない、ナビの声が聞こえてきた。
(「私に合わせて・・、ください・・!」)
”ふわり”と、地面に描かれていた起動紋が”白銀”に輝き始めた。
(なるほどね)
ナビのしたいことが”脳裏”に流れ込んでくる。
(よし、起動紋の発光が出てきた・・、後はここで燐光を・・!)
『ぁ・・・』
”ブフォ!”っと、少しだけ、皆の時と同じように、燐光のシーンを”演出”しようとしたら、物凄い勢いで、白銀の燐光が激しく、まるで業火の炎の如く吹き上がっていた。
(っ!?なんで・・!)
(「シエル様・・!先程まで、発動しないと無理に注いで漏れ出ていた、シエル様の魔力が反応しています!」)
先程まで発動しなく、それでも注いで漂っていた魔力たちが、まるで”逃げ場”を見つけたが如く、更に連鎖的に反応しており、目の前の光景は、白銀に発光する起動紋と、燃え盛るような白銀の炎に燐光が舞っているという”演出”になってしまっていた。
(「もう、このまま・・!いくしかないです・・!」)
ナビの声が聞こえたタイミングで、”何か”が自分から離れていくような感覚があった。
(「シエル様・・魔力を注ぐのを・・・」)
(ぁ・・)
熱で頭が浮かれていたせいか、未だにそのまま魔力を垂れ流してしまっていたらしく、急いで魔力の行使を止めるけれども、周りの惨状は酷いことになっていた。
(「私が・・、顕在するのに合わせて・・!吸収します!」)
まずは”燐光”が、そして”白銀の炎”が、最期に”起動紋の白銀の発光”が、目の前に集まるように、そして形を成すように消えていく、そして最期に白銀の光たちが、形を成そうとしていた中心地に集った瞬間、目を塞ぐような、物凄い白銀の光の奔流を周囲に放った。
『っ・・!?』
光の眩しさに抗えずに目を閉じてしまい、その後、目を見開いて、まずは状況を確認しようとしようとしたら、周囲の人間が形を成そうとしていた”中心地”を見て、口を”ポカン”と開いては固まっていた。
『・・・?』
疑問に思いながらも、目が慣れ始めながら、自身も先程、形を成そうとしていた”存在”へと視点を転じるのだった。
それは運命の出会い
それは必然の出会い
そして何者にも侵せない奇跡
世界が歩みを始める瞬間




