『絡まる運命⑥』
精霊との邂逅は運命
精霊の色は、それぞれの運命の色を宿しているとも云われる
そして、精霊の存在の大きさは、その者の背負う運命の大きさとも云われている
確証はない、だが精霊は常に寄り添いあう存在なのは真実なのだ
(あれは・・ヤモリ・・?)
いや、空想上では知っている。
”サラマンダー”に似通っているが・・、翼?が生えている?
現実化しているのだろう、シュンの肩に乗っているのが見える。
白く淡く光っているのも特徴的だろうか・・。
(なるほど・・、ちゃんと実体があるとこんな感じなのか)
ふむ。っと、眺めているとナビの共有してる感覚が少し離れたところを見ていたようなので、そちらに視線を転じると、遠くからシュンを見ているバルが居た。
(バルは・・蝙蝠か?それに、パッと見て”ファンタジー”チックな蝙蝠だな)
シュンの契約精霊と同じくらいか、バルの精霊はシュンとは正反対で、少し仄暗い黒いオーラを発してる感じだった。
その背後に付き従っているようなレイは、小さな水色の・・珍しいのだろう”人型”の半透明の精霊のようだ。
自分の視線に気付いたのか、こちらを一瞥するとバルたちは近づいて来ることも離れていった。
ーーー
「シエル!どうだ・・!俺の精霊は!」
どこか嬉しいのだろう、表情が隠しきれていないシュンが、こちらに弾むような足取りで戻ってきていた。
「そろそろ、私の番かな!」
”よしっ”っと掛け声で、腰を上げてリンも測定と召喚に向かうようだ。
(・・あれ?)
『リン、マリはどうしたんだ?』
「え?さっき、教師陣が来て、測定に使う魔力水晶が不調だから、別室で測定と召喚も行うって、連れて行かれてたよ?」
”魔力水晶の不調って余り聞かないんだけれどもなぁ・・”っと、リンが呟きながら向かっていくのと入れ替わりに、マリがこちらに駆け寄ってきていた。
「わぁ・・!シュンくん、サラマン・・ドラゴン?・・でも白く輝いてて綺麗・・!」
そう言いながら、こちらに戻って来て、シュンの精霊の事を褒めていたのだけれども、良く目を凝らしてみたら、マリの肩らへんにも”フワフワ”と漂って浮いている存在が居た。
「ん・・?タツノオトシゴ・・?でも”白銀?”シエルの髪色に似てるな・・?」
”やっぱり、そう思いますか?”
そう、言いながら手のひらに精霊を移動させて、マリは俺とシュンに自身の精霊を見せてくれるのだった。
”ふむ・・”っと、シュンの精霊も交えて、3人で各々(おのおの)の精霊を鑑賞していたところ。
リンも終わったのか、こちらに戻って来ていた。
「おー!マリも終わっていたのか!・・かわいい!ドラゴン?でもタツノオトシゴ・・?っぽいね!」
”これが私の精霊だよ!”っと手のひらに現れたのは・・、これは”シマエナガ?”あの可愛い鳥シリーズで有名どころに似ている、そして、ちょっぴり淡い緑色を発している精霊が居た。
”それでそれで・・!”
リンのグイグイ感が気にもなったが、話を聞いてみると、シュンには光の魔力紋、マリには土、リンには風の紋が水晶に浮かび上がったとの事だった。
そうなると・・、それぞれの精霊の放つ燐光が、色が違うのにも納得がいく。
ちょっとだけ、違った燐光の精霊持ちは複数の属性に適性があったという事なのだろう。
「あれ・・?でも、そうなると、マリのはどうして”白銀?”っぽいんだろう?」
リンがそう言うと、マリはちょっとだけ困った表情を顔に浮かべたが、すぐに切り替えて”どうしてだろうねぇー”っと、少しだけ”おどけた”感じで返していた。
「そういうこともあるんだな」っと、1人呟いたシュンを横目に見てると。
「最後の番号になる!””””番!シエルさんは居ますかー!」っと、誘導していた教師の1人だろうが自分の事を呼ぶ声が”どこか遠くに”聞こえてきた。
(あぁ・・そっか、入学決まるのが最後だったから、呼ばれるのも最後なのだろう)
・・と、既に熱で朧げになっている頭で、別の思考の海へと漕ぎだしそうになっていたが。
「シエル?大丈夫か・・?」
”シエルくん??”っと、3人の問いかけで現実に引き戻され、重い体をあげて、測定、召喚へと向かうことにした。
(ナビさんや・・大丈夫かい?)
(「少し・・、いえ結構”しんどい”かもです」)
・・・だろうなぁ。
感覚が共有している弊害なのだろうか。
ナビもやはり辛いみたいだ。
こういう時、大抵自分は”うっかり”やらかしている節がある。
直近だと部屋の越したてで行った、商業区エリア店内での”転送量”と、部屋についてからの”荷ほどき”と称して、ポンポンとブリッケンさん作の家具や雑貨を取り出してた時だ。
”シュンが驚いてたなぁ・・”っと、ぼんやりとした頭で、誘導していた教師の方に先導されながら、まずは測定場所まで案内されるのだった。
”精霊”
主には、魂と結びついているとも云われている。
それは魂の保護にも通じる。
精神汚染、精神攻撃の際に守るような動きを見せる。
だが、掛ける側の術者の技量、魔力量が大きい際は”契約隷属”のように堕ちてしまう。
例外はマザーなどの”大きな存在”になる。
あの存在に到達する精霊は現在、未確認だがマザーという疑似精霊を見る限り、攻撃手段、及び、サポートを兼ねる動きも可能となっている。




