『絡まる運命⑤』
新しい発見は良いことばかりじゃない
良い知らせも、悪い知らせも
どちらも運んでくるのだから
けれども、それは盤面と同じで
観測する者が”どちら”を受け取るかに依るのだろう
熱にて、ぼんやりとしている頭と、重い体をなんとか抱えて、訓練施設に辿り着いたのだが。
「一緒ですね?」
マリがポツリと言葉を零していたが、皆、番号が違うと思っていたが、後半台の番号だったらしく、一緒の場所にて魔力量の量、適性回路の測定、並びに、メインだと思われる契約精霊の召喚のイベントが待ち構えていたのだった。
ーーー
「・・・!」
遠目で測定、及び、契約精霊の召喚風景を見ているが。
(・・・ヤバいな、だいぶ熱が)
熱にて意識が危うい感じはあるが、初めて見る光景なので観察を引き続き決行する。
皆が、手を触れている水晶は”魔力水晶”だろうか。
各々の取り扱える魔力量の大きさによって、水晶の発光具合が変わり、水晶の中では、起動者の適性回路を指し示す、魔力紋が展開されていた。
時たま”おぉ!”っと声が上がるが、それは発光の度合いだったり、比較的珍しい、複数の回路の持ち主が現れた時だった。
(・・・なるほど)
複数の魔力紋が出現してる時は、魔力の適性の強さなのか、紋の浮かび上がりが得意なのは濃く、苦手なのは薄く出ているようだった。
だが、噂によるとそれも”注ぐ意識によっては得手、不得手は変わるのでは?”と、言われてるのだっけか。
「よし!そろそろ、俺の番だな!」っと、隣のシュンがそう言い、番号を呼ばれたらしく、その手を魔力水晶に当てる。
”おぉ・・”
”流石、ムシュタル大将の御子息”
そんな声が周りからは出ていた。
確かに水晶の輝きは、他の子と比べると一回り大きそうだ。
(ふむ、これからも成長するにつれて魔力量は増えていくのかね?)
頭打ちはあるとは言われてるみたいだが、周囲の魔力を取り扱える、最大容量は成長するにつれて増えていくとは言われてる。
(今後に期待ということかな?)
次は・・、契約精霊の召喚か。
術式=起動紋の書かれた場所に立って、シュンが目を閉じた。
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【契約精霊の起動紋】
この世界に”黒い渦”が出現して、魔力を放出、そして、モンスターの出現に合わせて、存在が不確かなモノたち”精霊”の存在が確認された。
そして、人類はその”精霊”との繋がりを持つのに成功していた。
繋がりが出来たのは、魔力を持っている者の中で、その頃は”変人”の扱いだったらしいが、精霊にお近づきになる者が居たらしく、その者が云うには”魂が共鳴した時には、目の前の精霊は消えており、自身の魔力紋に変化が合った事、そして、魔力を通して行使してみると、先程まで目の前に居た精霊が現れた”との事だった。
その事は当時、一大ニュースになり、魔力の適性持ちには稲妻が走ったように衝撃を世間に与えた。
そして、彼を解析する中で、既存の魔力紋を除いた”新しい魔力紋”が発見され、それを媒介にすることにより、精霊との契約が可能となったという背景がある。
但し、”魂ある精霊”という存在は希少であり、存在さえ滅多に見る事が無いらしく、基本的には自身の適性や、魔力回路に応じた”魂なき精霊”が生み出されて、契約についているようだった。
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周囲を見てみると”カタチの持たない”フワフワとした”オーブ”みたいな発光体が浮遊している姿が、周囲の生徒たちを見てみると散見出来た。
(ふむ・・)
補足すると、もともと精霊は存在が確認された当初から人類に敵対する素振りは見られなかったという。
むしろ、モンスターに襲われている人類を守るような動きが、各地で報告されていたらしい。
そして、こうやって今では、人類をサポート、フォローさえしてくれている。
モンスターと”同時期”に出現したと言われてるが、その存在はまだ神秘のベールに包まれているらしい。
過去には与太話で、精霊の中では”大きな力”を持っていると言われてる人型の精霊の”現実化”した存在を”見たことがある!”っと、話があったみたいだが、未だに人類がその存在を捕捉したことはないらしい。
ーーー
但し、その召喚の適正な年齢に対しては問題があった。
ある夫婦が”祝福”と称して、まだ年端のいかない子供に契約精霊の起動紋を施して、精霊を召喚しようとしたところ、子供の身体と精神、どちらも必要量の”魔力量”か”強度=耐久度=維持力”が足りなかったのか、精神が壊れたのが先か、体が塵のように滅んでいったらしい。
精霊召喚フィーバーとして精霊召喚に”沸”いていた人類は冷水を浴びせられたようになり、一気に適正な年齢の割り出しに入り、そして、その結果、12~13歳頃が適齢期だと割り出したのだった。
そして、その影には残酷なこともあった。
その背景では精神・肉体の強度の実験の為に”魔力の持たない人類”を起動紋に立たせて、そこに魔力を通して耐久試験を行うという”禁忌・禁断”の行いが、各国で横行したことだ。
その結果、魔力を持たない人類は目に見えて生存比率が下がったのと、それらを守るために、優先的にコロシアムや奴隷市場が普及し、保護の為に各国は動いたが、その縫い目を突くように”闇市場”という形の視えない、分からない存在が台頭してきた。
そして、闇市場は禁忌・禁断の実験の結果得られた”契約隷属”を主に、非合法な薬などを用いて今も暗躍しているという。
契約隷属とは、契約精霊は共に魂を共鳴しあい繋がっているのとは違い。
一方的に相手の魂を掌握している点にあるという。
ある程度の魔力量や魔力適性回路があれば防げるのだが、術者の方が強く、防ぐことが出来ない際は悲惨な末路を辿るという。
そして、解除するにしても、それを施した術者より強い魔力量が要求されること、主に”光・闇”の2つの魔力回路が必要な時点で効率が落ちて、実質的には解除が不可能な点がある。
軍もギルドも”禁忌”として、国としても法律を布いて対応をしているが、その悲惨な事件は未だに発生はしているのが現状らしい。
ーーー
(・・・)
”おぉ・・!!”
っと、ざわめきが聞こえて、思考の海から意識を浮上させる。
どうやら、シュンの契約精霊の召喚が終わったようだった。
現在のコロシアム、奴隷市場は機能が不全になっている
”闇市場”が、その中心におり腐敗が進んでいる
それがある”賭博エリア”は大量の金銭と多くの犯罪
その全てが詰まっていると云われている
軍もギルドも未だに手を出し切れない”無法地帯”に近い状態になっている
”まるで、ヒノモトの全ての悪を意図的に集約”しているようだとも云われている
そして、既に魔力を持たない人は居ないのだが”奴隷市場”は動いている
それを意味するところは、このヒノモトの闇なのだろう




