『巡り会うもの達⑰』
出会いはいつだって幸せなものじゃない
時には不幸も運んでくる
けれども
それを幸せに変える事だって”選択”次第では可能なのだ
寮に着いて、お互いに部屋まで・・っと、なったところで一緒に”ん?”と、なる。
同じ寮でも区画があり、こちらは端の方で、広い部屋のエリアの方であり、なんとそこまで一緒だったからだ。
でも、流石に途中で、部屋は違うから別れる訳なのだけれども、お互いの部屋が近い事には驚いていた。
なんとなく、男女は離れているものだと思っていたのだけれども、その疑問も聞いてみたら、3人からは普通はそうなっていると思うとの事だった。
“多分、この区画は”特別”なVIP的扱いの生徒の広い部屋のエリアだから、今のような状況になっているのでは?”と、3人の予想だった。
気になったのだろう。
リンが、マザーにその場で聞いたところ。
なんとこの区画、自分たちしか居ないとの事。
そして、部屋数も2つしかないとの事で。
あぁ・・、反対側の方は・・・っと、その話を聞きながら、お互いに目を合わせたのだった。
ーーー
お互いに苦笑しながら、マリとリンとも別れて、部屋に帰ってきた訳だが・・。
『・・・・あ』
”どうした?”っと、シュンが反応する中、ふと思い出した事をシュンに投げかけた。
『・・・お風呂どうする?』
「・・・・あ」
シュンも思い至ったのか、お互いに顔を見合わせて、苦笑したのだった。
「行くか!」っと、シュンの言葉を合図に、自分も”俺の足・・がんばれ・・”っと念じて、シュンと一緒に入浴施設へと向かうのだった。
ーーー
”シュンさんは逞しかった”
そのキーワードだけが、俺の脳裏に浮かんだ。
いや、服を脱いでる最中で、なんとなく”おっ?”っとは思ったのだが・・。
同じ年齢の自分の身体とは違う、成長過程だけれども、ピッタリと鍛え磨かれている体が・・。
いや、ボディ!・・いや”魂”が、そこに宿っていた。
『シュン・・すごいな』っと、お互いに全て脱いだところで言ってみたら、「な、なにがだよ・・」っと、ちょっと反応に困ってるシュンを見て。
”いや!身体だよ!身体!仕上がってるな!”っと、慌てて言ったところで、ん?”仕上がってる”ってこれ・・伝わるのか??と、自分でも何を言ってるんだと困惑したが。
「ま、まぁ・・、鍛えてるからな!」っと、ちょっと満更でもない表情で、照れ笑いしているシュンがそこに居た。
ーーー
『ふぅ・・・、染み渡るわぁ・・・』
シュンと共に浴室に入り、湯船に浸かりながら、程よい湯の気持ちよさを楽しんでいる中、考える。
(学生寮エリア・・凄いな)
この入浴施設も歴としたお風呂だし、何よりも広い・・!
どこぞの、アミューズメントな温泉施設のあれだ??って位、広いし、何よりも色々と湯船を楽しめる。
それに細かく見たら・・、シャワーになるものには魔力紋が刻まれており。
(あれは”火と水”かな?)
それで各自、温度を調整しつつ、水流の強さも調整しているし、この湯船もそうだ。
(大掛かりな魔術紋がどこかに刻まれているのだろうか・・?)
(いやぁ・・、それにしても、これは”旧世界”・・いや、あの夢の中だと、維持費が凄いことになるぞ・・?)
(垢は・・”土”の属性か?消耗を抑えたり、清潔に保つのに分解してるのか?)
ふむ・・、やっぱり幅が広いなぁ・・、それに可能性も未知数だし、思い付いた人も凄いのだろう。
そう言えば・・、商業区エリアでは電化製品?みたいなのは見受けられたけれども。
あれかね、フィットホンみたいに適性次第で使う人が居るのかな。
(それにしても、気持ちいいなぁ・・)
横目に見るとシュンも伸びており、湯を楽しんでるようだった。
(「シエル様・・あの・・大丈夫でしょうか?」)
(ん?)
少し遠慮がちに、ナビが話しかけて来たことで、思考が切り替わるのを感じつつ、ナビにどうしたのかと返事を返すと”先程の精査したことが分かりました”というので、このまま話を聞くことにした。
ーーー
では、報告致します。
先の事で気づいたことですが、シエル様も気になったバルさんの”仄暗い目”についてですが・・。
バルさんのみならず、あの周囲に展開していた敵意の視線を向けていた者たち全てに、その特徴が現れておりました。
一種の”洗脳”に近いものを感じました。
ですが、詳しい内容は、流石に分かりませんでした。
ですが、共通して”反ギルド派”というのも気になります。
もしかしたら、何かしら重要なものに、密接に関わる洗脳に近いとは思いますが・・。
ーーー
(ふむ、洗脳か)
ちょっと、そうなるとバルへの見方を考えないといけないのかね。
でも、確かに洗脳されていたとしても、あの言動は・・。
(いや、まさかな・・)
(「ツンデレ・・?ですか?」)
おっと・・、思考が読まれてしまっていたか。
(そうなると・・、あれが、ツンデレの”ツンツンモード”だとすると、デレが来たらどうなるんだ・・?)
っと、そういう思考で考えて、その、そういう意味合いの想像で思われてるとしたら・・と、当事者になるシュンを見たら、こちらに話かけてくるところだった。
「シエルごめん!そろそろ、暑くて・・、先にあがって待ってるよ!」
”分かった!”と、返事をすると、いそいそと、シュンは湯船をあがっていった。
(そんなに怖がって!でも、大丈夫!俺が居るからね!・・・なんで、俺を頼らないの?!)
・・みたいな感じか?
”ツンデレ変換”すると・・。
おぉ・・、そうなると、相当・・、いや、結構シュンよ・・、バルに”想われ”てる事になるが、・・そうなのか?
(「可能性が高いというのが、私の見積です」)
そ、そか・・、ナビさんが言うならば・・、でもねぇ・・、そっかぁ・・。
ちょっと、どこか遠い目を外に向けてると。
(「あと、すみません。もう1つあります」)
っと、引き続きナビが報告をしてくれた。
ーーー
そう、もう1つの予想は立っていた。
やっぱり合っていて、あの女の子”レイ”と呼ばれていた子の事だった。
(「単刀直入に言いますと・・”薬漬け”になっている可能性が高く。そして、結構深いところまで進行しているものと思われます」)
やっぱりか・・、いや”旧世界”のテレビでも似たような症状の方々の番組を見た事があったから、予想はついていたが・・。
(ナビ、その進行についてだが、どの”段階”まで進んでると思う?)
ナビの予測は、結構酷い段階なのは確かだという事だった。
分かりやすくいうと、例の思考に侵入した際に、闇の中の”奥の奥”そこにあった、あの”灯”が希望なのだという事だ。
あれが、最後のセーフティーネットという事だ。
あの灯が消えたら、魂もそれに引きずられるように肉体も滅ぶしかない。
それが現実だという事だった。
(”た・す・・け・・・て”)
あの言葉は心に残っている。
そして、ナビも同じなのだろう。
お互いに”助けたい”という認識で間違いは無いと、お互いに共有しているからこそ、強く感じられた。
(ナビ、レイの”観察”頼めるか?)
(「分かりました。見える範囲ですが”つぶさ”に見ていきます」)
ーーー
(・・・あ)
ちょっと、話し込み過ぎたせいで、のぼせてしまったのだろうか。
ナビも、のぼせてるのが伝播しているのか、無言だ。
流石にやばいかもと、何とか脱衣室に辿り着くと、自分を見て慌てたシュンが、こちら側に来るのが遠くに見えた。
「おい?!シエル・・?ちょ、ちょっと?」
シュンになんとか介抱して貰い、そのまま一緒に部屋へと戻って、俺は長い1日を終えるのだった。
ーーー
(「まぁ・・、私にはその・・、シエル様の身体の方が好みですけれども・・」)
(・・・・)
反応したらいけない・・、大丈夫・・と、思いながらベッドに沈んだ体は、自然と夢へと落ちていくのだった。
そして、時はすぐに過ぎ去り、入学式へと物語も進んでいくのだった
果たして、新しい物語は、何を紡ぐのか
そして、綴られるのか
それは、まだ分からないのだった




