『巡り会うもの達⑬』
ナビ・・、彼女の存在は秘密に包まれている
きっと、彼女自身も”全て”は把握出来ていないのだろう
(ぶ、無事に・・、着いた)
いや、途中、乗ってる間に、意識は落ちてしまっていたらしかった。
『シュンが居てよかったよ・・』
ふと、呟いたら、シュンに聞こえていたらしく。
”ん・・?”まるで、犬のようにピョコッっと耳が立ったような幻覚が見え、一瞬、嬉しそうな表情を浮かべたシュンが居た。
”コホン”っと咳払い1つ、シュンはついては表情を戻しつつ、自分より先に、魔力車を降りた。
『ありがとうございました』
本当は、全額払おうとしたのだが、シュンから半分は払わせてくれと押し切られてしまい、半分の額を精算しつつ、お礼を述べて、学生寮前に降り立った。
『そういえば・・』
”ん?どうした?”っと、シュンが返事を返して来たので、言葉を続ける事にする。
『いや、改めて、広い洋館だな・・っと、思ったのだけれども。庭も、外観も、室内も、働いてる人?”スタッフが見当たらない”のに、こんなに綺麗だなんて、どうしてだろうと思ってね』
いや、居ない訳ではない。
門には警備の方も、洋館の中にも、確かに、玄関口に管理してる側だろう女性の方も居た。
けれども、この広大な敷地内を、カバー出来るようには見えなかったのだ。
「そりゃ・・、マザーのおかげだろ?」
っと、シュンが当たり前だろ?みたいな表情で返してくる。
”どういうことだ?”と思い、部屋に向かいがてら話を聞いてみたら、まだ知らない事が多いのだと、思い知らされたのだった。
ーーー
学生寮エリアを含めて、各エリアにも結界が張られているが、その発動には、各エリア内に、広大な魔力紋を刻んでいるのが大きい。
この学生寮エリアにも、それが適用されており、細かいところも、その他、必要に応じて、魔法紋が刻まれているとの事。
但し、大掛かりなものの為、起動しているのは、人の手の箇所もあるにはあるが、大部分はマザーに寄るところが多いとの事。
まぁ・・、マザーの魔力量もあるかも知れないが、その魔法紋を、複数起動出来る強度、維持能力、変換能力も大きいのだろうということ。
理由は単純なもので、最高峰の人工AIだから、処理能力が人間とは比べ物にならないとの事。
人間が同じことをしようとしたら”廃人コース一直線だろう”と、シュンは苦笑していた。
だから、マザーの恩恵もあり、この寮含めて、エリア内の防衛機能や、清潔さも含めて、保たれているとの事。
但し、これは七不思議みたいなものだが・・、と前置きがあり。
【マザーの、素体の場所は何処にあるのか】っと、いうのがあるらしい。
これほどの規模を維持できて、尚且つ”演算・変換・維持”全てをやってのけているのだ。
そして”人型”であるのも、大きいらしい。
人型というだけで、特別な意味があるらしい。
特別な意味とは”単純に大きな力”を持つということ。
そして、コミュニケーションが取れるということだ。
話せたり出来、コミュニケーションが取れる精霊というのは、それだけの価値が有り、尚且つ、稀なのだということであった。
ーーー
”稀ね”・・ふと、ナビを意識してみる。
いや、意識しなくても分かる。
少し前に、買いものに出る際に、その凄いと云われてるマザーが、ナビに取った行動を思い返す。
”深々”とお辞儀をしていたな。
あれは、まぁ、そういう意味なのだろう。
凄いと云われてるマザーより、自分のナビが凄いこと、そして、そのナビと共有している自分も・・。
(まぁ・・、そこは、自制していくしかないな。・・それに、致命的に体が弱すぎる)
はぁ・・っと、自分の足の重みを感じつつ、こちらを気遣って、歩く速度を合わせてくれているのが分かってしまうシュンと、部屋まで近づいて来たところで、上記のシュンの”マザーのおかげ”の説明が、ちょうど終わったのだった。
とりあえず、シュンが部屋の扉を開けてくれたので、一緒に部屋に入り、そして、家具の整理をすることにした。
シュンは本当にいいやつで・・っと、いうよりは、自分の体力を心配も入っていたのだろうが、手伝いを進み出てくれたので、その言葉に甘えることにした。
(このお礼は、しっかり返さないとな)
そう心に、俺は決めたのだった。
”マザー”
彼女?彼?の正体は、性別も不明だ
人工AIと精霊の結びつきの果ての疑似精霊
しかし、その人工AIの素体は何処にあるのかは
知っている者は”限られている”
それを意味するところは、まだシエルは知らないのだろう




