女神③
「シエル様──」
『ナビ──気をつけて、アレは言葉には出来ない存在だ』
「──!!」
女神は驚き……いや、恐怖を彩った表情をしているが、それは理解出来た。
何を詰め込んだら、そうなるかは分からない。
苦しみ、痛み、恨み、増悪──いや、悲劇や哀しみ、切なさ……人のマイナス感情と取れるものが全てが混沌として詰め合わせたものがそれなのだと本能で警告されている。
きっと、普通ならば直視しただけで発狂もしくは死を感じる前に死ぬだろう。
「憎い──苦しい──悲しい──痛い痛い痛い痛い」
キ────ン!!
っと、怨嗟の声だけで精神攻撃になるのだろう。
白銀と黄金の力がナビと自分を防いでくれていた。
女神の方は──大丈夫だ。
咄嗟に耳を塞いでいた。
「シエル様──時間が」
『あぁ──』
何となくだが、肉体はここでは不要物なのだろう。
元の世界へと引っ張られる感じが先ほどからしている。
要はそれが大星の龍の言っていた力なのだろう。
『ナビ──これがきっと、最後……』
「はい──ナビ……参ります!」
ナビが先陣をきって動き出す、一気に近付いては精霊剣を抜刀して抜きざまに一閃を放つ。
それを黒い女性は避けては手に黒き刀を生み出してはナビへと反撃を繰り出す。
『させない──!』
刃とナビの間に入り込んでは精霊剣で弾き返す。
「そこッ──!」
そして、ナビが再度超高速の抜刀術を放つ。
「────ァァ!!」
それは正確に黒い女性の急所を切り裂いては相手はたたらを踏む。
『──ッ!!』
そのまま自分もその隙を生かしては精霊剣に魔力を這わせては連続で切り裂いていく。
そして、ナビが──。
そして、また自分が──。
斬って斬って斬って斬って斬って──!!
相手に隙を与えずに──。
斬った箇所から黒い力が噴出しては浄化されていっている。
『これで──!』
「最期です──!!」
そして、最期の一振をナビと共に黒い女性へと放つ。
「────ァァァァァァァァァァ!!!!!!」
そして、黒い女性は形を象る事は不可能になったのか──最後は黒い力が噴出しては爆散しては浄化されていく。
『終わった──』
「はい……」
そして、黒い力が女神の世界から消えたことが肌から伝わる感覚でも分かった。
どこまで遠くが白い世界になっていた。
そして、耳を塞いでは目を閉じていた女神もその気配を感じ取ったのか、うっすらと目を開いては状況を確認しては塞いだ耳を手を離していた。
「大丈夫ですか……?」
「は、はい──」
そっと、ナビが駆け寄ってはその手を掴んでは力を注いでるようだった。
「暖かい……」
『もう、大丈夫だと思います』
「はい、私もそう思います」
そして、ジッと自分を見ながら女神は頷いていた。
「あの、改めてなんとお礼を申し上げたら良いか……」
『いや、これは僕たちがしたくてやったことだから──』
「そうですね、私達が産まれた意味を求めた先かも知れません」
「産まれた意味──」
その言葉を反芻するように呟いていた。
『そう言えば……最初僕たちを見た時にお姉様と──』
「そうですね……てっきり最初私は姉がこちらに来てくださったかと──」
「そのお姉様という……」
ナビが質問をしようとした所で、急速な身体の……いや、肉体の引っ張りを感じる。
「時間のようですね」
『確かに』
「えっ……?」
『ここまでは大星の龍の力で来れたのです』
「私達には肉体がありますから──」
「なるほど……では、そうなると──」
女神が言葉を言いかけた所で急速に世界が置いてかれるように僕とナビは引っ張られていく。
「シエル様──!!」
『ナビッ──!』
どちらかともなく、お互いに手を伸ばしては繋ぎあい抱き寄せては抱き締めあう。
「これならば離れませんね」
『あぁ──』
「シエル様? 覚えてますか? 美味しいスイーツの話……」
『うん、覚えてるよ。食べに行こう……2人っきりでね』
「はい──!」
そして、ナビが胸に頭を預けては抱き締める力が強くなる。
同じように少しだけ強めに抱き締めてあげては女神の世界が遠ざかっていく……光景を見ている。
後ろを振り向けば渦が見えていた。
きっと、あれが元の世界の──そう、僕たちの世界なのだろう。
そして、僕とナビは女神の世界から自分達の世界へと帰還するのだった。




