女神②
「シエル様──!」
『あぁ、分かる……見えた!』
今度はちゃんと視界としてだ。
遠くに確かに黒い世界の中でも切り取られたように白い世界が見えていた。
そして、そこに祈るように塞ぎこんでいる女性も見えていた。
「どうか──お願い……」
声が聞こえて来る。
近づく度に同じ台詞が繰り返されて聞こえて来るのと同じく、段々と白い空間が侵食されては女性が苦悶の表情になっているのが詳細に見えるくらいまで近付いて来れていた。
──通れ……るな。
ソッと、黒と白の境界線を越えるのが大丈夫かと手をナビと共に差し伸ばしてみたが、すんなりと白い空間に入れた。
『大丈夫ですか……?』
「どうか、お願い……どうか──たす……け……」
ピシッ──
と、音がすると同時にまた白い空間が狭まっては女神と思われる女性が苦悶の表情になる。
『ナビ──』
「はい! 分かってます……!」
ソッと驚かせないように配慮するようにナビも膝を落として女神の組んだ手を覆うように自分の手を重ねては魔力を通す──。
そしたら、一気に白い空間が広がっていく。
「────えっ……」
そこで女神もやっと自分達に気付いたのか……視線を上げて……
「お姉様……? じゃない──あなた達はいったい……」
そして、自分達をしっかりとその目に納めては動揺を隠せないようだったが──。
「き、気をつけてください……! その黒い力は神の力では浄化出来ませ──」
そう、一気に広がった白い空間……もとい、僕とナビの力を異物として認識した黒い力は一気に牙を剥いてきた。
黒い力が線となって幾重にも僕に振り注いで来たが、精霊剣に魔力を這わせては打ち払う。
「なんで──どうし……て?」
「──失礼致します」
そして、ナビがソッと額を女神に押し付ける。
大星の龍は星の記憶と言ったが……正確には違う。
アカシックレコードと、旧世界では伝わっていたが世界の記憶だ。
ただ、世界と言っても疎らだ。
あくまでも認識出来る世界の記憶だ。
「あなた達は──これは私の罪?」
「いえ、違います──あなたが女神様が世界に救済の為の行動を起こしてくれた事で、私は産まれて、そしてシエル様ともここまで来れました」
『そうだね、ナビ。これは貴女への恩返しです──色々とあったけれども、全てに意味があったと僕は思うので』
「……分かりました。あなた達の攻撃が通るのは黒い力も含めているからなのですね──では、私は白い空間の維持に勤めます」
フワリと暖かい黄金の力が周囲に芽吹いていく。
「────」
それと合わせてなのだろうか、女神の世界を覆う黒い力が集約されていく。
そして、集約された姿は1人の女性の姿を象っていた。




