黒い渦39
「流石、シエルだ──」
ハクが一番最初に辿り着いては鼻高いように言葉を言っていた。
そこからはそれぞれ皆が合流しては戦勝を祝すような雰囲気になっていたが──まだ、上を仰ぎ見れば幾分か小さくはなったが浄化しきれなかった黒い渦が存在していた。
「──ぅ……」
そんな中、ズシリと響くような声が……いや、正確には声ではないが魔力を通しての思念が伝わってきた。
「目覚めたか……大星の──」
「目覚め……? 待たれよ──」
ハクが口を開くと同時に大星の龍が反応を返しては待てと言われてハクが静かに待っていた。
「そうか、星の記憶を見た──奇跡の子、救済の子──シエルよ感謝する」
そして、大星の龍は自分と……そしてナビへも感謝の言葉を続けて述べた。
「星の記憶を見たというのは……」
「ふむ、ワシはそう言うのも出来るということだ。お主も出来よう?」
「…………」
思い当たる節のある自分とナビは少しだけ黙ってしまった。
「そうか、良くここまで……それぞれの龍達よ。ワシからも感謝を──」
そして、各龍も頭を下げているのを見ると大星の龍が……同じ龍でも別格の存在なのが自然と理解できていた。
「シエルよ、だが頼みがある。受けるかはお主次第だが──ワシには星の記憶を見る意外にも出来ることはある」
『その為にもここまで来ました──』
「そうか、やはり救済の子といって良いのだろう。そうだ、女神様を助けて貰いたい」
そして、言葉と同じく自然と意識が頭上に浮かんでいる黒い渦へと吸い込まれる。
「そうだ、それが女神様の世界へと通じる唯一の道──そして、開けるのは私だ。だが、入れる者は……神の力を宿すものだけ……そうじゃ、お主達だ」
自然と大星の龍が僕とナビを見ているように感じる。
「頼めるか?」
『はい──覚悟は既に』
「私もシエル様となら、どこまでも──」
「そうか、女神様の世界は概念が違う。お主達が肉体を持って行けるように私はお主達に力を供給しよう──だが、その間だけになる。それまでに──どうか、頼む」
大星の龍が頭を下げたような雰囲気を感じとり、ナビと共に頷く。
「では──」
「ま、待って──」
そこにレイが飛び出して来ては僕を抱き締める。
「シエル……必ず帰ってきて……、ナビも……絶対に……」
僕を抱き締めては、次はレイはナビを抱き締めていた。
「はい、レイちゃん……」
と、ナビが応えてる中に、またふわりと抱き締められる感覚が頭を前に振り向けばマリとリンが抱き締めて来ていた。
「シエルくん……約束だよ」
「私とも約束です」
『あぁ、約束だね──』
そして、2人へと抱き締め返すと2人はそのままナビへと向かっていた。
「シエル──待ってる」
「俺からも多くは無い、いつも通り待ってるからな……」
『あぁ──!』
そして、シュンとバルとは手を挙げてはお互いに打ちつけあう。
後方にはノーラさんや、エリザベスさん、エルなども居たがこちらを見ては頷いて来たので、自分も頷き返す。
「良いかの──? すまない、ワシの体力もきっと今を逃すと消耗してしまう、今持てる力をお主達に渡したい──急がせてすまない」
『いえ、ありがとう……大星の龍』
「私も大丈夫です」
「そうか──ではお主達にワシの力を供給しよう……」
言葉と同時に自分の足を付けている体表から、ナビと共に強大な大星の龍の力が注がれていくのが伝わってくる。
大星の龍の体表の星の輝きが消えた後──。
「良いだろう──残る力はお主達が戻って来られるように渦の維持に勤める。頼んだぞ──……」
そして、大星の龍の気配が薄くなっていく。
『ナビ──』
「行きましょう……きっと、これがシエル様と私の終着点──」
ナビの言葉に頷いてはお互いに手を握って飛翔する。
そして、皆に見届けられつつ──僕とナビは黒い渦へと侵入するのだった。




