黒い渦36
「視認出来ました──! ですが、これは……!!」
どうやら、艦隊や船団の方でも視認が出来たらしい。
出来たらしい──が大いに混乱しているのが情報が錯綜しているので伝わってくる。
僕とナビはハクの背に乗せて貰い、彼らより先を龍たちと共に先行していた。
「シエルよ──あれが大星の龍だ」
『分かってはいたけれども……大きいね』
視認出来る範囲でまだ小さく見えているが、近付けばその視界には収まらない巨大さなのはもう分かっていた。
ヒノモトの……旧日本の約20倍か──。
脳裏に思い描こうとしても、ハッキリとは出来ないのは致し方ないと思う。
「私たちは当初の作戦通りに行く──!」
イーリスのエリザベスさんの声が通信から聞こえてくる。
作戦と言っても、随分と簡単なものだ。
あの大きさ──そして経過時間からしても黒い力とは融合しきってしまっているだろうとの段階からの話し合いだった。
そして、解放するためにはその黒い力の核を壊すのが最優先であり目標だった。
その為には黒い力の核の場所の断定と、そこまでを道を切り開くのが……作戦だった。
ハクも言っていたが、6体居る龍のうち5体を解放しても大星の龍へは迫れないと──。
それは単純なパワーとかのレベルの話では無いのは目の前の光景を見た事で、その場の全員が理解するのには充分だった。
「シエルよ──道はこのままで良いのか?」
『あぁ──このまま真っ直ぐ……そこから黒い力を大きく感じるから』
「分かった──掴まっておれ……向こうの索敵範囲内に入ったようだ」
ハクが言うのと同じく、オールスローン……大星の龍の方面からシャドウだとおぼしき群れが発生してはこちらへと向かってきていた。
「行くぞ──!」
ハクの号令に合わせて──それぞれの龍も大きく周囲の魔力を取り込んではブレスを大星の龍へと放つ。
ズガガガガ────!
ズカン──!
シャドウの群れを一掃するように放たれたブレスはシャドウをいとも容易く貫通しては大星の龍へと到達していたが──。
「なっ……」
ハクじゃない──他の龍の声……若干絶望的な色のはらんだ声がしたが、それは目の前の光景で分かった。
「傷付いていないですね」
『そこまでなのか──』
ナビが冷静に分析しては告げる。
そこにはかすり傷も付けられていない大星の龍の巨大な体表があった。
「次のシャドウの群れが来ます──!!」
通信側の声の連絡も若干の悲鳴に近いものになっていた。
「だが、退く事は出来ない──! 各員戦闘を開始せよ!!」
ノーラさんの声も聞こえてくる。
連続で直ぐにはブレスも龍たちは大きくは放てないのは戦闘を得て知っていた。
『ハク──どれぐらい次まで掛かる?』
「周囲の魔力次第でもあるが……すまぬ、全く効かないとは……」
「シエル様……!」
ナビが咄嗟に前方へと白銀の力を振るう。
シャドウの群れが高速でこちらへと近付いて来ていたようだった。
「シエル様──! お気をつけください! 今までのシャドウとは違います!!」
ナビの慌てた声が聞こえてくるが、こちらもすぐさま迎撃の体勢に入っていた。
周囲を見れば、それぞれの龍たちも各々迎撃に入っていたが──。
『あれか──』
黒い力の核の場所……それはすぐさま見て分かった。
巨大な黒い力の柱が大星の龍の中心部から立っていたから……旧オーストラリアでいう所のあの位置はエアーズロックの位置か。
あそこから無限の黒い力──いや、濃密な力を感じる。
それを受けて産み出されたシャドウだ、柔なんて事は無いはずだった。




